女が国家を裏切るとき: 女学生、一葉、吉屋信子

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000224116

作品紹介・あらすじ

近代日本の女性は、国家といかに共謀し、そして、背反したのか。明治期の女子教育をめぐる小説や言説、一葉の和歌と小説、吉屋信子の"女の友情"もの、そして、『国体の本義』を精読し、文学的感傷の力が、国家的暴力の隠蔽と女性の国民化にいかに作用したかを明らかにするとともに、それらの女性表現に隠された、国家との争闘の痕跡をたんねんに読み解く。近代日本の女性文学を新しい角度から照射する、気鋭の研究者による意欲作。

感想・レビュー・書評

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  • 第一回『女が国家を裏切るとき』オンライン精読会 note(フェミ勉)
    https://note.com/fem_ben01/n/ndb952848ad7a

    【書評】菅聡子著『女が国家を裏切るとき』 | 文学に学ぶライフスタイル乙女塾
    https://ameblo.jp/morohi/entry-12260018370.html

    岩波書店
    https://www.iwanami.co.jp/book/b264082.html

  • のっけからサブカルチャーのテキストによる論考が開始されて驚いたが、相変わらず鋭く挑戦的ながら、破綻のない論が展開される。さすがとしか言いようがない。

    女性文学を専攻分野とする著者が、女性に仮託された「暴力」や「戦争」への正当化や、被害者としてだけでなく、加害者側に廻り得る女性側から発信される文学の問題点や責任を明らかにしていく。

    「泣ける」というキーワードで現代の物語群やサブカルチャーを見渡したとき、その涙の影にある暴力が、可憐な女たちによって紡がれることで覆い隠されるという驚くべき見方を提示する本書。

    最も傷つきやすいものを傷つけ、争わせる陶酔の向こうに私たちはどんな欲望や願いを隠し持たせているのか。

    私自身の中にも、自制と暴力は同時に内在し、悲しみや抑圧の経験を持つと共に、自分を守るためだと擁護しながら激しい攻撃性をも表出させていることに思い当たらざるを得ない。

    いつから我々は、揮うことを容認される「チカラ」を纏うことを望むようになったのか。本来闘うことに指向性の高かった男性たちが、か弱かったはずの女性がチカラを負うことに瞠目する場面が語られる現代。

    私たち女性の内面は、争うに相応しい激しい変化のみを遂げたのか。男女の感情が入れ替わってしまったような場面に、未だ残るヒロイックな儚さは、何を示すのか。

    解読の行程は、思いがけない痛みや苦しみをもたらしそうだ。しかし真摯な読み手でありたいならば、その闇から眼をそらすことは、許されないと思う。

    自らに一番厳しくあるものでなければ新たな読みを切り開くことなど、おそらくできないのだろう。

    読了してから著者の逝去を知った。
    最も尊敬する国文学研究者のお一人である。
    新しい書下ろし著書としては最後の一册になる。

    忘がたい一書となった。

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