西遊記 上 (岩波少年文庫 547)

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  • Amazon.co.jp ・本 (359ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001145472

感想・レビュー・書評

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    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/722786

  • あまりにも有名な作品でありながら、じっくりと読んだことのある人はあまりいないのではないか、と思う。
    あまりに痛快な名著だ。何より、伊藤貴麿さんの訳が読みやすい。

    三蔵法師の生い立ちは奇妙なもので、僧になり大唐から天竺(インド)へ経を求めに行く使命があらかじめ定まっていたかのようだ。
    孫行者(孫悟空)が石から生まれて様々な仙術を身に着けるまでの過程の部分はいささか長く退屈だが、三蔵の仲間に加わってからの物語のテンポが良く、まるで仙境を旅しているかのようで飽きずに読める。途中、人参果(赤子の形をした果物)をめぐってトラブルが発生したり、特別な泉の水を飲んで妊娠してしまったり、妖怪武器を奪われたり、毎回奇想天外の大事件と危機が起こり、孫行者が知恵を絞って乗り越える。
    作者・呉承恩の想像力の深さに恐れ入る。今読んでも面白い作品だ。

    四人と白馬の旅。四人というバランスは、冒険物語としてはちょうどよい感じがする。ドラゴンクエスト等のRPGも4人パーティーが基本になっているが、案外、この「4人パーティー」の元祖というのは、西遊記かも知れないと思わされる所がある。

    三蔵は徳の高い上品な僧とはいえ、すぐにかっとなって孫行者と喧嘩になる。孫行者の言いつけを守らず、妖怪に捕まってしまい泣きながら孫行者に助けを求めたりと人間臭い一面があり、魅力的だ。
    「え、あなた今、孫行者を破門にしたよね…? もう意見を覆すんだ…」というくらい、考えが変わるのが早い三蔵。まだまだ未熟と言えよう。
    孫行者は主人公だけあって、色々な術を駆使し、太刀打ちできなければ、情報を集めて強い神仙に助けを求めに行く。頭の回転の速さと切り替えの速さが、読んでいてとても爽快だ。そして、短気でいたずら好きな孫行者が、旅の途中で成長していく姿も面白い。
    猪悟能(猪八戒)は食いしん坊で、食べ物に目がなくあさましい。単純なので、すぐに孫行者に一杯食わされて敵陣に切り込んでいくが、憎めないキャラクターだ。白馬を引く沙悟浄は、一歩引いて兄弟子の孫行者と猪悟能を立てている。一番癖がない。
    上・中・下巻、十四年の時を経て四人と白馬がようやく天竺にたどり着き、経を得て唐に戻るくだりは感動した。登山で大変な苦労を経た後、爽やかな風を浴びながら帰途へ着く感覚とも少し似ている。孫行者らと一緒に長い旅を終えて、心がふっと軽くなった、そんな爽快な作品だった。
    心躍る冒険と、その後の爽快感を味わいたい方に、ぜひこの作品を勧めたいと思う。

  • 孫悟空の傍若無人な振る舞いのシーンが長く読み進めるのがキツくなった。

  • 道は遠しといえども、ついにはゆきつく日があります。

    昔から『たとえ泰山は運べても、凡夫は浮かばせがたい』といってるじゃないか。師父はどうきても、他国を艱難辛苦して経めぐらなかければならないのだ。われわれの役目は、ただとちゅうを保護してさしあげるだけだ。もしも師父のかわりになって、われわれが西天へとんでいったって、如来さまは経をさずけてくださりはしない。というのは、つまり『たやすく得たものは、とかくなおざりにしやすい』というわけだからね。

    「道をいそいでるときに、どうしてからだなどを洗うのだ。」
    「おれは水簾洞へ帰ってきてから、だいぶ日もたったので、からだに妖気が立ちこめている。師父らきれいずきだから、きらわれるとこまるので…。」
    これをきいて八戒は、はじめて行者の美しいまごころを知ったのだった。

    西遊記は師弟旅。破天荒かつ規格外な孫悟空、人間世界での常識はまったく通じず、己の心に素直な行動。すぐカッとなりケンカっはやいが、三蔵法師と西方への旅をすることで、人道をわきまえ、成長していっている。はっきり言うと三蔵法師はなんのとりえもなさそうだけど、いつのまにか師匠になっている。人間社会もこうかもしれない。人と人が一緒に行動するきっかけはマチマチだけど、共に動くなかで友情だったり恋慕だったり、いろんな感情が揺れ動く。自分のことを自分以上に知ってくれる人を師と仰ぐ。

  • 面白い!

  • 西遊記は子供の頃から大好きで呉承恩の完訳に近いものまで読んだけど、中学生の時に読んだこれが一番おもしろかった。

  • 読まなければならない本だと思っているが、岩波文庫の10巻本のボリュームを見て
    しまうと、読破できるか心配になった。そこで手が伸びたのが岩波少年文庫版であっ
    た。
    中国の文化を知っていなければわからない冗談が随所にあり、岩波少年文庫ではその
    解説もついているので重宝した。
    それぞれの登場人物に勝手な先入観があったが、読了して先入観が変わった。
    孫悟空が面倒事のすべてを処理していることに驚き、八戒の役立たずさや沙和尚のまともさにも驚いた。
    慣れてくると八戒の引き起こす事件や、冗談に笑ってしまった。
    ドラマや漫画のイメージだけだった西遊記の原作を読めてよかったと思う。

  • 上・中・下となります
    大人が読んでも面白いと思います

  • 行者にちょっとお前は黙っとれ!!!と言いたくなる。

  • 物語自体はやっぱり面白い!!  決して完璧な存在とは言い難い4人の主人公の姿に何とも言えない愛情のようなものを感じました。  ホンモノの三蔵法師がこの物語に描かれているような軟弱 & 優柔不断 & 世話の焼ける人物だったのかどうかは甚だ疑問だとは思うけれど、逆に言えば現代の世界史の教科書にも名前が載るような偉人が、とっても親しみやすい人物になっているのも魅力だと感じました。

    彼らの道中に立ちふさがる妖怪たちは言ってみれば「仏教の教えを知らない野蛮で原始的で動物的」な人間のことだったのかもしれないし、そうであったならば、どんな宗教にありがちな「未開な人たちを感化する」というシナリオ作りにはちょっぴり「ブルータスよ、お前もか!」的な印象を持たないでもなかったけれど、仏教と道教が入り混じっているあたりに、ある種の救いを感じ一神教の筋運びよりはKiKi 個人としては抵抗少なく読むことができました。

    (全文はブログにて)

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著者プロフィール

1506年 ―1582年ごろ。明の時代の中国の官吏(役人)、文人。字は汝忠、号は射陽山人。江蘇省淮安県の人。中国では小説『西遊記』の著者とされている。1506年 ―1582年ごろ。明の時代の中国の官吏(役人)、文人。字は汝忠、号は射陽山人。江蘇省淮安県の人。中国では小説『西遊記』の著者とされている。

「2013年 『西遊記 (新装版)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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