- Amazon.co.jp ・本 (350ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000052443
作品紹介・あらすじ
「本書は、私の思索と実行の集大成である。」人の真似でなく、人から教わるのでもなく、自分で考えを作り、ゼロから新しいものを生み出す。失敗学の提唱者である著者が独自に到達した、創造のための具体的手法を解説する。
感想・レビュー・書評
-
「失敗学の人」として知られている著者だが、本来は失敗学をやりたくて始めたのではなく、創造(クリエイション)について考えていたら失敗について考えざるを得なかった、とのこと。本書では、本来やりたかった創造についてページを多く使って解説している。
本書における創造は基本的には設計を指しているので、それ以外の分野の人にはそのまま適用できない考え方も多いが、広く通底する点も多いように思う。だいぶ古い本だけど、ここにあるような考え方が広まって、今日の体制になっているのだろうなと思われることも多かった。たとえば「事故の再発防止を考えるなら、責任追及してはならない」ということが書いてある。これは今日の医療事故調査の考え方に通じるところがあると思った。(まあ、責任追及の是非については今も議論があるところだと思うのだけど。)
興味深く読んだところ:
・設計は結果的に論理が通っていなくてはいけない。ただし、論理でアイデアが出てくるわけではない。また、アイデアの得方にはある程度決まった方法がある。
・大学の講義で上手くいったやり方を話しても誰も聞いていなかったが、失敗した話をしたらウケが良かった。
・伝統工芸のたたら製鉄の職人に話を聞いたら、炭素含量や温度を測っていると。伝統工芸だからといって何もかも昔の通りにしているわけではない。(そもそも、取れる原料などが昔とは違うので、同じ方法でやっても同じようにはできない)
・人に質問してその行っていることを理解するためには、単にぼんやりとしているだけではだめで、その人が頭に持っているであろうモデルを予測して、「あなたのしていることは自分にはこう見えるけれど、本当のところはどうなのだろうか」と問わなければならない。
・人間が新しい知識を吸収する力は年齢とともに衰えていくが、その分経験が増えてきて周囲への影響力は増えていく。それを考え合わせると、全く新しい分野に挑戦するのは38歳くらいが限度。
東日本大震災の前に書かれた本だが、三陸の津波のことに触れていたのは印象的だった。(ついでに、ダイヤモンドプリンセス号にも触れていた。)
この本を読むきっかけになったnote
https://note.com/4bata/n/n0a44276a0ef1詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
日本発オリジナルの工学実践者によるデザイン思考の本質的な考え方をまとめた書籍になっています。
「思考展開図」の方法論やそれ自身の構造が素晴らしい。流行りの薄っぺらいUXセミナーなどより、本書4章を教科書にしてじっくり取り組んだ方が実践的だと感じました。工学系では有名な方ではありますが、他分野でもっと評価・活用されるべきではないかと考えます。 -
Twitter で本書に含まれる図が紹介されていて多くの人がいいねをしていたので購入して読んでみた。
本書のメインテーマは第3章の「創造学のすすめ」の中にある「創造設計原理」であるとされており、対象読者は「工学系の大学生,大学院生」から「広く創造活動に関わっている人(遠くは,文学,音楽,絵画,演劇)」と書かれている。
第3章にある「創造設計原理」の解説では、設計の段階を「着想を得る段階」「着想を発展させる段階」「着想をまとめる段階」に分け、それぞれで役に立つ具体的な手法が複数紹介されている。
本書で「思考演算」と呼ばれている手法のように分野によらず応用が効くような考え方もあり、読み手が普段接している分野に類推して当てはめることはできるだろうが、具体例はことごとく工学系の事例で、物理的な問題についての解決方法が説明されているので、対象読者すべてがそのまま応用できるとは限らないだろうと思う。
第3章はとくに工学系の学生に向けて書かれている。
一方で第4章の「考えを作る」ではめちゃくちゃカジュアルにお花見を例にして、新しい考えを構築する方法についてフレームワークを紹介している。思考平面図、くくり図、思考関連図、思考展開図と思考を図で表現して整理する方法が紹介されていて、この章が色々な領域ですぐに応用できる内容になっていると思う。
