たった一言で、姉とその恋人の人生を台なしにした少女の”償い”の物語。
1935年の夏の暑い日、13歳のブライオニーは幼なじみの青年ロビーから姉のセシーリア宛ての手紙を託され、好奇心からそれを盗み読みしてしまう。その内容に衝撃を受けた彼女はロビーを姉から遠ざけようと考えるが、その日の夕方2人が密会しているのを目撃。セシーリアとロビーは互いの気持ちを確かめ合っていたのだが、難しい年頃のブライオニーはロビーに強い嫌悪感を覚える。
そして夜遅くに、ブライオニーの従姉・ローラが屋外で男に襲われる事件が発生。犯人の顔を見ていなかったにも関わらず、ブライオニーはロビーがやったと警察に証言してしまう。作家になることを夢見る少女の、自分が作り上げた正義の妄想に浸る危うさと思春期特有の潔癖さ、頑ななまでの思い込みによってロビーは刑務所送りとなる。
上巻ではロビーにとって「運命を変えた悪夢の一日」が、優雅で格調高い文章によってゆったりと描かれる。その緩やかな時間の流れが、彼の人生を狂わせたものがほんの些細な選択ミスであったことを残酷に際立たせていき、ふと自分の日常生活の中でも「取り返しのつかない言葉」を放つことへの恐怖を実感させられる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
小説
- 感想投稿日 : 2021年3月29日
- 読了日 : 2009年5月31日
- 本棚登録日 : 2021年1月22日
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