- Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
- / ISBN・EAN: 9784002600598
作品紹介・あらすじ
人類の最良の友、イヌは、哺乳動物のハンターとして2億年の歴史をもっている。その壮大な進化の物語を創成期から始め、数万年にわたる人間との交流のなかで家犬が誕生する過程を、科学的推理をまじえて明らかにする。「われらが犬」から「滅びゆく野生」を学び、人とイヌ、人と自然との共存のあり方を問う。
感想・レビュー・書評
-
1983年、動物学者であり科学イラストレーターでもある
J.C.マクローリンによって書かれた進化論に関する著書。
テーマはまさに表題どおりに「イヌ」。
原題は「THE CANINE CLAN -A New Looks at Man's Best Friend-」
ということである。
いまから30年前に書かれた本であるが、まるで古さを感じさせない。
というか、R.ドーキンスのかつての著書もそうなんだけど、
別に最新の分子生物学の知見とかを主軸に書いたわけではなくて、
ダーウィン以来の進化論の基本…進化と種の分化がなぜ起こったかを
読み解いているわけなので、ある意味では「真理」の著述なわけである。
ただし、進化論が難しいのは、物理学などと違って
「本当にそうだったのか」は極論すればよくわからない、というところにある。
そのファジーさが魅力でもあるわけだが。
さてさて、本書では、哺乳類の誕生から始まり、イヌの祖先をたどり、
そしてオオカミを経て、どうやって現在のイヌに至ってきたのかが
丹念にしるされている。
正直、私自身そんなにイヌが好きなわけじゃない。
いくつか理由はあるんだろうが、たぶん大きな理由には
「イヌの飼い主が好きになれない」ということがあると思う(笑)。
なんというか、イヌを擬人化して、人間以上にかわいがる人を見ると
なんだかゾッとしてしまうのである。
だったらまだ、二次元アイドルに没頭しているほうがよっぽど共感できる。
だがしかし、本書を読んでいくと、イヌ(犬種はさまざまだが)はまさに
「ヒトが遺伝の仕組みを利用して作り上げた種」であることがよくわかり、
となると、過剰なまでの擬人化が起こるのも止むを得ないのかもしれないなぁ、
ということがなんとなくわかってくるのだ。
ヒトにも生まれつき様々な個性である。それは遺伝子が決めているわけだが、
今日では少なくとも、人為的になんらかの遺伝子を重視して繁殖させて
純度を高めていくようなことは、倫理的な理由からして、行われない。
だがしかし、家畜なりペットなり、というのはそれが積み上げられてきた歴史
そのものなわけである。
生物や遺伝子そのものはヒトが生んだわけではないが、遺伝をコントロールして
純度を高めた生物を生み出してきたのは、まさに人間のなせる業なのである。
だから、イヌにも犬種がいっぱいいて、それらは生まれつき、さまざまな人間の
欲望に応えるような特性を持ち合わせてしまっているのである。
これを悲しいと捉えるか、喜ばしいと捉えるかは、人によるだろうけれど。
原人と類人猿が袂を別ったのは500~700万年くらい前と言われるが、
当然イヌの祖先と別れた時期というのはもっともっと昔なのである。
なのに、今日ではイヌはサル類の大半よりも、人間との生活にはるかに馴染んでいる。
パートナーと呼ばれるまでになっている。
これはなぜかといえば、まさにヒトが遺伝子をコントロールして(意図的にせよ
意図せざる結果にせよ)、どんどん人間の暮らしにフィットするように作り上げていった
から。
それがわかると、なんか、私の中でいろいろとあきらめがついた(笑)。
いやー、人間の欲望とか、それをかなえようとする知能ってのは
恐ろしいものだなぁ…と、
イヌに対するいやな感情はほとんどなくなったけど、なんか自分の祖先たちへの
恐怖心が芽生えてしまった(笑)。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
本を読む人読まぬ人とかくこの世はままならぬpart2より