第2章の「失敗学のすすめ」では失敗の原因の分析について書かれている。この章の内容は失敗の分析のための考え方やフレームワークが詳しく書かれている。失敗のスイスチーズモデルは直感的で分かりやすく、文化についての記述には共感できる。
この章は特定非営利活動法人「失敗学会」の紹介に繋がっている。失敗学会のWebページにある「失敗まんだらとは?」のページ http://www.shippai.org/fkd/inf/mandara.html の内容と共通する部分が多い。
同Webサイトのコンテンツである失敗知識データベースは現時点で最も新しい事例は2008年のものだが、古い事例は詳細が閲覧できる。
第1章の「問題提起」では産業、マニュアル、組織について30ページ弱で書かれている導入部であり、基本的に共感できる。Twitter で紹介されていた年老いた組織の図が載せられているのもこの章である。
産業のS字カーブについては少々適用範囲を広げ過ぎているきらいがあり(例えば「どの産業も生産量は30年でピークを打つ」という記述)、産業と新しい領域の開拓については「両効きの経営」にあるボール社の事例などの方が事実に近く実務に役立つと感じた。 -
技術者が40年かけて構築した思索と実行の現時点での集大成
有名になっている失敗学だけでなく、
そもそもの創造学、
言語化された考えを構築する方法、
現代への提言と
非常に高度で実用的で興味深い内容 -
機械設計のような創造に対する考え方について書かれた本です。「失敗学」「創造学」「思考法」について書かれており、著者の経験や過去の事例などから考えることの重要性について説いています。
職人らしさが伝わる文面ですが、「良いものを作る」ことを重要視していることが伝わる内容であり、時代を経ても枯れにくいものづくりの考え方を学べたと思います。 -
(僕としては失敗学の権威というイメージが強かった)畑村先生の本。 工学系の大学生、大学院生を読者対象と一番目にしていることもあり、速読というよりもじっくり教科書的に何度も振り返るという本の印象。 あとがきにも書かれているが「私が40年かけて構築してきた考えを表出し、集大成したものである」とのことですごくアツい本でした。
『技術の創造と設計』、昨今はデザインシンキングもだいぶ盛んになってきて、ことデザインということばと設計という言葉を意識することが増えてきたのであるが、
・個々の着想、バラバラの着想を分類し、共通概念でくくる
・別の概念に移って使う概念を選択する
・脈略をつける
といった、まさにデザインシンキングの時にもよく出てくるような、やはりこういう設計の学問はある一定の普遍的なメソドロジーがあるんだと、時々読み返したくなるような本だなぁと思った。 ふせんをいくつか貼って、ときどき見返したい。 ぼくはもともとが機械屋で、大学で計算機をやって、ICTの世界に入ってきた人間であって、失敗学の話や、設計者の頭の中の話など、本当にたくさんの興味深い話があった。 昨今のソフトウェアエンジニアの方々にも本質をしる意味で、読んでほしい本。
また、P323にこんな記述もあった。
「自分で考える」には、個の独立が大前提である。 日本の社会は、”和をもって尊しとなす”を美徳とし、集団を大事にする。 たしかに集団は大事である。 しかし、集団ばかりを優先すれば、個が考えなくなり、個が判断をしなくなり、かえって集団の力を失わせることになる。 大事なのは、まず個の独立を確立したうえで、集団で共有することなのである。
→ こちら、ラグビーの平尾誠二さんが、「One for All, All for One」の概念を正しく理解・説明する際にも用いた、『「一人ひとりが『自立』した大人である」ことが必要』と極めて類似していて、印象的。 -
失敗学の祖 畑村先生の設計に関する思索をまとめた本。定番の失敗学から入り、設計者の頭の中を解き明かしてくれる。ブレストなどの発想法も役に立つ。
以下注目点
相手と全くまったくレベルで「自分ならこうやる」「こうなるはず」と徹底的に考えて、自分の頭の中に同じモデルを作った上で相手に臨む。 -
1回目読了。じっくりと読んだ。各記述に納得しつつ、今までの経験と照らし合わせて、数多くのやりたいことを発見した。
-
創造に失敗はつきもの。
失敗を知識化してアウトプットしてはじめて学びとばる視点。
それこそが、創造を加速させると感じる。
盲点を知る。形骸化させない手段が現場より抽象化された知識がこの本にある。