チョコラ!: アフリカの路上に生きる子どもたち (岩波ブックレット NO. 756)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (63ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000094566

作品紹介・あらすじ

ここはケニアの地方都市。「チョコラ」とはスワヒリ語で、「拾う」=ストリートチルドレンを意味する。少年らは今日も朝から屑拾い。食っていくためのしたたかさ、仲間との無邪気なふざけ合い。躍動する生命をドキュメンタリー映画監督が描く。

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  • 貧困、エイズ、路上チルドレン。アフリカが抱える問題は21世紀の今でも何ら解決することなく続いている。アフリカ?もう飽きた?遠い国の出来事。ヨーロッパが何とかすればいい?見捨てられた土地。みな無関心。

  • 「チョコラ!」の上映会とトークのあと、「アフリカの遠く青い空!」と小林さんにサインしてもらった。映画の"裏話"がこの本に書いてありますと言うてはったとおり、帰りの電車でこの本をめくりながら、みたばかりの映画を反芻した。

    ケニアのティカの町。停車場で「Buy me a chai」と声をかけ続ける少年チョンバは、大人から「チョコラ、あっちへ行け」と言われるかそうでなければ無視される。それでもめげずに声をかけ続けるチョンバ。「チョコラ」とは、スワヒリ語で「拾う」の意、生活のためにストリートでゴミ拾いをする子どもらを指し、侮蔑的な意味合いを含むという。

    そのチョンバの姿に、小林さんは若き日の自分を重ねる。写真や映画を始めた頃、時間の融通がきくアルバイトをいくつもやった。その仕事のひとつに漬物訪問販売があった。「漬物はいかがですか」と一軒ずつ声をかける。「静かにしてよ」「いらないわよ」と投げつけられ続けると、滅入ってくる。上司からは、いちいち気にしてたらもたないよ、左から右へ流すんだ、数をこなしていかなきゃとアドバイスを受ける。

    「『We』いかがですか」と、あちこちへ声をかける私も、ちょっと自分を重ねたりする。めげずに…と思うけれど、ときどき滅入ってくる。

    チョコラたちの言葉が小林さんたちにはほとんどわからない。撮影して、日本で編集して、翻訳をしてもらって、それで1年以上経ってやっとわかった言葉もある。

    ある家族の夕食前の祈り。
    ▼「我らが父よ、頂いた糧に感謝いたします。お母さんに仕事が見つかり、コバさんの病気が良くなりますように。あなたは王の中の王。病院にいる人々を助け、私たちに力をお与えください。私たちの国ケニアをお守りください。御名のもとに、お祈りいたします。アーメン」(p.56)

    夕食風景を撮っていた小林さんは、翻訳を経て、この祈りを捧げたマーガレットが自分の身を案じてくれていたことを知る。腎不全の身でケニアで撮影した小林さんは、日本に帰ってから腎機能が悪化して人工透析となる。「おそらく、私がケニア人ならば、こんな高額な医療を受けられず、命はないことだろう。」(p.57)

    マーガレットの祈りの言葉を知ったとき、小林さんは思う。「私は彼らのために心から祈ったであろうか。映画にすること、そればかりを考え、動いていたのではなかったか」(p.57)。

    「なぜ、こんな遠くアフリカまで来てカメラを回すのか」、その問いが帰国近くなった小林さんにわいてくる。長い時間をかけて編集した映画のなかで、生きぬく子どもたち、「おれたちはチョコラだぜ」と歌い踊る子どもたち、川で水浴びをし、着たきりのシャツを干すあいだ、昼寝をする少年の姿。

    小林さんは、かれらの姿を思いおこし、かれらの心情を想像し、かれらと対話する。じぶんと、かれらと、それぞれ生きている場所も超えて、思いをはせる。そのくりかえし。

    ▼「いのち」を背中にかつぎながら疾走する子どもたちにいかなる光を感じられるか。(p.63)

    「チョコラ!」は、ケニアのストリートで生きる子どもたちの「問題」をどうこうしようとする映画ではなくて、子どもたちの「いのち」の輝きを撮っているのだと思う。

    (映画の公式サイト)
    http://www.chokora.jp

  • チョコラとは、スワヒリ語で拾うという意味、路上で物拾いをしている侮蔑的な意味。ストリートチルドレンたちが多い。
    多くは両親をHIVで亡くして故郷を捨てて、捨てられて路上で生活している子供たち。
    たくましいが、完全に犯罪に手を染めている。
    ピース。

  • ケニアの地方都市で、路上生活をする子供たちの姿を撮り続けたドキュメンタリー映画監督の手によって編まれた一冊。
    ブックレットは小さな本ですが、日々の生活にちょっとした「きっかけ」を与えてくれます。手元に置いておけば、気軽に何度でも読み返せて「強い思い」を少しずつ作り上げてくれます。

  • ケニヤのティカという街のストリートチルドレンを描いた映画「チョコラ!」の監督の書き下ろし。

    ケニヤの空気にまだまだ触れていたくて、手に取った。ティカの街は、きっとナニュキに行く途中で通ったと思う。ナイロビにもナニュキにもストリートチルドレンはたくさんいた。お金ちょうだいってすごくすりよってきた。なんだか、うっとうしいと感じてしまったり、お願いだから来ないでって思ってしまったり。もう少し、いい対処だできたのかなぁ。。。。

    人の知性がある、エネルギーもって生を肯定している、本当にそのとおりだと思う。これは、私が何も読まずに自分で考えた言葉だったから、本当にそう感じられるんだ。

    「チョコラ!」映画も見てみたい。

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著者プロフィール

大阪大学名誉教授・大阪観光大学教授

「2019年 『鎖国時代 海を渡った日本図』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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