とはずがたり (岩波セミナーブックス 104 古典講読シリーズ)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000042536

感想・レビュー・書評

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  • これから「とはずがたり」を読んでみようという方には解り易い入門書。
    講義録を起こしたものなので、平易で理解しやすかった。

    しかし、原典を全て紹介しているのではないので
    内容は落とさず紹介されているが、理解のためには
    校注された原典を手元に置いて、参照しながら読むのが良い。

    平安時代の古典は馴染みがあるが、中世となるとあまり読んでいず
    大学で学ぶことになったので、予習として読んでみた。

    「とはずがたり」は、複数の男性に愛された
    後深草院二条という上臈女房の日記文学だが

    この作品の背景には、伊勢物語・源氏物語、
    更には仏教の教養など広範で豊かな宮廷文化と文学の
    素養があったことが理解される。

    単に愛情生活の告白を目的とする、暴露本のようなものではなく
    後見人が転々と変わっていく中、機知と魅力と流転する儚い愛情を
    頼みに後宮での生活を生き抜き、退下の後は女西行と言われるように
    仏道と歌道に生きがいを持った女性の、一代記として読むと
    また見方が変わってくる。

    前半の上臈女房としての生活が華やかなだけに、退下後は落魄の
    イメージがあるが、作品を残したところを見れば、簡素ながらも
    落ち着いた生活だったのだろうか。

    奔放な女性の言い訳の本ではなくて、すべての愛や変転にも
    崩れない心の高さと、それを支えた矜持と仏道への悟達を
    率直に描いたルポ兼私小説と思えば、当時の女性の中でも
    傑出した人であったのかなと窺えるものがある。

    これ一冊で「とはずがたり」を理解するのは難しいが
    アウトラインを理解し、原典やさらに詳しい専門書に進むには
    とても良い本であった。

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著者プロフィール

1948年、岩手県生まれ。東京大学大学院博士課程中途退学。大正大学特任教授。東京大学名誉教授。博士(文学)。著書に『堤中納言物語全訳注』『鎌倉時代物語集成』(共編)『新日本古典文学大系 とはずがたり・たまきはる』『物語の変貌』『源氏物語と天台浄土教』『王朝物語の展開』『宇治十帖と仏教』ほか。2016年5月没。

「2016年 『石清水物語 中世王朝物語全集5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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