ワーキング・プア―アメリカの下層社会

制作 : David K. Shipler  デイヴィッド・K. シプラー  森岡 孝二  川人 博  肥田 美佐子 
  • 岩波書店
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レビュー : 13
  • Amazon.co.jp ・本 (404ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000257596

作品紹介・あらすじ

働いても働いても生活できない、それどころか、勤勉に、つましく暮らしているのに、貧困の悪循環に陥り、生活がますます苦しくなっていく…。本書では、人々の生活を日々支えているにもかかわらず、人々の目に入らず、打ち捨てられてきた、アメリカのワーキング・プアの実態を詳細にレポートする。ピューリッツァー賞受賞の実力派ジャーナリストによる迫力に満ちた告発から、新自由主義経済の片隅で何が進行しているのか、その実像が見えてくる。出版されるなり、たちどころにベストセラーになった話題の書。

感想・レビュー・書評

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  • 2007(原本2004)年刊行。今でこそ「ワーキングプア」は社会的な認知を得た用語だろうが、その嚆矢ともいうべきが本書。著者は広範なリサーチ・インタビューを通じ、非常に詳細な具体例を提示しつつ、米国貧困層(相対的貧困)、ワーキングプアの実像を明らかにする。黒人・ヒスパニックなどのマイノリティへの偏見等、種々の要因があるが、①就学ローン(特に大学)、②若年層・在学生への職業教育の不備、③健康保険・社会保険・雇用保険等、皆保険制度の不存在、④最低賃金制度の不備と違反者へのペナルティの存否などが関わるか。
    家族の問題(シングルペアレントが典型)、(性的も含む)虐待、薬物も同様か。◆とはいえ、現在は、他の簡明な書もあるため、本書からの新たな気付きはそれほど多くはない。◆しかし、実例は細かい。換言すれば、先駆的書籍の宿命として、実例を豊富に適示する必要に迫られていたという感想を持つところ。それゆえ、確かに読みにくいけれど、短所とはいえない。

  • ー働いているのに貧困であることは、互いに増幅しあう一群の困難の所産である。-ー貧困の淵で働く人々は、アメリカの繁栄に欠くことのできない人たちではあるが、彼らの幸福は社会全体のなかで欠くことのできない部分としては扱われていない。-

  • 「老朽化しきった二軒の木造家屋とは異なり、バラック作りの宿舎が、そもそも一つの機能を果たす目的のもとに作られたのは明らかだった。所有者が誰であろうと、この殺伐とした建物を設計したとき、その人物には自分のしていることが分かっていたに違いない。なぜならそこには、その構成からして、労働者を収容し、彼らの尊厳を踏みにじる以外の目的はありえなかったからである。それは古い建物ではなかったが、ただ背筋が凍るほど効率的な作りになっていた。キッチンにはガスコンロ一台が据えられており、繁忙期に請負業者が持ち込む、もう五台分用のホースの差込が付いていた。食堂兼共同部屋には二台のピクニック用テーブルが置かれ、壁には掲示板が掛けられていた。〜略〜。清掃や修理が一度でも行われた形跡は皆無で、プライバシーや快適さはおろか、未開の村落などで見られるような、貧しさゆえの簡潔さが醸し出す静寂さえ、そこにはなかった。ここでは、労働者たちが、種や肥料よろしくキープされ、収容され、保管されていたのである」

    「ある国について学ぶには、刑務所や病院、学校を訪ねるのが最適だと考えることが、私にはよくある。そうした施設の内側では、その国の社会のものの見方や倫理観が、理想を背景にした形で、くっきりと映し出される」

    「成功に不可欠なのは、営利企業とNPOの共生、つまり、双方が恩恵に浴することである」

  • 働いても働いても生活できず、つましく暮らしているのに貧困の悪循環に陥っていく…。アメリカのワーキング・プアの実態を詳細にレポートし、新自由主義経済の片隅で何が進行しているのか、その実像に迫る。(TRC MARCより)

  • これまた友達宅にあったのを漁りだして読んだ。
    一番裕福なはずである米国のギリギリな貧困層の実態にせまるんだけど、綿密な取材に基づくドキュメンタリーのような感じで、実際ワープアと呼ばれる人々がどんな思いを抱きながらその日その日をしのいでいるかとゆうのがよくわかります。
    このワープアなる階層が生み出される理由ってのはいくつもあって複合的なんですね。人種や生まれた環境とか公教育の崩壊っぷり、それに性的虐待とか。おれはこの幼少期の性的虐待がちょっと信じられなかった。
    それと宗教や健全な家族の果たしうる役割ってのが、悲惨な話の中に少し垣間見れた気がします。人には愛が必要なんでしょう。
    今日本の経済状況も悪くなってきてワープアってのが大きな話題になってますね。この本の中身も他人事ではありません。

  • 分類=経済・経営・労働・ワーキングプア・アメリカ合衆国。07年2月。

  •  最近は日本でも問題になっている「ワーキング・プア」を初めて世に知らしめたとも言うべき一冊。かつてニューヨーク・タイムズの記者だった著者はアメリカの貧困家庭や地域を丹念に取材し、膨大なインタビューを元にワーキング・プアの実態を描き出した。

     数多くの悲惨な事例を読み進むほどに、陰鬱で絶望的な気分になっていく。舞台はアメリカであるため黒人や移民といった階層が中心だが、中産階級から貧困層へ転落した白人も少なくない。

     とかく「社会が悪いのか個人の問題か」という二元論になりがちだが、その両方どころかさらに多くの原因と不運が複雑に絡み合った結果だというのが著者の結論だ。それはそうだろう。原因がひとつに特定できるなら、とっくに解決されている。

     子供を放置して酒やドラッグに溺れる親を非難するのは簡単だが、彼らが何から逃げようとしているのかに目を向ける必要がある。補助金は必要だが、いたずらに社会主義的な制度を進めるわけにもいかない。企業は仕事のできない社員を解雇する権利があるが、教育を受けられなかった責任を負うのは誰なのか。

     多くの点でアメリカの後を追いかけてきた日本にとって、今日のアメリカが抱える問題は明日の我が身に重なる。いや、もう今日になりつつあると言ってもいいだろう。

     彼の国では貧困層を締め出して富裕層だけの町を造るような例もあるという。日本も次第にそうなっていくだろう。国民皆保険制度のある日本では貧困で病院に行けないことはないが、それもいつまで続くかわからない。

     アメリカは失敗してもやり直すことに寛容な国だと思っていたが、それでもひとたび貧困層に落ちた者が這い上がるのは恐ろしく難しい状況になってしまっている。それなら、一度転落したら二度と陽の当たる道を歩けないのが当然のような日本ではどうだろうか。

     自己責任という言葉で切り捨てるのが流行している昨今の風潮を見るにつけ、暗い予感だけが残る。

  • 厚い本ですが一気読み。
    人種、学歴、地域、そして容姿。いろんな要素が絡み合って、下層に落ちていく様が恐ろしい。
    本人がどんなに誠実で真面目で、周囲がそれを十分認めていてもずるずると落ちていくのだ。
    一度落ちると這いあがれないのは最近の日本も同じだけど、アメリカのそれはもっと過酷。
    (車や家や保険など)すでに持っている裕福な人は有利(低金利)な条件を提示され、本当に必要な人ほど高金利で条件も不利になっていく−−。大きな穴はすぐ足もとにあいているのだ。

  • 日本のワーキングプアよりもかなり悲惨だと思う。しかも日本とは違って明らかに差別がバックにある。身分間移動の少ない日本でもアメリカのようになるとしたらまだ日本のほうがましな気がする。

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