瓦礫にあらず――石巻「津波拾得物」の物語

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000258920

作品紹介・あらすじ

スナップ写真、服、ランドセル、学校の宿題やプリント、卒業証書、日記、ゲームソフト、位牌…。他人には「瓦礫」にしか見えなくても、誰かの思い出と暮らしの匂いが染みこんでいる。「死者の物」「生者の物」「既に亡くなった人の物」「返す側の物」「諦めるための物」「伝えるための物」が語る、津波という体験、そして被災者の「心」の問題とは?-宮城県石巻市の「津波拾得物展示会場」から考える。

感想・レビュー・書評

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  •  写真の洗浄をめぐっては、支援団とボランティアで意見が対立する場面もあった。「早く返さないといけない」とスピードを重視して大雑把に洗っていく支援団に対し、ボランティアは「きれいにしてから返したい」と時間をかけた。難しい問題だろう。きれいに洗わなければ写真の劣化が止まらない場合もある。しかし何十万枚もある写真を丹念に洗っていたら、いつ所有者に戻せるか分からない。そもそもどれだけの人がいつまでに洗浄作業に携われるのかの見当もついていなかった。(p.48-49)

     被災者にとって、失われた「物」を取りもどすことは、大災害になればなるほど重要だ。しかしそれを市が責任を持って行うには覚悟が要る。ボランティアに任せるにしても準備は必要だ。もし対応を間違えれば人々の心に傷が残る。(p.58)

    死者と自分をつなぐ物、そしてかつての自分と今をつなぐ物。
    それらは決して流されて失われた物だけではない。
    これから造る物もまたそうした役割を果たすのだ。なのにそれすらできないという喪失感は、たとえ新しい人生が軌道に乗ったとしても、何かしら空疎な気持ちを残してしまうに違いない。(p.156)

    「いつでも会える」と考えていたのは、思い違いだった。人は会える時に会っておかなければ、会えなくなる。そうしておかなければ悔いが残る。命とはそれほど儚かった。それが津波で被災した人々に共通した思いだった。(p.172)

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