月白青船山(つきしろあおふねやま)

著者 :
  • 岩波書店
3.47
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本棚登録 : 126
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001160222

作品紹介・あらすじ

夏休み,鎌倉の大叔父さんのお屋敷に預けられた兵吾と主税の兄弟は,地元の少女,静音と知り合って遊ぶようになるが,ある日,切り通しを滑っていて”時間が止まった”不思議な谷に迷い込み…….

感想・レビュー・書評

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  • 夏休み、病気の父の看護のため母がオーストラリアに向かうため、鎌倉の大叔父の家に預けられた小学5年の主税と4歳年上の兵吾は、近くの公園で知り合った少女静音とともに鎌倉時代に作られた道「切り通し」でダンボールそりで遊んでいたところ、突然、枝垂れ桜と茅葺屋根の家のある場所に出た。すぐに日常に戻った3人は白昼夢を疑うものの、もう一度切り通しで滑ってみると、同じ景色の場所に出、そこに出てきた老人から「瑠璃を見つけて」この谷を救ってほしいと頼まれる。猜疑心を持ちながらも3人は、この謎を解き瑠璃を探すことを試み始める。

    夏休みに出会った3人の少年少女が、力を合わせて謎を解く様子を、見守る大人たちの姿とともに描いた歴史ファンタジー。






    *******ここからはネタバレ*******

    ややこしいお話です。

    この兄弟の家系は、全て長男が兵吾、次男が主税。なので、彼らのおじいさんとお父さんと、この物語の主人公5年生の次男も主税なのですね。
    どっかもラブコメ漫画に、おじいさんとお父さんが同じ名前っていうのがありましたが、それより遥かに複雑です。

    おまけに謎解きも複雑で、ちょっと気を抜いて読み飛ばしていると、ええっ!?なんでここに向かうの?これなんの関係がある場所だっけ?と思うこともしばしばでした。
    ああ、挿絵はいらないから、兵吾のメモを載せてほしいと何度思ったことか。

    この、謎解き中心のお話の中で、ちょっと浮いてしまっているのが、静音の母、夏子です。静音チームと同じに若い頃の夏休み、一代前の兵吾・主税チームと謎解きをしていたらしいのですが、その最中に兵吾が海の事故で帰らぬ人になり、その想いを今まだ残し、それが今の夫との別居理由にもなっているようです。
    でも、この話は大人の問題。子どもの本には不要ではないでしょうか?

    わからないところも多々あります。
    彼らを案内し、瑠璃を隠した主税を助けた光る猫「月白」は、一体どういう存在?
    瑠璃を失うわけにはいかないからというので佳月が差し出されたのに、佳月を取り返すためになら、瑠璃を持ち出しても良かったの?
    毎日が同じに繰り返される谷と、落ちても割れなかった壺とはなにか関係があるの?


    初代か2代目かの主税が持ち帰れなかった瑠璃を、それ以降の主税が中心となって見つけるように仕向けられているのだとしたら、「祖先の未練を解決する物語」だったのかも知れませんね(これは、夏休みの物語にぴったりそうです(笑)。

    話がやたら複雑なので、謎解きが好きな高学年以上からオススメします。

    • ロニコさん
      図書館あきよしうたさん、コメントをありがとうございました^_^

      お嬢さんが3人もいらっしゃるのですね!
      華やかで賑やか?羨ましい限りです。...
      図書館あきよしうたさん、コメントをありがとうございました^_^

      お嬢さんが3人もいらっしゃるのですね!
      華やかで賑やか?羨ましい限りです。

      朽木祥さんは「引き出しの中の家」を読んだことがあります。心が暖かくなる良いお話だったと記憶していますが、同じ作家さんの作品でも色々ですね。

      学校図書館も新しい本が届きましたが、コロナで予約貸出しのみなので、頑張って宣伝しようと思います。

      あきよしうたさんの本棚、これからも楽しみにしています。
      2020/06/09
    • 図書館あきよしうたさん
      ロニコさん、こんにちは。

