なぜヒトラーを阻止できなかったか: 社会民主党の政治行動とイデオロギー (岩波現代選書 99)

著者 : E.マティアス 安世舟 山田徹

• 岩波書店 (1984年10月1日発売)

感想・レビュー・書評

[yuichiさんの感想 · 2017年9月14日]

社会民主党政権が辿った問題をこう分析する。第一次大戦まで存在した社会民主党の急進主義は、議会の中での労働者の進出に力点を置き、結果として「選挙と選挙成果の礼賛」が一面化して、「社会政策と選挙権が主要な事柄」となってしまった。しかし、敗戦後の深刻な経済的および政治的危機の中で、経済的危機や失業問題に対処するための社民党の努力はことごとく挫折したので、「政府のデフレーション政策に対して何ら独自の方策を対置しえなかったのである。同党にとっては、そのような状況の下では、労働者階級の生活水準をその成り行きの如何はどうあれともかくも防衛し、経済危機が沈静することを期待する以外にはとるべき道はないように思われた。かくして社会民主党の期待は、逆説的ながら資本主義経済が再度活況を取り戻すことに向けられたのである。経済が再び正常に機能するならば、ドイツ共和国の憲法体制は、議会はその力を取り戻すだろう、というわけであった」。