買春する帝国: 日本軍「慰安婦」問題の基底 (シリーズ日本の中の世界史)

著者 :
  • 岩波書店
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000283908

作品紹介・あらすじ

明治政府が違法としたはずの人身取引(人身売買)によって支えられていた近代日本の公娼制が,帝国の形成,拡大とともに変容し,最終的に日本軍「慰安婦」制度を生み出すに至るまでの歴史をたどる.

感想・レビュー・書評

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  • 著者の吉見義明氏は、30以上の長きに渡り、近現代史と歴史学の視点で、多くの先行研究をまとめる形で、「慰安婦」制度はどのようにして生まれたのかを丹念に読み解き、日本軍「慰安婦」の基底に迫る。明治政府が違憲としたはずの人身取引・人身売買によって支えられていた近代日本の公娼制が、帝国の形成、拡大とともに変容し、最終的には日本軍「慰安婦」制度を生み出すに至るまでの歴史をたどる。また、世界的な人権擁護の機運が高まる中で、日本独自の性買売の構造・システムが作り出されて行ったかを紐解く。
     コロナ禍においては、所得格差など更に顕著となる女性への性差別。その根底に、「慰安婦」制度の論考が脈客と流れていることを確認したい。そして、日頃目にする1万円冊の福澤諭吉。彼の名言は「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」と人間の平等を説いた。しかし、公娼制度は必要とした矛盾をおさえておきたい。

  • 性売買の観点からみた日本近代史。帝国領内における公娼制の制度化から、WWⅡ期に日本軍慰安婦制度が確立し、軍慰安婦制度・公娼制が廃止されていく戦後の状況までを概観する。

    慰安婦制度・公娼制の実態を論じる本である。同著者の1995年の新書に比べ、軍慰安婦制度が作られる以前の公娼制にページが割かれている印象。

  • 4/128
    内容(「BOOK」データベースより)
    『性買売に関する世界的傾向がどのように受け止められて日本独自のシステム・構造がつくり出されていったのか―明治政府が違法としたはずの人身取引(人身売買)によって支えられていた近代日本の公娼制が、帝国の形成、拡大とともに変容し、最終的に日本軍「慰安婦」制度を生み出すに至るまでの歴史をたどる。』

    『買春する帝国: 日本軍「慰安婦」問題の基底』
    著者:吉見 義明
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    単行本 ‏: ‎264ページ
    発売日 ‏: ‎2019/6/27

  •  映画「主戦場」でもインタビューを受けてた吉見義明氏の著作。
    ・17世紀半ばまでに江戸、京、大坂、長崎に幕府公認の遊郭があり、城下町や宿場町、門前町など人の集まるところの水茶屋、料理茶屋等々で性売買が行われてきた。こうした場所で性売していた女性は遊女屋に拘束・使役されていた。明治になって太政官布告第295号で、性売買のための人身取引を禁止された。しかしその後も人身売買はなくならず、遊郭も第二次大戦後まで実質的に継続していた。これはかわりに始まった「貸座敷制度」のため。遊女屋を貸座敷業者とし、遊女は性売買のために貸座敷を借りて営業する性売買の主体とみなす、というもの。つまり遊女(娼妓・芸妓)は本人の意思で営業しているということにしたのだ。。そして日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、と進むうちに国内だけでなく出兵先にも広がっていく。

    性売買は男性の性的慰安、社会の治安維持、性病予防などのために必要だと考えられてきた。明治以降、日本政府や軍は、こうした性売買のシステムに繰り入れられてしまった女性たちの人権を完全に無視して、女性たちが自由意思で性売していると責任を回避しつつ性売買施設を維持した。
    このことが詳細なデータで示される。
    なんとも暗澹たる気持ちになる。

    ・福沢諭吉のいう「人」には人身売買により苦界で日々さいなまれている女性は含まれていなかった
    ・陸軍軍医でもあった森鴎外は、公娼を廃止すれば、影に潜んだ私娼となり、性病が蔓延する。そこで公娼を廃止して性売業者も厳禁したうえで、娼妓を集めた廓を作って検梅を厳重に行えばよいと言った。この廓は業者がおらず税金も取らないので公娼制ではない、って・・・はー?である。

  • 東2法経図・6F開架:368.4A/Y91k//K

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