- Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000258975
作品紹介・あらすじ
世界一の高品質と言われる日本の映画字幕。その製作をめぐる職人的極意から、憂慮すべきニホンゴ問題まで一刀両断、気鋭の字幕翻訳者による書下ろしエッセイ。銀幕の裏で呻吟する字幕屋にも、字数制限さえなければ広い渡世がありました。日々発展の技術のもと、刻々変貌する日本語に喘ぎ、されど時代と言葉の伴走者、字幕文化の灯は消すまじ-。
感想・レビュー・書評
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私は趣味で字幕翻訳をしているので、何か参考になるかなと思って読んでみたのですが、ほとんど参考にはなりませんでした。
この本は今から約10年くらい前に書き下ろされたようですが、字幕制作の環境で言えば、ぶっちゃけ20年くらい前のことが書いてあるような感じがします。
というか、10年前でもこんなアナログなやり方をしていたのかと、ちょっと驚きました。
著者の文章を読めば、どれほど字幕の一字にこだわっているかが伝わってきますが、自分で作ってみれば、それは容易に実感できます。なので、わざわざ人に聞かされる話でもないなと。
私が知りたかったのは、いかにして生産性を上げるか、作業効率を高めるかといった、もっと仕事の具体的な部分だったのですが、それらについては全く触れられておらず、期待はずれでした。
もしかして、著者の他の本に書いてあるのでしょうか?
後半は、ニホンゴにまつわるエッセイの体ですが、これがほんとにヒドイ。
自分の意見と他人からの聞きかじりをごちゃまぜにして、何か時事批評めいたことを、呆れるほどステロタイプに展開していて、それでいて矛盾上等!とか、マジで吐き気がしました。
自分が今まで読んだ全てのエッセイの中でも、ワースト何位と数えられるくらいの酷さでした。
世はまさに大動画編集時代。映像は完全デジタル化、字幕台本のファイルは世界中でシェアされています。動画編集ソフトの進化によって、単なる素人が字幕制作の全行程を一人で作ることも簡単にできるようになりました。
個人的には、映画字幕を専門とする字幕屋は、もう必要ないと言い切っていいと思っています。皆でシェアし、多くの知見を持ち寄って、クラウド上で制作すればいいのです。
実際にそういうポータルサイトも存在します。誰でも無料で利用できます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
最近あまり本を読んでなかったのだけど、これは一気に読んだ。いや、読まされた。
字幕と言う、日本語に深く携わっている人の文章だからか、読みやすいし面白いし、スピード感があった。だからと言って内容の薄い軽い本と言う訳ではない。
まず字幕翻訳の工程が、例をだしながら丁寧に書いてある。ざっと見ると大変だなと尻込みしそうなのだけれど、工程一つ一つの解説を読んでいくと、具体的な作業が想像できて、ハナから諦めるべきことではない、と自分を奮い立たせることができる。
字幕翻訳できたら良いな、なんて妄想している場合じゃないな、と思えてくる。
作者の日常も日記形式で紹介されていて、字幕翻訳家を目指す人間には、より具体的に自分の行く末を想像できるのではないだろうか。
いや、面白かった。 -
映画字幕がどのようにしてつくられているかご存知ですか?字幕は人が読みやすいとされる一秒四文字という制限の中で、伝わりやすいように言葉を選んでつくられているそうです。翻訳の技術と日本語の深い知識を駆使し、長いセリフ、長い掛け合い、そしてどうにもならないほど長い名前など、制限内に納まるよう著者の努力は続きます。
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ロシア文学研究者を目指して、いつの間にか字幕翻訳者になった著者が、字幕翻訳がどういうものかを面白おかしく紹介し、それがいつの間にか、日本語論、言語論、社会文化論に、そして、人生論に。自分の道のモデルはどこにもないというメッセージが心に残ります。
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字幕の勉強をしている人は間違いなく読みたい。
字幕が好きな人も、もれなく読みたい。
内容が濃くてとても勉強になる一方で文体が軽く、太田さんの人柄がにじみ出る素敵なエピソード満載。
惜しい方が亡くなったと改めて思う。この本を残してくださってありがたいです。 -
一見サバサバとした、攻撃的にも思える文章だけれど、それはひとえに仕事に熱意をもって真摯に取り組んでいるからなのだと感じる。
字幕翻訳者になるまでの経緯や、仕事への思いが詳しく書かれていて、諦めちゃいけないなと刺激を受けた。 -
めちゃくちゃ御世話になっているので、日本のハイクオリティ字幕がセコい予算都合で劣化する話に戦々恐々。本気で困る。その防止対策として何かできる事はないのか!?と青ざめ。あるなら是非知りたい。安易な当座の金の確保の為に優れた文化を簡単に落とすなよ!戻すの難しいんだから!アホか!?ホント勘弁して!(T_T)
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『字幕屋は銀幕の片隅で・・・』が字幕を通して日本語を問い直す、という観点だったのに対してこちらは字幕制作の裏側の話。
ぶつくさと文句をたれながらも(!!)、著者の字幕への情熱がばしばしと伝わってくる。
字幕翻訳者にどうやってなったのか・・・という来し方も書いてあって面白い。日常に飛び交う日本語がすべて著者の肥やしとなり、明日の字幕に反映される…。 -
801.7