目で見ることばで話をさせて

  • 岩波書店
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本棚登録 : 233
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (310ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784001160321

作品紹介・あらすじ

わたしは物語を作るのが好き。11歳の少女メアリーは、島のだれとでも手話で話し、いきいきと暮らしています。一方馬車の事故で死んだ兄さんのことが頭を離れません。ある日傲慢な科学者に誘拐され、ことばと自由を奪われて……。手話やろう文化への扉を開く、マーサズ・ヴィンヤード島を舞台にした歴史フィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 19世紀初頭、アメリカのボストン南東部に位置するマーサズ・ヴィンヤード島に暮らす11歳の少女メアリーが主人公。この島では、みんなが手話で会話する。耳が聞こえても聞こえなくても差別なし。ただし、先住民族であるワンパノアグ族への感情は人それぞれだ。
    島の住民の4人に1人の割合でろう者がいるという事で調査に訪れた若い科学者アンドリューの偏見により、メアリーは辛い目にあう。
    ボストンでは耳が聞こえない人を何もできない障害者とみなし、乞食になるくらいが関の山だと思われていた。まだまだ、先住民族にも黒人にも、人権がなかった時代。アンドリューのように考える人は多かったのだろう。
    それにしてもメアリーが救出された時には安堵して、涙がこぼれてしまった。
    メアリーのお父さんは人格者だなぁと感心してしまう。そして、そんなお父さんに支えられてメアリーはきっといい影響を与える大人になれるだろうと思う。
    偶然にも「ケイレブ」の舞台であるマーサズ・ヴィンヤード島が舞台で、ワンパノアグ族の名前も出てきて、ビックリ!ケイレブよりも後の時代なのだが。
    島中の人たちが手話で会話をし、普通に学校に行き、生活していて、「誰がろう者なのかわからなくなる」というようなセリフが出て来るが、素晴らしいと思った。また、あとがきにろう者や手話についての本なども紹介されている。

  • ろう者と聴者が手話を共通言語として使う島が舞台。主人公メアリーの、島では耳が聞こえないことを気にすることはなかったのに、ボストンから若い科学者が調査といって島に来たことで偏見を感じるようになり、その後ある事件で更に外の世界の残酷さにさらされる場面にハラハラしました。またそもそも島でも、部族や人種への差別意識を持つ人がいたり、それへの疑問をメアリーは友達や母親と共感できないわだかまりがあったりして、知らないうちに持ち疑ったことのない偏見は厄介で人を傷つけるのだと思った。
    手話が共通言語の地域がありそこでの暮らしやコミュニケーションの仕方が描かれていたのも興味深かかったけど、自分の罪悪感や困難に立ち向かう一人の女の子の成長していく姿により惹き込まれました。

  • マーサズ・ヴィンヤード島、という島をご存知でしょうか?
    アメリカの小さな島なのですが、遺伝性難聴で25人のうち一人が難聴だったため、島民全員が、聴こえる人も聴こえない人も独自に発達した手話を使っていたことが19世紀に発見され、世界的に有名になりました。
    この本はその島を舞台に、耳の聞こえない一人の女の子を主人公にした、歴史フィクションです。
    ということは、でてくる場所や出来事はおおむね本当にあったことだ、ということですね。
    島にいる時はごく普通の暮らしをしていたのに、ボストンに連れて行かれた彼女は耳が聞こえないイコール知的に遅れている扱いをされ、ひどい目にあいます。
    アメリカですら、手話が認められたのは1980年代ですから(なんとかして口話をさせようとしたため、手話が禁じられていた時代もあったようです)その無知と偏見と差別と戦うのは大変なことだったでしょう。
    彼女が少し大きくなって自分からボストンに出ていく続編もあるそうで(未訳)どんな大人になったのか知りたいので、この本も売れると良いな、と思います。
    (^o^)
    一巻が売れないと2巻は出ないからね。

    もっとマーサズ・ヴィンヤード島について知りたければ
    「みんなが手話で話した島」
    という一般書(というのは図書館用語で、大人の本、という意味です)があります。
    一緒に
    「僕らには僕らの言葉がある」
    というマンガもどうぞ。
    これを読むと、これは昔の話じゃなくて、今だに日本でも戦わなきゃいけない問題のままなんだなぁ、と思います。
    自分が加害者側に加担しないためにも知識は必要です。

    2024/01/05  更新

  • 地元の図書館でおすすめされていたので読んでみました。実際にあった島をモデルにした本です。物語としても面白く、ハラハラドキドキする場面もありました。19世紀のアメリカが舞台でもあり、黒人や原住民への偏見も含まれています。自分も含めて人間は偏見に満ちた存在である一方で希望もあることを感じながら読みました。すべての人に読んでほしいと思います。

  • 読書は、どんどん知らなかった世界を見せてくれます。

  • 耳の聞こえない人と聞こえる人が声と手話で何の問題もなく暮らしていたという島の話。
    設定は実話だそうだ。
    障碍があるということ、耳が聞こえないということは聞こえる人より聞こえるということがないこと、劣っているととらえるか、難しい。
    聞こえないよりは聞こえるほうがいいかも、聞こえなくても何不自由ないって言いきれるんだろうか…
    差別ではなく、違いととらえることができれば、いろんな事実が変わると思うけれど。
    カズオ・イシグロの「私を離さないで」を思い出した。クローンに知性はあるかという、
    昔の人は障碍のある人は知性がないととらえていたかも、島の聞こえない人たちは島を出て生きていけるのだろうか。なかなかの難問。

  • 聾者への偏見、侮蔑、島での人種差別、兄の死でギクシャクした母娘の再生が描かれている。
    科学者の聾者に対する態度は目に余るものがあったけど、後半で出てくる博士にも聾者は知能が低いと思われていたとは驚きだった。
    自分も知らず知らずのうちに偏見を持ってしまっているのかもしれない。耳が聞こえないだけで普通の人と何も変わらないのにというメアリーの言葉にハッとさせられた。
    多くの事に気付かされ、読んで良かった。
    続編も翻訳されると良いな。

  • ろう学校で事務員をしていたので、手話を少しかじりました。日本の手話を思い浮かべながら読みました。
    メアリーの言うとおり、声の言葉ではなく手話を使っているだけで、聴者から下に見られるのはおかしいと思います。
    前に脳出血で失語症になっても、手話は脳の別領域を使うので手話で対話できるひとに会ったこともあります。
    世界中のみんなが手話も使えるといいと思います。

  • <閲覧スタッフより>

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    所在記号:933.7||レソ
    資料番号:10269762
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  • 手話で話をする人々が普通に暮らす島の存在をこの本で初めて知りました。
    手話をする人をどうしても珍しい目で見てしまいがちですが、それが当たり前の場所もあるというのが新鮮でした。

    手話をしない人から手話をする人に対する差別、移民してきた人たちから、先住民族や自由黒人に対する差別、いろんな差別が描かれていました。

    いろいろ考えさせられた物語でした。

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