国際倫理学 (岩波テキストブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000289085

作品紹介・あらすじ

政治共同体の成員資格と外国人の歓待、相互扶助と人道的介入、国家間の暴力にかかわる危害、グローバルな貧困など、政治と倫理の結節点にある諸問題を考えるための理論的基礎を整理・考察する。

感想・レビュー・書評

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  • 319||Sh

  • ICRCにとって中立とは、自らの活動が政治に関係しないこと、つまり紛争当事者のどちらか一方に与したり、紛争の功罪や紛争当事者の行動について発言しないことを意味する。要するに、人道アクターは現実政治にも党派的な政治活動にもかかわらない。言い換えると、人道アクターは紛争の当事者にはならない。だから非政治的というよりも不偏不党性の方が、中立の考え方をうまく表している。というのも、どちらの側にも肩入れしないことを指しているからだ。人道支援組織にとって中立原則がどれほど重要であるかは計り知れない。支援組織が不安定な状況へのアクセスを確保するためには、紛争に関与していないとみられる必要がある。であればこそ、人道支援に従事する人々が紛争の現場に立ち入るのを許しても、敵側に安らぎや援助を与えているわけではないと了解可能になり、戦闘員は安心できるのだ。中立原則はこうした意味で、紛争の結果や原因に利害関係をもたないことといってもよい。人道主義を背景とする中立原則には少なくとも2つの面で疑問が投げかけられてきた。第一に、中立原則に従えば、暴力と紛争の政治的な原因に直面してもなお関心を持たず、行動しないことになりかねないという非難がある。一部の犠牲者を手当てするにあたり、ICRCは中立原則のために苦痛の原因には沈黙するしかなかった。中立原則は、これを批判する人々からみれば、無関心、無節操、優柔不断を意味するものになっている。すなわち、人道主義者は何らかの方法で紛争当事者の一方を支持し、自らの活動する状況の政治性を認め、そして判断を下せるようでなければならない、ということがほのめかせてている。こうした批判の出所は、人権や社会正義の使命を掲げたNGOである。これらの集団にしてみれば、中立原則のせいで犠牲者のために代弁することができなくなっている。

    中立原則を批判する人々にとっては、苦痛の証人となり、加害者をつきとめるためには、ときとして中立原則を犠にせざるをえない。

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