      「引き出しの中の家」読みました。
      可愛らしくて、心がほっと温かくなるお話ですね。

      朽木さんの作品はこ...
      ロニコさん、こんにちは。

      「引き出しの中の家」読みました。
      可愛らしくて、心がほっと温かくなるお話ですね。

      朽木さんの作品はこの「月白青船山」が初めてだったんですが、「引き出しの中の家」も読んでみてよかったです。
      教えてくださって、ありがとうございました。

      これからもいろいろな本についてお話したいです。
      また教えてくださいね。
      2020/06/13
    • ロニコさん
      図書館あきよしうたさん、またまたコメント失礼します。

      返信をありがとうございました^_^
      「引き出しの中の家」読んでくださったのでね、感激...
      図書館あきよしうたさん、またまたコメント失礼します。

      返信をありがとうございました^_^
      「引き出しの中の家」読んでくださったのでね、感激です!

      こちらこそ、あきよしうたさんの紹介とちょっとネタバレの、バランスの良いレビューを、これからも楽しみにしています。
      2020/06/14
  • 鎌倉の歴史と伝説を絡めたひと夏のファンタジー。

    絶え間なく降り注ぐ蟬時雨。ほんの一瞬だけ訪れる静寂。その一瞬の静寂をとらえたものだけがいざなわれる不思議な世界。
    子供はこの不思議な世界をすんなり心に受け入れ謎解きにワクワクし、大人は哀しみを含んだ歴史や心情をかみしめながら、遠い昔の夏休みに想いを馳せ謎解きを楽しむ。そんなふうに親子で楽しめる、良き作品だと感じた。

    物語に登場する大人の存在も良かった。
    悲しみを心に閉じ込めた大叔父さん、夏子さんのふとした瞬間の言葉が所々心に響く。
    これを味わえるのは大人ならでは。

    全てを読み終えてまたプロローグを読むとグッとくる。
    せつない。
    そして付録の 大姫異聞もたまらない。
    何倍もの感情が溢れている最後の一文にキュッと胸がしめつけられる。

  • 鎌倉を舞台にした歴史がらみのファンタジー。
    鎌倉ならあり得るかもと思わせてくれる。

    代々伝わる古い屋敷での親元を離れた夏休み、と大枠は非常に古典的。というか、あちらの世界との行き来や導き手である謎の白猫も含めて、舞台設定は全体的に古典的かもしれない。でも、何か心をつかまれて、最後のほうは一気に読んだ。

    謎に迫っていく過程もかなりぐるぐるしていて、けっして鮮やかとはいえないし、大おじさんがいろいろ知ってそうなら、もっと早くきいてみればいいのに、なんて言いたくもなったけれど、夢か幻のようなことを正面切って訊くには、それなりの人間関係ができなくてはならない。バカにしないで話を聴いてくれる人だという信頼感がなくては、踏みこんだ話なんかできないのだ。そこらへんの機微が、大おじさんのちょっとした言動をあちこちにちりばめてちゃんと描かれているのがいい。

    あと、静音のママ、夏子さん。大人である夏子さんがすんなり冒険の仲間に加わったのは、子どものころ冒険が途中で途切れてしまったからなんだろう。だから歳を重ね、一児の母になってはいても、夏子さんの心のなかには、子どものままストップしているところがある。それがタイムスリップで喪の儀式を経たことで少しだけ解凍されたのかもしれない。大人のかかえる問題をきっちり描いた児童書って実は好き。大人視点の読み方なのかもしれないけど。

    夏子さんの冒険が途中で終わってしまったのは、当時仲よしで、あこがれの人でもあった27代兵吾(兄弟の伯父にあたる人)が、謎を解きあかす直前に海で命を落としてしまったから。そこらへん、何も書かれてはいないけど、ファンタジーの世界に足を突っこむことの危険性を暗示しているような気もする。大おじさんの奧さんも早く亡くなっているし、土蔵も焼け落ちているし、じつはこの家、いろいろと不幸に襲われている。その昔、古井戸に落ちた十代ぐらい前の主税だって、見つけてもらわなければどうなったかわからないのだし。だから、この兄弟が無事に謎を解くことができたのは、ほんとうによかった。

