大衆化する大学――学生の多様化をどうみるか (シリーズ 大学 第2巻)
- 岩波書店 (2013年4月17日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784000286121
作品紹介・あらすじ
二〇一〇年代に入り、大学進学率は五〇%を超えた。基礎学力が不足している学生に対する教育の困難さが浮上し、大学が多すぎるという批判も噴出。また、拡大を続けてきた大学院教育のゆくえにも注目が集まる。そして大学の大衆化と労働市場の関係は?多様化と序列化が進む大学の未来を展望する。
感想・レビュー・書評
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB12192511 -
2013年6月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
通常の配架場所: 開架図書(3階)
請求記号: 377.04//Se83//2
【選書理由・おすすめコメント】
大学進学後、どうするか考えたいと思ったため。
(理学部 化学科 1年) -
大学が大衆化したことは誰もが知っている。先行研究も十分にある。一読して、この理解は誤りとは言わないまでも、認識を改めるか、異なった視点を持つ必要があることがわかるのに、それほど時間を要さなかった。所収されているいずれの論稿もアメリカ発の理論ではなく、“日本の”大学教育の場から発信している。違った言い方をすれば、現場の感覚に近い、という感じだろうか。定番のトロウ・モデルを当てはめて大学の大衆化を説明されるより、納得の度合いが違うともいえる。また大学ユニバーサル化における私学の役割の大きさは幾度となく指摘されるものの、実状を丁寧に踏まえ、かつこうして体系を整理した論集は少なかったように思う。参考となったものは、濱中(義)、居神、苅谷の以下の3本。
濱中義隆「多様化する学生と大学教育」P.47-74
居神浩「マージナル大学における教学改革の可能性」P.75-103
苅谷剛彦「高等教育システムの階層性―ニッポンの大学の謎」P.163-193
参照条文
○学校教育法
第八十三条 大学は、学術の中心として、広く知識を授けるとともに、深く専門の学芸を教授研究し、知的、道徳的及び応用的能力を展開させることを目的とする。
第百八条 大学は、第八十三条第一項に規定する目的に代えて、深く専門の学芸を教授研究し、職業又は実際生活に必要な能力を育成することを主な目的とすることができる。
○2 前項に規定する目的をその目的とする大学は、第八十七条第一項の規定にかかわらず、その修業年限を二年又は三年とする。
○3 前項の大学は、短期大学と称する。
参考 38答申 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/old_chukyo/old_chukyo_index/toushin/1309479.htm
すなわち、大学は、一方では、激しい国際競争に対処し、絶えざる社会の進歩の要求にこたえて、高度の学術研究を行ない、わが国の文化の維持向上に寄与するという、その伝統的使命を保持するとともに、他面では、民主社会の発展に伴う教育民主化の要望にこたえて、広い階層の人々に高い職業教育と市民的教養を与えるという新たな重要な任務を果たさなければならない。それと並行して、高等教育の対象が、選ばれた少数者から、能力、特性等において幅のある広い階層へと変わつてきたことをも注意しなければならない。
新制大学の制度は、戦後における教育改革の一還として、学術研究、職業教育とともに、市民的教養と人間形成を行なうという理念に基づいて発足した。しかるに、実施後十数年の実績をみると、所期の目的が必ずしもじゆうぶんに達成されていない。そのよつてきたる重要な原因の一つは、わが国の複雑な社会構造とこれを反映するさまざまな実情にじゆうぶんな考慮を払うことなく、歴史と伝統を持つ各種の高等教育機関を急速かつ一律に、同じ目的・性格を付与された新制大学に切り換えたことのために、多様な高等教育機関の使命と目的に対応しえないという点に求められる。