- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003100745
作品紹介・あらすじ
中年の大学講師と義妹との恋愛をテーマとして、知識人の自己分裂の悲劇を清新な文体で描いた長篇小説。
感想・レビュー・書評
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兄と妹の禁断の恋愛、不義のアウトローな略奪愛!という眼で読んだが、古典文学のなせる技なのかどこか上品で気取っているのかな。
血縁ではないが優柔不断で不遇な二人はいつの間にか愛し合う関係になる。結末は…
言葉遣いや文字の使い方に明治時代の雰囲気を漂わせている。 -
語りのリズムといい、メロドラマ的な内容といい、100年以上前の作品とは思えないほど非常に読みすい。
小夜子と哲也の恋愛ものとして読んでも、もちろんこれはこれで十分面白いのだが、これだけだと今では恥ずかしくなるような陳腐な(言いかえれば、余りにも「王道の」)やりとりが目に付くかもしれない。
一世代前の、やたらと瞳が大きく輝く「少女漫画」的なコソバユサが満載!
今時ここまでのものも少ないから、ある意味では新鮮ともいえる。
つい電車で顔がにやけてしまう類のもの。
ただ、『其面影』はこのような典型的ヒロイン・小夜子と、それに惚れるいまいち頼りがいのない哲也の話というよりも、小夜子はもちろん、哲也の妻・時子といった女たちの、したたかにして、あざとくも逞しい姿を見ていく方がずっと面白く読めるのではないだろうか。
どこまでも、女って! -
「君はよく僕の事を中途半端だといって攻撃しましたな。なるほど僕には昔から何だか中心点が二つあって、始終その二点の間を彷徨しているような気がしたです。だから事に当たって何時も狐疑逡巡する、決着した所がない。」誰からも嫌われたくない、と思うと、誰も嫌いたくないと思う。これが存外難しい。
(宮崎大学 学部生)