試される民主主義 20世紀ヨーロッパの政治思想(上)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784000613514

作品紹介・あらすじ

ウェーバー,シュミットから,フーコー,ハヴェルまで,二〇世紀ヨーロッパを舞台に,民主主義をめぐって思想家たちが織りなしたドラマ.上巻では戦間期の新しい思想的実践とその挫折を,下巻では冷戦期の民主主義の競合と文化変容を描く.

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  • 政治思想史を専門とするドイツ人学者による20世紀のヨーロッパ政治思想史。第一次大戦、ロシア革命当時からの主としてドイツとロシアに着目し、ヨーロッパの政治思想の変遷を明らかにしている。基礎的な知識のない私にとって理解するのが難しかった。
    「20世紀は何よりも「イデオロギーの時代」と捉えられることが多い」p3
    「イデオロギーは「政治的宗教」と呼んだり、チャーチルのように「神なき宗教」と呼ぶ者もいる」p4
    「どのようにしてイデオロギーがこれほどまでに魅力的たりえたか、を改めて意識することが我々には必要である」p4
    「19世紀末にパスポート管理を行っていたのはオスマン帝国とロシアだけである」p21
    「(バジョット)われわれは民主主義に近づけば近づくほど、粗野な大衆をいつも喜ばせてきた威厳や見世物が好きになっていく」p31
    「第一次大戦は大陸の4つの帝国すべて、つまりドイツ帝国、ハプスブルク帝国、ロシア帝国、オスマン帝国を一掃したのである」p32
    「(ロシア皇帝について)当時ヴェーバーが主張したように、カリスマはカリスマであることを立証し続けなければならないのに、多くの君主は明らかにそれに失敗した」p34
    「第一次世界大戦は、2つの政治的なイメージを遺産として残したように思われる。ひとつは、国家、労働者、資本家の妥協の政治、言い換えれば、合理的な利益の追求の政治である。もうひとつは、国民を救済することに意思を集中させる、軍事化された政治である。どちらも、19世紀の古典的自由主義の否定であり、しばしば「大衆の政治への参入」と呼ばれる挑戦に独自のやり方で対応する試みだった」p49
    「ヴェーバーの正当性の三分類、伝統、カリスマ、合法性・合理性」p79
    「ヴェーバーは、党の政治機構によって支えられる「指導者型民主主義」に代わるものは、党官僚と名士が舞台裏で影響力を競い合う「指導者なき民主主義」しかない、と頑なに主張した」p79
    「労働者と農民、および都市と農村とを結合した壮大な親社会主義連合に加えて、文化的ヘゲモニーの完全な制覇を実現した国はただ一つ、スウェーデンである」p123
    「(ルカーチ・1920年)「真の民主主義」とは「形式的な自由」ではなく「連帯の精神のもとで緊密に統合され協力している、ひとつの集合的意志をもったメンバーの活動」である」p163
    「(ヒトラー)国民社会主義は、最大限の科学的知識とその精神的表現に基づいた、現実に対する立派で高度に理性的なアプローチである。国民社会主義運動はカルトの運動などではなく、むしろ、人種主義の本質そのものに対する熟考から導き出された民族至上主義で政治的な哲学なのである」p176 
    「(カール・シュミット)ムッソリーニのような独裁の方が自由主義的議会主義よりもはるかに信頼しうる民主主義の表現となる」p227
    「(ヒトラー)わたしは独裁者ではないし、独裁者になるつもりもない。国民社会主義は、議会主義のもとで堕落してしまった民主主義の理念に真面目に取り組んでいるのであり、時代遅れとなった制度がもはや国民全体との実り豊かな関係を維持できなくなったという、まさにその理由で、われわれはそれを駆逐したのだ」p227

  • 2019年11月12日図書館から借り出し。

  • 東2法経図・6F開架:311.2A/Mu29t/1/K

  • 日本語版に寄せて
    序 章
    第1章 溶融した大衆
     (一部の人びとにとっての)安定の時代
     (ほとんどの)みなさん,さようなら
     自由主義者なき自由主義革命
     ヴェーバーの問いかけ
     壮大な実験
     ヴェーバーの回答(一部の人びとのための)
    第2章 大戦間の実験――人民の形成,魂の改造
     多元主義の約束
     教育の政治学
     国民の家庭
     政党と福音伝道者
     新しい人民
    第3章 ファシストの主体――全体国家と民族共同体
     ソレルの神話
     ファシスト的解決
     全体国家の神話
     塹壕経験者の支配(トレンチョクラシー)か技術者の支配(テクノクラシー)か?
     ……あるいは生物学による支配(バイオクラシー)?
     国家の死
     諸国民なき広域圏
    第4章 再建の思想――自己規制する民主主義と「人民民主主義」
     程々の品位ある国家
     キリスト教民主主義の契機
     思想の取引
     「政治の安楽死」か?
     戦後的憲政秩序――民主主義の規律化
     荒野に叫ぶ自由主義者
     ヨーロッパ精神の脱植民地化
     新しい階級が引き継いだ
     社会主義の名誉を救う
     その髑髏(されこうべ)は二度と笑わないだろう
    第5章 異議申し立ての新時代――「父親なき社会」に向かって
     理論ですか? いいえ,結構です
     日常生活の革命
     民主主義の変容
     予言者
     永い五月――自律・自治・自主管理
     敵としての国家
     意図と結果
    第6章 反政治,そして歴史の終わり?
     「民主主義の危機」
     フランスにおける反全体主義の目覚め
     守勢にまわる社会民主主義
     「疎外の終焉」の終わり――そして王の首を刎(は)ねるということ
     モンペルランからの下山者
     ポスト全体主義における反政治の政治学
     メタ革命とレーニン主義の終焉
     遅まきながらの自由派(リベラル)の勝利か?

     謝辞
     事項索引・人名索引
    原書刊行 2010年
    https://www.iwanami.co.jp/book/b458091.html

    エルシュタイン『裁かれる民主主義 Democracy on Trial』

  • 民主主義は、終わりなき実験の繰り返しだ ヤン=ヴェルナー・ミュラーが見る世界:朝日新聞GLOBE+
    https://globe.asahi.com/article/11928243

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    ウェーバー,シュミットから,フーコー,ハヴェルまで,二〇世紀ヨーロッパを舞台に,民主主義をめぐって思想家たちが織りなしたドラマ.上巻では戦間期の新しい思想的実践とその挫折を,下巻では冷戦期の民主主義の競合と文化変容を描く.
    https://www.iwanami.co.jp/book/b458091.html

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著者プロフィール

(Jan-Werner Müller)
1970年ドイツ生まれ。ベルリン自由大学、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、オックスフォード大学セント・アントニーズ・カレッジ、プリンストン大学などで学び、オックスフォード大学で博士号を取得。2005年よりプリンストン大学政治学部で教鞭をとり、現在、プリンストン大学政治学部教授。邦訳書に、『カール・シュミットの「危険な精神」――戦後ヨーロッパ思想への遺産』(中道寿一訳、ミネルヴァ書房、2011年)、『ポピュリズムとは何か』(板橋拓己訳、岩波書店、2017年)がある。

「2017年 『憲法パトリオティズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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