ナメクジの言い分 (岩波科学ライブラリー)

著者 :
  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000295987

作品紹介・あらすじ

都会のナメクジは絶滅の一途(?)という噂の真偽を確かめるべく自ら発見マップを作成し、また全国の知り合いに呼びかけて観測情報を募る。歩きはノロノロだが食欲は旺盛でキャベツはバリバリと頬張る。ビールも大好き。意外にも記憶力は強いらしい。2億年ずっと生活スタイルを変えずに生き残ってきたナメクジの本音と愛らしさに迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 甲羅のあるナメクジがいるなんて、知りませんでした・・・

    *比喩でも何でもなく、本当にナメクジの本なので、軟体動物は苦手・・・という方はどうぞスルーして下さい。

    著者は日経新聞系の記者・編集者として働いた人。現在はフリーのジャーナリストです。
    ふとしたきっかけでナメクジに興味を抱き、知り合いの協力を仰いでナメクジ各種の分布を調べたり、生態や歴史について学び、またナメクジが出てくる文学作品、ゆかりの行事を探したりしています。「ナメコロジー(ナメクジ+エコロジーの造語)」と称するその「研究会」の成果をまとめたのが本書です。
    100ページほどとボリュームも少なく、また著者ももともと専門家というわけではないため親しみやすく書かれていて、ナメクジの入門書としては手頃だと思います。

    ナメクジの分布を調べていくとナメクジ界でも外来種の進出がめざましいようです。在来種のフタスジナメクジ(昔はよく見た)やキイロナメクジは徐々に追いやられ、台頭してきているのがチャコウラナメクジ。チャコ裏ナメクジと区切るのかと一瞬思ったのですが、正しくは茶甲羅ナメクジ。薄い甲羅があるんですねぇ。

    おかしかったのは、著者がナメコロジー研究を宣伝していくにつれ、全国に協力者が現れるのですが、熱心に協力するあまり、ナメクジを大量に「送ってくれる」人も出てきたこと。タッパーにみっちり入ったナメクジ。むーん。もらいたくない。
    著者は自分で捕まえたものに加えて、こうして送ってもらったナメクジを飼育してきたそうです。生態系を乱すわけにはいかないから逃がせないし、かといって殺すのもね、というところですが、すごい。
    餌はキャベツが最適だそうです。
    繁殖も観察しているそうで、赤ちゃんは結構かわいいらしいです。

    中津川のなめくじ祭が紹介されています。吉川英治の『新・平家物語』にも描かれていますが、懸想した人妻・袈裟御前を誤って殺してしまい出家した文覚上人のお話が元になっています。罪を許した袈裟御前が上人の墓にナメクジになって現れるという伝承があり、このお祭りはそれにちなむものです。生前は美人であったのに、ナメクジに化身するというのがちょっともの悲しいなぁ・・・。
    舐めると運勢が現れる三角形のおみくじ「ナメくじ」が人気らしいです。

    忌み嫌われがちなナメクジですが、こうして見ていくとなかなか興味深い生きものです。
    「ナメコロジー」の世界、ちょっと覗いてみませんか?


    *興味深かったのは、著者が行ったミニ実験。塩と砂糖(と小麦粉)を、それぞれナメクジに掛けてみたら、塩を掛けられたナメクジだけが死んだ、というものです(砂糖を掛けられたものはそのうちに下から這い出してきたそうです)。ナメクジ退治には塩を掛けろ、と言いますが、これは一般に「浸透圧」のせいで体内の水分が奪われて死ぬとされています。浸透圧だけなら、砂糖でも同様なはずで、ウィキペディアなんかにもそう書いてあります。
    http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%AF%E3%82%B8
    でも実際には砂糖を掛けるより、塩の方が(少なくとも劇的に)効果があったということは、例えばナメクジ体表の粘液には塩の方が溶けやすいとか溶解速度が速いとか、そういうことなのか・・・? あるいは吸湿性の違いなんでしょうか・・・? ちょっとよくわからないなぁ・・・。
    ご参考までに、溶解度自体はこのようになっています↓(*小麦粉は成分が単一ではないので、ちょっと置いておきます)
    塩と砂糖の水100 gへの溶解度(20℃)
    NaCl(分子量:58.4)  35.83g(0.61モル)
    ショ糖(分子量:342) 197.62g(0.58モル)
    ショ糖の方が分子量が大きいため、重量で同じくらい溶けてもモル濃度にしたらまだまだ薄いわけで、短時間のうちに体表面に作られる溶液の場合には食塩水の方がはるかに濃くなる、のかもしれません。

