Noise

  • William Collins
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  • Amazon.co.jp ・洋書 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9780008308995

感想・レビュー・書評

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  • 人事評価を機械化・AI化するというある企業の取り組み(サービス)を数年前に目にして、『それを放棄してしまったら、およそ上司の言うことを聞く部下などいなくなってしまうのでは』と思っていた。でも、よくよく考えてみれば、いかに評価を握っていても/握られていても、言うことを聞く人は聞くし、聞かない人は聞かないのだから、それならばせめて上司側の評価負荷くらいは軽減すれば良いのではないかとも考えられる。

    評価される側は、たいてい『自分は誰よりもよくやった』と思っている。すなわち自己評価にはバイアスがかかっている。
    評価する側にも、なにがしかのバイアスが影響している。一緒に残業した部下は頑張って見えるかもしれない。しかし、その部下がたまに始業に遅刻していることを快く思っていない人もいて、その人の目にはだらしない人間に見えているかもしれない。

    同じ事実・情報を与えられたもとでそこから導かれる判断や選択が人によって異なる・幅があることを、本書はノイズと呼ぶ。判断や選択やその根拠が一定の方向・傾向を持って歪むことをバイアスと呼ぶことと対比されている。
    バイアスとは選択に内在してその原因として作用するものであるのに対して、ノイズは選択の結果として現れるものでるとも考えられる。ノイズとはそもそもが複数の判断のバラつきであることから、一つ一つの判断を眺めているだけではその存在を認知することすらできない。これが厄介な点である。
    ノイズとは結論の振れ幅である。結論の幅は評価者が誰だったのかなどの事情によるものである。評価者が誰であるのかは、評価対象やその内容とは全く無関係である。つまり、全く無関係の事象によって、結果が良くなったり悪くなったりしている。これは著しく不公正である。そうであるにも関わらず、バイアスに比べ、ノイズは問題視されていない。
    こうした、課題設定・問題意識の下で、原因と対策を探るのが本書。

    人によって判断がバラけるのは、端的に、人には個性があるからということに尽きる。
    ひき逃げ事故で酷い目に逢ったことのある人、仕事で悩みを抱えている人、大学で格差是正の理論や取り組みを学んだ人、昨日結婚した人など、いろいろ(これらはすべて同一人物かもしれないけど)。それぞれの人にとって、『苦学して身を立てたある男性がほんの出来心から飲酒運転をしてしまい、結婚を翌週に控えた花嫁のお父さんに全治3か月のけがを負わせた』という事案はどのように映るだろう。
    多様な立場や、多様な立場からものごとを論じることそれ自体は決して否定されない。したがって、『人には個性がある』というノイズの発生原因を封じることはできない。

    そこで、『人間が決めるから判断がブレるのだ』と考え、機械学習/AI/アルゴリズムに判断を委ねてしまう手が考えられる。そうすれば、少なくとも当てはめの段階で恣意が現れることはない。でも、人間は人間の判断に誤りがあることはわかっていても、AIが誤ることは許せない(部下の目線)。また、まだ大事な決定をAIに渡したくない(もちろんこれは上司の目線)。
    それならば、人間の選択のプロセスを改善しなければならない。そこで、『人には個性がある』という所与の事実を活かした、決め方の論理が提案される。
    世の中の事象や人の意見にバラつきはみられるが、それらを大勢集めると本来あるべき水準に収斂する。そこで、眼前の事案に固有の事象ばかりを深堀するのではなく類似事例などから統計的に検討をしたり、過度に誰かの意見が強くならないように一人一人の意見は独立に収集・表明されるようにプロセスを設計したりする。

    ものごとには限度があるため、ノイズの軽減も完璧ではない(0にはならない)が、恣意的な要素が結果に影響することを避けることなしに、制度への信頼は成り立たない。
    人事評価の場面でも見られる通り、みんなそれなりに苦労してこなしていると考えているが、それ自体が不平不満の原因にもなる。個性と安定との調和は、大小いろいろな場面で問われるもので、問題も実践もそこら中にゴロゴロ転がっている。

  • 「ファスト&スロー」で著名なダニエル・カーネマンが共著者として名を連ね、人の判断を誤らせる要因である「バイアス」と「ノイズ」のうち、軽視されがちな後者に焦点を当て、その発生のメカニズムや対処策を整理した一冊。

    経営者による企業戦略から、医師が行う診断や裁判官が下す判決に至るまで、我々の社会は多くの「判断」に依存している。著者は、複数の人が同様の傾向で判断を誤る「バイアス」については様々な分析がなされる一方、複数の人や同じ人でも時と場合によって判断の”ばらつき”をもたらす「ノイズ」については見えにくく、これまでバイアスほどには注目されてこなかったが、統計学的にみればノイズもバイアス同様、また条件によってはバイアス以上に判断の誤謬要因になっていると主張する。

    著者はまた、判事や指紋鑑定人、保険引受人といった客観的な判断が不可欠な専門領域において、我々の想像以上にノイズによる「汚染」が放置されている現状を、複数の実験結果をもとに示した上で、ノイズを”見る目の厳しさ”が人によって異なる「レベルノイズ」、個人の価値観や経験がもたらす判断の傾向の違いである「パターンノイズ」、さらにはその日の気分や天候といった外部要件によって判断が左右される「オケーションノイズ」3つに分類した上で、対応策を提示する。

    具体的には、意思決定の要素を細分化した小項目毎に、外部視点も取り入れながら、独立した形で中間的な判断を行った後に、総合的な最終判断を行うことにより、ノイズがもたらす汚染を最小化した「衛生的な意思決定」が可能になるという。著者の提案は、ともすれば機械的な基準やルール、アルゴリズムに頼り、人間性を否定するものとして批判的に受け止められる可能性もあるが、その人間性がいかにノイズに晒されているかを考えれば、本書の主張はより適切な判断を下せるようになるための貴重なアドバイスとして受け止めるべきだろう。

  • Daniel Kahnemanの新作ということで読んでみたが、名作Thinking, Fast and Slowとは似ても似つかない駄作としか言えない。JudgementのNoiseについて、なぜそれが問題なのか、それは何なのか、どうすれば減らせるのか、などの本だが、400ページを費やす内容ではなく、また予想外のノウハウ的な内容になってしまっているがその内容も薄っぺらい。途中から読むのが苦痛でしかなくなった。

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