皇国史観 (岩波ブックレット NO. 20)

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  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000049603

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  • 1982年の歴史教科書検定問題を契機に書かれた小冊子です。
    筆者は皇国史観を、国家に対する絶対的優越感をもとに、民衆は国家=天皇に帰属することだけに価値があり、自国中心主義と表裏一体で、近代科学としての歴史学的認識とは異質のものであり、天皇制国家と日本帝国主義とを正当化するためのイデオロギーであったとします。
    非科学的な皇国史観を教えるために教育ではなく教化を児童教育の主柱とし、
    人物中心という手法を用いて、児童の心に直接感動や教訓を与えることを目標とし、特定の政治目的実現の手段として利用したとします。
    さらにそれを強化するために紀元節等の天皇制的儀礼に関わる学校行事を用いたとします。
    そして、それは現在の文部省行政、特に教科書検定に通底していると結論します。

    さて、この本が書かれて30年以上経ちましたが、昨今の情勢は更に戦前への回帰を進めていると思えます。南京事件や慰安婦問題を見ても、科学的な実証は脇に追いやられ、ないことを前提にした主張がまかり通っていること。自国の悪い部分には目を塞ごうとする態度。学力強化を盾に全国一律教育を進めようとする政策。君が代や日の丸の強要等、すべては一つのイデオロギーを国民に植え付けようとしています。
    また、巷であふれる「良い国日本」「クールジャパン」といったものもこれを補強するものと言っていいでしょう。「おもてなし」もその効果を持った一言でした。
    異なる意見を巧妙に封じ込める権力に対し、我々は冷静で科学的な視野をもって対抗すべきです。

    はじめにーいまなぜ皇国史観を問題にするか
    教科書検定の歴史観
    皇国史観とは何か
    皇国史観と天皇制的国家儀礼
    教科書検定の歴史観と皇国史観

    著者:永原慶二(1922-2004、中国大連市、日本史学者)

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著者プロフィール

1922年、大連市(中国)に生まれ、東京で育つ。1944年、東京大学文学部史学科卒業。以後、一橋大学教授、和光大学教授、日本福祉大学客員教授を歴任。2004年7月9日 没。
【主要著書】日本封建社会論 日本封建制成立過程の研究 室町戦国の社会 荘園 20世紀日本の歴史学

「2023年 『中世動乱期に生きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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