    塩と砂糖、それぞれの飽和水溶液に(呼吸孔を塞がないように)浸けたりするとどうなるのかなぁ・・・?
    でも、やってみるにはまず、ナメクジを捕まえないとね(^^;)。

    • bokemaruさん
      ぽんきちさん、こんにちは。
      実は、ぽんきちさんの「軟体動物は苦手な人はスルーして」というレビューに、コワくて先を読めずにいました。
      でも今日...
      ぽんきちさん、こんにちは。
      実は、ぽんきちさんの「軟体動物は苦手な人はスルーして」というレビューに、コワくて先を読めずにいました。
      でも今日、他でたまたま内容をちょっと知るチャンスがあり、思い切ってぽんきちさんのレビューを読んでみると…わわ、面白そう、読みたい…!
      幸い(?)我が家の狭い庭では、連日始末に困るほどのナメクジ被害に遭っているので、万が一、ナメクジ実験をしたくなったらすぐにでもトライできそうです…(^_^;)
      2012/12/23
    • ぽんきちさん
      bokemaruさん

      あ、すみません(^^;)。
      ちょっとタッパーの話が強烈かもしれない、と思って牽制してしまいました。
      全体としてはそん...
      bokemaruさん

      あ、すみません(^^;)。
      ちょっとタッパーの話が強烈かもしれない、と思って牽制してしまいました。
      全体としてはそんなに写真満載とかでもないので、多分、大丈夫、と思います。

      > ナメクジ被害
      大変ですね。ナメクジは呑兵衛で、ビールに寄ってくるようですよ。ペットボトル等にビールを入れ、口に油を塗って(←脱出防止)おくと、溺れ死ぬ(^^;)ようです。
      でも脱出しやすいのでくれぐれも逃げないようにするのが肝心みたいです。
      詳しくは本書にありました(^^)。
      2012/12/23
  • キター!いきなり冒頭から厳しいご指摘。
    「嫌いなものを目にすると、すぐに遠ざけようとする性癖がある」はい、すみません、私です(汗)
    「見た瞬間に思考停止に陥り」はい、仰る通り(汗)
    「対象の本質を理解しようとしなくなる」本当にごめんなさい~という感じでスタート。
    てっきり生物学か何かの専門家かと思いきや、全然違うらしい。

    思いがけずナメクジに興味を持ち始め、今やナメコロジー研究会なる会まで立ち上げ(現在の会員数はいかほどであろうか??相変わらずひとり?)ナメクジを研究すること14年、その集大成ともいえる成果をまとめたのが本書ということのようだ。

    本書の記述を見る限り、我が家で大量発生するナメクジはノハラナメクジのような気がする…。大きくても3センチくらいしかない。そう、そして確かに、梅雨どきもだけれど秋の終わりごろにもよく見かける。うようよいる。そして、きっと孵化して間もないのであろうナメクジは、本当に小っちゃくてかわいらしい。でもかわいくないけど。
    そうそう、リン酸第二鉄入りの駆除剤!使ってますよ~。だって死体を見たくないし。でも効果があるのかがわからないところが問題。これだけやっつけた!という実感が持てないんだよな~。
    などなど、我が家での実体験がいろいろあるので、いちいちリアルに反応してしまう。

    ナメクジにも脳があるとか(!そりゃそうか)、体重の50倍もの牽引力があるとか、体の各器官が細かく調べられていたりして、こんなことちゃんと調べる人がいるんだな~、などと妙なところに感心。
    そして意外に文学作品などにもナメクジが登場していて、ちょっと面白い。
    そういえば、気持ち悪いもの、嫌なものの代名詞的に引き合いに出すことも多いかも。
    著者にしてみれば、もっと彼らをよく知って理解してやってほしいというところだろう。しかし申し訳ないけれども、また我が家の庭では、春が来てナメクジファミリーの勢揃いに次々遭遇するのだろうなと思うと、今から気が重いことに変わりはない。本書を読んでも。

    ナメクジ目撃情報の提供なら、たくさんできたと思うんだけど。
    ナメクジさん、ごめんなさい。

  • 周囲にドン引きされつつも、ナメクジを飼育していた私。
    生態を知りたくてナメクジの本を探しても、害虫扱いで退治の仕方ばっかり…人間って冷たい!なんて切ない思いをしていたところで、出会った一冊。
    愛に溢れ、のんびりとした温かさも救いでした。
    変人を見るような冷ややかな目を向けられておりましたが、励まされました。
    生き物好きで良かった!

