なぜ地球だけに陸と海があるのか――地球進化の謎に迫る (岩波科学ライブラリー)

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  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (128ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000295918

作品紹介・あらすじ

地球は太陽系唯一、陸と海のある惑星だ。秘密のカギはその進化にある。著者らは日本列島の南へ延びる沈み込み帯(伊豆・小笠原・マリアナ弧)での驚きの発見から、新説「海で大陸が生まれる」を打ち立て、地球進化の謎解きに挑む。キーワードはサブダクションファクトリーや反体陸。科学的営みをスリリングに描く。

感想・レビュー・書評

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  • 研究者本。宇宙のゴミが集まって、水星〜火星の地球型惑星ができた。その中で地球だけが、海洋地殻と大陸地殻の2種類の地殻を持つ。なぜか?筆者らの説は、地球でのみプレートテクトニクスが作動し、元々は一種類の海洋地殻しか無かったところに、地殻の沈み込み、水と地殻の反応により、海洋地殻が、軽い大陸地殻と沈み込む重い物質に分化した。そして、プレートテクトニクスが作動した理由は、水があったから。何百kmの深部、何十億年前の出来事などを、現代の地上で得られる様々な証拠から読み解くストーリーは引きつけられる。研究者本なので、多少の理科知識(大学教養課程程度)はあったほうが理解しやすい。

  • 広い宇宙の中で地球にしか生命体がいるかどうかは私はわかりませんが、少なくとも太陽系の惑星には、地球のような環境(陸と水がある)は他には無いようです。この本は学者の巽氏が、地球進化の謎を大陸の起源から丁寧に解説してくれています。地球の内部についても詳しい研究がなされているのだなと、最近の研究の成果の一部を垣間見ることができて久しぶりに知的な刺激を受けました。

    以下は気になったポイントです。

    ・惑星地球の特徴として「地球は青かった」となるのは、太陽光が450-500ナノメートルの波長(青系統)の光を多く含んでいること、そして地球表面の7割を覆う海水がこの波長の光を相対的に吸収しにくいことが原因(まえがき、p3)

    ・地球最初の生命は、今から35-38億年前に、原始海洋で熱水が湧き出す場所で誕生した、つまり水がなければ生命は生まれなかった(まえがき、p3)

    ・地球の変動を支配するプレートテクトニクスは、地表を覆う硬い「蓋」が水を多く含むために柔くなるから作動可能である(pまえがき、p4)

    ・火星とほぼ同じ大きさの原始惑星「ティア」が地球に衝突して、その結果「月」が誕生した、衝突によって散逸した地球物質は急速に集積して月をつくった、月の岩石から45.2億年前、地球と月の岩石がまったく同一の酸素同位体比の特性を持っていて共通の物質を起源とするから(p11)

    ・日本のお家芸ともいえる高温・高圧実験の成果により、大陸・海洋地殻の構造が判明した(p19)

    ・地球がほかの太陽系惑星と決定的に異なるのは、大陸地殻と海洋地殻の2種類からなり、組成と厚さがことなるということ(p19,25)

    ・マントル下降流域である沈み込み帯でマグマが発生する根本的原因は、沈み込みプレートに含まれていた水がマントル物質の融点降下を引き起こすこと、部分融解物質が上昇して減圧される、二次対流が作り出す高温のマントルウェッジの加熱効果の3つのメカニズムが作動していることにある(p38)

    ・日本列島は今でこそ海の中に位置しているが、わずか2000万年程前に日本海が拡大する前は、アジア大陸の一部であった(p46)

    ・フィリピン海プレートの多くの部分は、南海トラフなどの海溝でマントルへ滑り込んでいる、この沈み込みに伴って、海溝型巨大地震である「南海・東南海・東海連動型地震」が発生してきた(p54)

    ・メタンハイドレードは、サブファックの原材料の一つである海洋堆積物や付加体・海溝斜面堆積物の中で行われる微生物の活動によって製造されると言われている、日本列島近傍に埋蔵されている総量は6兆立方メートル(100年分の使用量に相当)がある(p75)

    ・大陸がなぜ地球にのみ存在するかは、プレートテクトニクスが作動して沈み込み帯(サブファック)が存在し、そして沈み込みに伴って、いったん地球内部へもちこまれた水が触媒の役割をはたして、安山岩質のマグマを生産しているから(p95)

    ・熱の移動様式には、対流・伝導・輻射(放射)の3種類があるが、地球内部では吸収係数が大きいため輻射はない、対流か伝導かは、レイリー数(浮力とそれに抵抗する粘性の比)による、限界値以下では伝導、それを超えると浮力が勝って対流による熱伝達になる(p99)

    ・惑星表面の温度、圧力条件が、液体の水の存在に合致しているかが必要、温度が低ければ氷になり、高すぎると水蒸気になるから(p107)

    ・地球表層におおよそ38億年前から液体の水が存在し続けたことが、地球でプレートテクトニクスの作動を可能にして、大陸がつくられた主要要因である(p109)

    2012年7月15日作成

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著者プロフィール

1954年、大阪府に生まれる。日本の火山学の第一人者。理学博士。専門はマグマ学。1978年、京都大学理学部を卒業。1983年、東京大学大学院理学系研究科博士課程を修了。京都大学総合人間学部教授、同大学大学院理学研究科教授、東京大学海洋研究所教授、独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)地球内部ダイナミクス・プログラムディレクター、神戸大学大学院理学研究科教授を経て、2016年、同大学海洋底探査センター教授となる。2003年に日本地質学会賞、11年に日本火山学会賞、12年に米国地球物理学連合(AGU)N.Lボーエン賞を受賞。著書には『地球の中心で何が起こっているか』『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』(以上、幻冬舎新書)、『地震と噴火は必ず起こる』(新潮選書)、『なぜ地球だけに陸と海があるのか』『和食はなぜおいしい』(以上、岩波書店)などがある。

「2019年 『火山大国日本 この国は生き残れるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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