- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000268431
作品紹介・あらすじ
ナショナリズムは、近代世界を覆った最大の事象のひとつである。その力は、わたしたちが生きる現代にも、なお強い影響を与え続けている。清朝統治体制の再編と、外国勢力の介入に揺れる二〇世紀初頭の中国。やがて革命へと展開する激動の時代に、国を愛し団結することを訴える思想運動は、いかにして形成されたのか。海外移民と人種主義、都市秩序と国家意識、地理概念と歴史認識、身体と文明化、愛国者の死と追悼、などの多様な視角から、愛国主義の"光"と"影"をよみとく。ナショナリズムの文化=社会史。
感想・レビュー・書評
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中国、中国人という意識が形成されたのは清末の10年間、というのが本書のテーマ。米国移民の差別への反発から国民の、瓜分の危機感から国土の、王朝史ではない中国史の意識から歴史的な、それぞれの一体性が意識されるようになる。また限定的ではあるが、同時期の日本の国家形成も中国の愛国主義にいくばくかの影響を与えたようだ。
後書きで著者は、清とオスマン帝国を比較し、現代の中国の領域はかなり清朝の版図に重なっているがトルコはそうではないと指摘する。その理由として、オスマン帝国の方が宗教と言語の多様性が上とか列強の干渉などと並び、清末の段階で中国は不可分の一体であるとの発想が形成されていたと述べる。
なお、清末の剪辮(弁髪を切る)論議は、必ずしも反清の意味が込められていなかった、というのが意外だった。確かに著者が指摘するとおり、反清なので明代の髪型にしようとの主張は当時なかっただろう。改革の気風、「尚武」の理念、外国人から侮蔑を受けないようにする、との意味付けに合わせ、清の滅亡という情勢の中で反清の意味も出てきた、とのこと。詳細をみるコメント0件をすべて表示