    さいごに瑠璃(ラピスラズリの画像を検索してしまった)を井戸に投げこんだときの、華々しいフィナーレ感と、そのあとの寂しさ。瑠璃が手元に残らないからよけいに寂しいのだけど、お兄ちゃんの兵吾が何もかも書きとめてくれたからよかったね。亡くなった兵吾も記録者だったし、この兄弟はそういう役割分担なのだなあと。書きとめることで、冒険が、子ども時代のただのまぼろしではなく、この家の歴史として、また彼らの人生の1ページとして記録される。

    そんなこんなを積み重ねたあとのエピローグが美しくて、涙が出た。いい物語でした。

  • ブクログに書くのをすっかり忘れていた。
    おそらく三月後半に読了。冷たい朝に公園のベンチで読む。

    当初、主人公たちの名前が古風なので驚いたが、ちゃんと説明があってよかった。
    いろんなジャンルに広がる物語が心地よくて、楽しめたけど、もう大人になってから読んだこともあり、ややご都合主義を感じたり、ヒロイン少女の家庭や、主人公たちの世界に煙たさを感じた場面もあった。

    おじさん、いいかんじです。

  • 「夏休み,鎌倉の大叔父さんのお屋敷に預けられた兵吾と主税の兄弟は,地元の少女,静音と知り合って遊ぶようになるが,ある日,切り通しを滑っていて”時間が止まった”不思議な谷に迷い込み…….」

  • こういう話は嫌いじゃない。切り通しに行ってみたい。

  • 歴史とファンタジーと謎解きが楽しめる作品。源頼朝や娘の大姫、木曽義仲、義高など歴史上の人物の名前が出てくる。最初はまったく謎が解ける感じがしなかったけど少しずつ手がかりが見つかったり、大叔父さんや静音の母も加わり、謎が解けていく。3人が鎌倉の地を歩いて手がかりを集めようとするところはワクワクする。 
    鎌倉に行ってみたくなる。

  • オーストラリアに行くはずが、鎌倉の大叔父さんの家に預けられることになった小学5年生の主税を中心に書かれた歴史謎解きファンタジー。

    展開は大体予想通りだったが、結末がわかっていてもワクワクドキドキしながら読めた。
    複雑だが、いろいろな人物のエピソードが散りばめられていたのも、読み進めるのが楽しかった理由だと思う。

  • さすが朽木さん、と思いました。が、あまりに技巧的にうますぎてかえって物語が胸にひびいてきませんでした。

  • 夏休み、旅行の計画がふいになった兵吾と主税の兄弟は、鎌倉に住む大叔父さんのお屋敷に預けられることに。二人は地元の少女、静音と知り合って遊ぶようになるが、ある日、見知らぬ谷に迷い込んでしまい…。鎌倉の歴史と伝説が彩る、本格ファンタジー。

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著者プロフィール

広島出身。被爆2世。
デビュー作『かはたれ』(福音館書店)で児童文芸新人賞、日本児童文学者協会新人賞、産経児童出版文化賞受賞。その後『彼岸花はきつねのかんざし』(学習研究社)で日本児童文芸家協会賞受賞。『風の靴』(講談社)で産経児童出版文化賞大賞受賞。『光のうつしえ』(講談社)で小学館児童出版文化賞、福田清人賞受賞。『あひるの手紙』(佼成出版社)で日本児童文学者協会賞受賞。ほかの著書に『引き出しの中の家』(ポプラ社)、『月白青船山』(岩波書店)、『八月の光 失われた声に耳をすませて』(小学館)などがある。
近年では、『光のうつしえ』が英訳刊行され、アメリカでベストブックス2021に選定されるなど、海外での評価も高まっている。

「2023年 『かげふみ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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