アメリカ外交50年 (同時代ライブラリー 57)

  • 岩波書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002600574

作品紹介・あらすじ

本書第2部の「ソヴェトの行動の源泉」が1947年に発表されると、ソ連「封じ込め政策」の理論的基礎を示すものとして、国際的に大きな反響をまきおこした。アメリカの戦後世界政策を構想した著者が、朝鮮、ベトナム戦争を含めて現代の諸問題を論じた本書は、アメリカ外交論の必読の古典である。

感想・レビュー・書評

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  • 「ソ連封じ込め戦略」を提唱した書だから、そういうタカ派なことが書いてあるのかと思ったら、驚くほど現実的なことを書いている本だった。

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    いずれにせよ、私は率直に述べるのだが、全面勝利という概念ほど、危険な妄想はないのであり、過去においてこれほど大きな害を及ぼしたものはなく、将来においてもこれほどさらに大きな害毒を及ぼす惧れのあるものはないと思うのであ
    る。

    (P156より)
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    まったくもってごもっともである。
    60年前に書かれた政治学の教科書にここまで明確に書いてあっても、なかなか守れないものらしい。ベトナムでもイラクでも、たぶんシリアでも。
    日本の戦後占領とGHQとマッカサーはアメリカの為政者に悪いことを覚えさせたような気がする。


    しかし、韜晦しているというか皮肉くさいというか、なにか騙されているような気分を抱かせるところがある。例えば、上の引用文に続くこの文章。

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    このような考え方は、われわれが今まで頻繁に抱いたようなものに比べれば、野心的でもないし、当面の見通しはあまり魅力的なものでもないし、その上われわれの自己イメージに照らしてもあまり喜ばしくないものである。多くの人びとにとって、それは怯懦と反動の臭いがすることであろう。だが、私はこのような懐疑に与することは出来ない。その発想において現実的であり、われわれ自身および他の人びとを共にあるがままに観察しようとする努力に基礎を持つところのものは、いかなる考え方にせよ、進歩的(リベラル)でないということはありえないのである。

    (P157より)
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    「だが、私はこのような・・・」以降の文章が、結局何がいいたいのかよく分からない。「一見反動的なようだが、それが本当のリベラルというものだ」と言いたいのはよく読めば分かるが、二重否定を使ったり、急に進歩的という概念で説明したり、鵺のようなと言うか、わざわざ分かりにくいというか。
    文章だからいいけど、もしこれが口頭だったら、「ハァ、そうですなあ」なんて生返事したあとで、「頭の良さそうな人に上手いことまるめこまれた」って思われそうだ。

    で、それこそが、わかりやすい「全面勝利」などを人口に膾炙させる遠因になっているのではないかな。

  • 第一次世界大戦から朝鮮戦争までのアメリカ外交について、外交官だった著者が述べた本。

    「全面勝利という観念ほど危険な妄想はない」「日本を中国本土からも、満州および朝鮮からも駆逐した結果、われわれはほとんど半世紀にわたって朝鮮および満州方面で日本が直面しかつ担ってきた問題と責任を引き継いだのである」
    朝鮮戦争の最中である1950年の講演で述べられたことなので、アメリカが日本から奪い取った問題と責任の苦々しさがにじみ出ている。

    イラクやアフガンに対するアメリカの態度についても、もちろん著者は知るはずはないのだが、ああこれかと思えるところがある。

    読みにくいが良書。

  • 買ったまま10年ほど眠っていた本書をたまたまひもといてみた。ケナンといえば、「封じ込め政策」の発案者として有名だが、この著作の諸論文を読めば、それが皮相な一面的レッテルでしかないことがよく分かる。著者のバランス感覚の取れた思想は全く時代を感じさせない。特に読みながらうなったのは、第一次大戦時のナショナリズムを論じた章。その後の湾岸戦争、イラク戦争、そして現在の日中関係などにおいても見られる大衆世論の傾向を見事に見抜いている。現在の私たち日本人が参考にすべき多くの示唆を含んでいると思う。

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