TPPで暮らしはどうなる? (岩波ブックレット)

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  • Amazon.co.jp ・本 (64ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784002708768

作品紹介・あらすじ

単なる経済連携協定ではない、TPP。交渉は秘密に進められているが、漏れ伝わってくる内容は、どれも生活のあらゆる分野で私たちの暮らしを一変させる可能性を含むものばかり。どんな「日本の光景」を子どもたちに残していくのか、参加する前に考えたい、TPPの真実。

感想・レビュー・書評

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  • いち、生活者として、世界的な基準で日本の制度が変わっていくことについて、漠然とした期待がある。なにかが変われば、何かがよくなるのではないだろうか?と。

    本書は医療、食、農業の面でTPPに反対する人たちの論述。

    が、彼らが専門家であるにもかかわらず、私のような素人にTPPの危機を納得させることができていない。

    かつて、大店法という大規模小売店の出店を規制し、小規模小売店を保護する法律があったが、いまは撤廃されている。大手の方が便利な場所に良い品ぞろえで価格も安く、商品を商品者に提供しているからである。そして、消費者もよろこんで大規模小売店を利用する。
    ここで、小規模な店を保護することの意味は、単に商店街などの既得権者の利益を保護する以外にないのでは?

    農業を保護しようとする人たちの弁が弱いと感じるのは、その弁論の内容が上記のような、もっともらしいけどその保護に本当に価値があるのかどうかが見えないからだ。
    農業を守ることでコミュニティや観光を守れるというけれど、本当にそうなのか?

    不測の事態が発生した時に、穀物を自国で生産しておくことは保険になるのだというけれど、その確率は?どんな不測の事態が考えられるのか?自国で生産する以外の代替手段は?そのメリットとデメリットは?経済コストに試算すると?
    それだけでも数ページを使って丁寧に説明する価値があると思うが、それがなされていない点が残念。

    元外交官の佐藤優が海外への自衛隊派遣への賛成を表明するときのわかりやすい説明が秀逸だった。
    いわく、世界を町内会とみなしたときに、実際にゴミ拾い(戦争)をするのが欧米で、日本は金一封を出しているお金持ちなのだ、と。それで日本は生き残ることはできるだろうけど、町内会長(世界のリーダー、国連理事国)になることはないだろう、と。

    専門家はこれくらいのかみくだいた説明ができるべき。

    私の結論としては、この反対派の方々の論証が不十分であるがゆえに、TPPは賛成としたい。世界は結局のところよくなると信じて。

  • JMOOCの「グローバリゼーション下における日本経済と日本企業」で講師をしていた郭先生から辿ってたどり着いた本。TPPに対して否定的な見方をしている。
    自分自身の知識が無さすぎるから善悪どっちとは言えないけれど、自国の経済発展、自分の富や名声ではなく、世界全体としてこうしたら皆幸せな方向にいくんじゃないかな?っていう考えを持って行動できる人が多くならないといけないと感じた。
    片方が良いとこだけ、もう片方が悪いとこだけを得るのではなく、皆が良いとこ・悪いとこ両方を抱えるイメージ。理想ばかりで現実を知らない青二才の考えで馬鹿かもしれないけれど。

    しかし、日常がほとんど仕事に支配されて周囲の状況をあまり知らずに日々を過ごすのって本当に危ないな。視野は広く、広く意識しよう!

  • 「TPPはP4協定をアメリカがハイジャックしたようなもの」という表現がわかりやすかった。

    反TPPの立場で書かれているので、
    「悪」影響を指摘し不安を煽る内容になっている。

  • 登録番号:11295 分類番号:678.3ス

  • 鈴木さんの話がわかりやすかった。

  • 途中TTPって誤植があって笑った。

  • 鈴木宣弘氏の主張が、しっかりとした論旨があって興味深い。「各国のGDPに占める農林水産業のシェアは日本で1.4%だが、欧米各国はこれと同じくらいか、さらに1%を下回るほどの低さであるが、GDPに占める農業予算額は、我が国が30%を切っているのに対して、欧米ではやや低いフランスでも四割強で、イギリスでは約八割、米国では六割と、我が国よりもはるかに大きい」こういった事実はマスコミで報道されない。自民党・民主党の政治屋どもが「TPPで強い農業」を主張することには不快感を通り越して犯罪者に対する憎しみを覚える。

  • 巻頭と巻末にある鈴木の文章は、反米・反TPPを読者に熱くたたみかけ、「檄文」のような様相をみせている。学者の文章とは思えないが、ブックレットの文章とは本来こうあるべきものなのかもしれない。私はこの文のおかげでTPPに強い興味(危機感)を持った。他の執筆者の文章は、鈴木の文章とのバランスをとるかのようにクールである。

  • 第1章 1%の1%による1%のための協定

    怖いです。
    騙されてました。
    マスコミが流す農家の意見に腹を立てていた自分が、すっかりやられていたんです。
    農家ばかり補助金ずぶずぶで、海外からの安い農産物を消費者は買えるべきだ、位に思わされてました。

    第2章 食卓から安全と安心が消えていく

    食品に関する金儲けをさせたい(一部大企業に)、米国による圧力。
    怖いです。

    第3章 医療が市場競争にさらされるとき

    国民皆保険は直ぐには崩壊しないだろうという説明がありました。
    メガファーマも恐ろしい。
    入ってしまえばいいんですね。
    アメリカは勝てば官軍を地で行く国家です。

    第4章 日本の光景が一変してしまう

    貿易交渉で農業が交渉の妨げになったことは無いそうです。


    「今だけ、金だけ、自分だけ」 という言葉が印象的。
    ミクロにもマクロにもこういう考えの人間ばかりになったら日本も終わりかなと。
    教養の無い人間は、だいたい「今だけ、金だけ、自分だけ」が多いですけど。

  • 読んで愕然としました。
    TPP、ヤバっという感じです。
    日本経済に打撃を与え、国民の健康も奪う可能性のある協定をなぜ急進させようとするのか。
    もしかして、福島原発の賠償問題なども関係しているのかな...。

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著者プロフィール

1958年三重県生まれ。1982年東京大学農学部卒業。農林水産省、九州大学教
授を経て、2006年より東京大学教授。1998~2010年(夏季)米国コーネル大
学客員教授。2006~2014年学術会議連携会員。一般財団法人「食料安全保障
推進財団」理事長。『食の戦争』(文藝春秋 2013年)、『亡国の漁業権開放~協
同組合と資源・地域・国境の崩壊』(筑波書房 2017年)、『農業消滅』(平凡社
新書 2021年)、『協同組合と農業経済~共生システムの経済理論』(東京大学
出版会 2022年 食農資源経済学会賞受賞)、『世界で最初に飢えるのは日本』
(講談社 2022年)、『マンガでわかる 日本の食の危機』(方丈社 2023年)他、

「2023年 『もうひとつの「食料危機」を回避する選択』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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