  • このシリーズは、不思議な生き物の研究の成果が出版されていることが多いが、ナメクジは研究職ではなく新聞記者あがりの人というところが異色。研究を本業にしていなくても、ここまで研究できるナメクジってすごい。

  •  「ナメクジに取りつかれた男の一生」ではなく、ありふれた存在でありながらどこか謎めいているナメクジについて、専門家でもない日経新聞の記者によるナメクジ本。

     日本にはフタスジナメクジというナメクジがいるが、明治時代になって外国から地中海原産のキイロナメクジが入り込んできた。さらにチャコウラというヨーロッパ産のナメクジも太平洋戦争後に米軍とともに入り込んできたとある。ナメクジにもいろいろ事情があるようだ。

     日本全国、いや海外にも広がるナメクジネットワークを駆使してどんなナメクジがいるのか調査をしている。一番目撃されているのは、ヨーロピアンブラックと言うナメクジと書かれている。ヨーロッパ産だけに神経が太いのかしらとふと思った。

     岐阜県の山村で毎年、旧暦7月9日に「なめくじ祭り」を開催しているとあって驚いた。いろんな祭りが開催されている日本だけにあっても不思議ではないか。

     ナメクジ芸を披露して一世を風靡した方がいらっしゃいます。吉本新喜劇に出演していた間寛平さん。http://www.uta-net.com/movie/24114/ に歌詞と関連する動画が掲載されています。ナメクジだからと言ってなめたらアカンデーということか。

     夏の自由研究にナメクジ、いいかもしれませんが、今の時期どこに行ったらいるのだろうか。それにペットショップでナメクジが手に入るかが問題です。

    なめくじ祭り

    http://www.kashimo.net/ogo/

  • 殻がないことを選択しただけで、人から嫌われる存在になってしまったナメクジ。殻以外の見た目はカタツムリと変わりないのにね。
    この本を読んで、ナメクジの生態を知り、じっくり観察したくなりました。
    家族にひかれたのは言うまでもありませんが…

  • 1320

    足立則夫
    1947年東京都青梅市生まれ。1971年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞社に入社、社会部、流通経済部、婦人家庭部の記者、日経ウーマン編集長、生活家庭部長、ウィークエンド編集部編集委員などを経て、2006年生活情報部特別編集委員。2011年10月末、日本経済新聞社を退職。現在はフリーのジャーナリストとして雑誌のコラムを執筆しながら、週に1度、川村学園女子大学の非常勤講師として教壇に立つ

    大阪府内は、箕面市の植田秀雄さんと、東大阪市の福西裕さん。植田さんは屁の研究をするへコロジストでもあり、オナラ探知器の開発をした人だ。漏らした犯人を探 すというような陰険な道具ではない。消化器の手術後、オナラの有無を口に出せない人のためにつくったのだが、なかなか普及していない。その自宅にはチャコウラがす む。福西さんは中小企業の経営者で、大学でも仕事の体験を基に講義している。工場 が密集する東大阪にもチャコウラがすむ。二人とも京都や奈良などの出先で見つけて は、写真や日撃情報の用紙を直ちに送ってくれた。

    南の島は珍しいナメクジの宝庫でもある。 九州、沖縄地方でも、チャコウラは進出著しい。もうひとつ注日すべきは、与那国 ひ がわ 島で従来いなかったフタスジが目撃されたことだ。この島の比川地区に住む陶芸家Y 1Kさんの庭で二〇〇八年に見つかったのだ。Yさん夫妻は、その二七年前に東京か ら移住しており、東京から島に持ち込んだものの中に卵か成体が付着していた可能性 がある。チャコウラだけでなく、フタスジも南の島にしっかり侵入しているのである。

  • ナメクジの入門書に最適。殻もなく、裸一貫で生きる彼らに敬意を表したい。

  • どこからともなく現れる憎きナメクジの生態を知るために読んだ。
    本書発行時点で関東地方で勢力を広げつつあった外来種の「マダラコウラナメクジ」とか、北米北西部にいるという「バナナナメクジ」とかを、もし身近で見かけたらショックだわ。

  • 文学から科学までナメクジに関するあれこれをコンパクトに紹介した雑記帳のような書籍。

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