聞く力―心をひらく35のヒント ((文春新書))

著者 :
  • 文藝春秋 (2012年1月20日発売)
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本棚登録 : 11884
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仕事柄人の話を聞く事が多いのではあるが、相手によっては何を話して良いのか、話し途中で話題が途切れてしまわないだろうか、私の話はつまらないんじゃ無いかと様々な不安が頭の中を過る事がある。大抵その様な時はマシンガンの様に自分からベラベラと話しまくってしまい、後で自己嫌悪に陥る事がある。何故なら相手の話をほとんど覚えておらず、自分が話せた満足感だけで終わっていたり、嫌だったら場の空気感ぐらいしか記憶に残っていなかったりするからだ。人の話を聞くのは意外と難しい。会議でも1on1でも相手の性格や立場に合わせて如何に話や意見、思っている事を引き出すか。毎日毎日ほぼ1人ずつ1on1を繰り返しながらも、全く普段から無口な部下がどう言ったタイミングからかいきなり流暢に喋り出した時などは正直嬉しかったりするが、自分でもそのタイミングは余り覚えていない。毎日周囲の社員からうるさいとクレームの出る部下は、やはり1on1でも一方的に話立てて私はほぼ聞き役。そもそも悩みを相談してくれと言ってるのだから、目的は達成しているのであるが、終わった後の疲労感も半端ない。
会話とは双方が適度な量で、伝えたかった事、知りたかった事、スッキリと晴れ晴れできる状態になれることがベストだとは思う。勿論全て達成できれば完璧な会話であろうが、そんなのほぼ奇跡で、その一つでも達成できれば良い程度だ。飲み会なんかは酒で気分が悪いのを除けば、最後のスッキリ感はほぼあるだろうから、大切な場だというのも理解できるし、ノミニケーションと言われるのも良くできた言葉だと思う。
本書はTVタックルでお馴染みの筆者が長年のインタビュー経験を通して身に付けてきた会話における技術を惜しげもなく教えてくれる。本人があんな感じだから(テレビの中のニコニコ聞いてるイメージ)、相応の聞き上手なんだろうなとは思いつつも、始めからそんなに上手くできる筈もなく、多くの著名人との対談の中から身につけて行ったそうである。
内容としてはそれら著名人との対談シーンが目の前に広がってくるかの様に、相変わらず筆者の優しく語りかけてくる様な文章、何か小さいベンチに2人で並んでるかの様におしゃべりしているかの様なスッと入ってくる文章は疲れない。本人曰く、新書にして良いか悩むほど学術的なものでもなく、ただの経験談ではあるのだが、だからこそ読み易くうんうんと納得しながら一気に読めて良い。その様な中にも普段の会話で悩んでいた事がズバリ出てきたり、名言に近い?言葉も沢山散りばめられている。
特に芸能人やスポーツ選手、作家に政治家夫人などそれこそ我々読者が普段話す様な普通の人達ではなく個性の強い人ばかりだから、凡そ自分の周りのあらゆるタイプを網羅している。どれも参考になる事例ばかりである。早速明日から実践できそうな技術が沢山あるので、難しい会話術的な書籍を読む前に、軽く試してみる感覚で読むのが丁度良いだろう。
因みに父親は頑固で有名な阿川弘之氏であるが、私個人的にはそちらの著書をかなり読んでおり、大好きな作家であるから、まるで父親にでもなった様に筆者の文章を読んでる自分がいる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年10月14日
読了日 : 2023年10月14日
本棚登録日 : 2023年10月11日

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