カテドラル: 最も美しい大聖堂のできあがるまで

  • 岩波書店
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (90ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001105223

作品紹介・あらすじ

ゴシックの大聖堂の計画から完成までを、緻密なペン画で場面を追って克明に描き出し、わかりやすい文章で解説した画期的な絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 建築繋がりでこの本を。
    表紙画像ではパリのノートルダムのように見えるが、シュトローという架空の町の大聖堂。
    精密なペン画で、カテドラル(大聖堂)がどうやって建てられていくのかを追体験してみせてくれる。
    版の大きさもあり、デビッド・マコーレイのイラストが雄大で迫力がある。
    本書がデビュー作にしてコールデコット賞優秀作受賞。

    着工が1252年で完成が1338年という設定だが、実際は200年くらいかかったらしい。本書でも代変わりしたり工事中亡くなったり資金不足に陥ったり。
    建築用の機械というものが何もなかった頃。道具さえもひとの手によって作られる。
    設計し、全体の計画が承認され敷地が選ばれ、職人たちを雇う。
    親方たちだけでも、採石職人、石切り職人、彫刻職人、モルタル職人、石工、大工、鍛冶屋、屋根職人、ガラス職人・・と様々。
    それぞれの徒弟たちと、力仕事のための町の人や近くの田舎の人、十字軍から帰る途中の人まで何百人も。

    そんなに時間がかかったのはなぜか。
    何十メートルもの高さの天井をどうやってかけるのか。
    土台はどのように作られるのか。荘厳なバラ窓の作り方は?
    解説とイラストで解明していく工程を見ると、大聖堂に対する考え方も変わっていく。
    宗教と政治権力が結びついていた時代の建築物という程度の認識だったのが恥ずかしい。
    平面図、断面図、工具、手間暇のかかる工法、職人たちの住まいや暮らし、細部に至るまで実に詳細に描かれている。

    地震の多い日本では石や煉瓦の建築は発達しなかったため、なかなか大聖堂の建築まで紹介されることは少ない。あとがき部分の解説もかなり丁寧なので、少し加えてみる。

    教会堂は東西方向に長い長方形の建物で、西側に正面の玄関を作る。
    玄関の両側に高い塔を一基ずつ建て塔の上階に鐘を取り付ける。
    塔の上には原則として鋭く尖った形の高い屋根(尖頂屋根)を作る。
    北フランスの大聖堂では塔だけでも高さ60メートルから70メートルもあるとか。
    その上に尖頂屋根を作るから、屋根までの高さは100メートル以上にもなるということだ。
    ちなみにケルン大聖堂の西正面の2基の塔は高さ157メートル。
    ウルム教会堂は一基のみだが高さ162メートルに及ぶ。うーん・・凄い・・
    水平力に耐えられるように作られた骨組みの工夫も、非常に興味深い。
    ちなみにこの解説部分は著名な建築史家・飯田喜四郎さんによるもの。

    対象年齢は中学上級以上って、岩波さんたら無茶ですよ。
    大人向けの上質な歴史建築絵本で、信仰心とは無縁でも崇高な思いに打たれる一冊だ。
    「ピラミッド」「キャッスル」「都市」等と、マコーレイのシリーズ作品もぜひどうぞ。
    なかなか手に取られることも少ないと思うので、☆五つで皆さんを誘惑してみよう。

  • 表紙に描かれたカテドラルのファサードの絵を見る限りは、パリのノートルダムを思わせるのだが、これは実はシュトローという架空の街の大聖堂。本書は1252年に建設が決定され、1338年に完成するまでの工程を丁寧なイラスト入りで読者に追体験させようという試み。著者のマコーレイはイギリスのイラストレーターなのだが、訳者の飯田喜四郎はフランスのゴシックを専攻した名高い建築史家。ヨーロッパ各地で我々が眼にするカテドラルは、実に遠大な構想と気の遠くなるような作業の果てに、ようやくあのような姿でそこにあるのだった。

  • ルビも少なく、白黒。細かい、美しい描写の絵が容赦なくてすてき。高学年くらいで、建物に興味を持った子なら読みこなせるかも?がっつり技術を説明していて、やはりちょっと難しめ。

  • これが絵本!?難しすぎる!と思ったら、中学上級以上が対象だった。これ読んでから小説『大聖堂』を読めばよかった。

  • なるほどとは思うものの、やはり専門的で難しい

  • 2019.8.3市立図書館
    シュトローというフランスの架空の町(?)が13世紀ごろに町をあげて最高の大聖堂(カテドラル)を作ろうと計画して長い時間をかけて建設が進んでいくという筋書きで大聖堂の構造やその建築のための職人仕事のディテールをくわしく描いた絵本(といっても中学生〜大人むき)。

  • ヨーロッパなどに旅行すればまずカテドラル(聖堂)は観光するでしょうが、日本にはないのでピンと来ないです。
    絵本みたいな感じでカテドラルの作られ方を見ることで、少し身近になった状態になれる本ですね。
    ノンノンノートルダム!

  • 古典だが、あらためて。
    ゴシック聖堂の構造もよくわかるし、それをどのように建築したか、それにどれだけの時間がかかったかがよくわかる。
    大聖堂の建築にどれだけの歴史的時間がかかっていたかが、わかる。バルセロナのサグラダ・ファミリアがガウディ存命中に完成しなかったことを、あたかも特別なことのように言う向きがあるが、それがいかに素っ頓狂な主張かが、わかる。

  • 内容(「BOOK」データベースより)
    ゴシックの大聖堂の計画から完成までを、緻密なペン画で場面を追って克明に描き出し、わかりやすい文章で解説した画期的な絵本。

  • 絵本で理解できる「大聖堂の作り方」。様々な業種の職人たちが、魂を込めて、誇りを持って仕事に励んでいたことが分かる一冊。絵本だと思ってナメてかかってはいけない。武具・甲冑もいいけれど、中世の時代の、ごく普通の人々を理解するのに適した本。

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著者プロフィール

著者:デビッド・マコーレイ(David Macaulay)
イラストレーター、作家。1946年イギリス・ランカシャー生まれ。1957年にアメリカ・ニュージャージー州に移住し、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで学んだ後、同校の教師を務める。1975年にドイツ児童文学賞、1991年にコルデコット賞受賞。『道具
と機械の本―てこからコンピューターまで』(歌崎秀史訳、岩波書店)など全世界で発行されている著書多数。

「2023年 『数と図形について知っておきたいすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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