夫婦善哉 正続 他十二篇 (岩波文庫)

著者 :
  • 岩波書店
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レビュー : 20
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003118528

作品紹介・あらすじ

代表作「夫婦善哉」に、二〇〇七年に発見された「続 夫婦善哉」をあわせて"正続"とし、その他、芥川賞候補作「俗臭」、作者が「或る意味で私の処女作」という「雨」、あるいは伝説の棋士坂田三吉を主人公にした「聴雨」など、織田作之助(一九一三‐四七)のおもに戦中期の代表的短篇を収録する。

感想・レビュー・書評

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  • 「夫婦善哉」「織田作之助」
    名前はきいたことがあっても読んだことがなかったので
    読んでみた。

    表題作をはじめ、どれもこれも
    貧乏で暗くて惨めで、
    だまされたり、つけ入られたり、
    どうしたって憧れたり、お手本にしたいようなことはなく、
    岐路に立った時おかしな選択をしてばかり、
    そんな人たちがたくさん出てきて、
    読むのが嫌になって投げ出してもおかしくないのに、
    不思議に引き込まれて、読了。

    うしろについている佐藤秀明さんの解説をよみ、
    一層鑑賞の度合いが深くなった。

    織田作之助は下町の貧乏な魚屋の息子で、
    織田はその商売を嫌い、一切手伝うことはなかったとのこと、
    中学受験にも受かり、そののち現在の京都大学にも合格した。
    (その生家界隈では大変に珍しいことで大騒ぎになったそう)

    本人は生まれ育った家庭のことを親しい友人にも一切話さなかった。
    しかし作品に選んだのは、その育った環境や
    父や母、姉など身の回りの人物であった。

    だから現実的と言うか、人間らしい人間が
    描かれているようだ。

    なかでも「放浪」が、やりきれなくて印象に残った。
    (好きな話という訳ではない、この不思議)

  • 働かず飲み食い遊んでばかりいる夫、柳吉。働き者でダメ亭主を支える気の強い妻、蝶子。
    そんな夫婦を描いた表題作「夫婦善哉」は何度もドラマ化され、織田作之助の代表作である。
    ダメ男を支える健気でかわいそうな妻。と思ったが、進むうちこれはダメ男にハマる女性の心理を描いたものだと気づく。
    「うちがいないとこの人は何もできひん。よしゃ、頑張ろ!」と発破を掛けてダメ夫を支え助けることに自尊と奮闘を見出している蝶子の姿は(小説としては面白いが)、もし実際だったら果たして幸せかどうか。
    ただ夫婦ってこういうものかも(小説は極端な例)。互いに依存して、されて、慣れ合って、喧嘩しながら生きていく。最後に蝶子と柳吉は揃ってぜんざいを食う。’お二人さんは仲がよろしおまんな‘と、ひやかされながら。ここはほのぼのする。夫婦いろいろあるけれども、ほんと、仲がよろしおまんな。


    他の収録作も暗い。景気が悪い話ばかり。でも、どこか明るい。大阪の風土と訛り言葉が暗さを中和させているのか。
    それも相俟ってと思うけれど、織田作之助の小説を読むと不思議な気分に陥る。
    入念に計画し備えておく。忍耐強く瑣事を処理し意思力で物事をコントロールしていく。こういった生の営みは在り得るし、そういう人は現にいる。それは立派なことだ。
    しかし、織田の小説は真っ当なことができない人たちで一杯だ。行き当たりばったりの生の歩みで無軌道で気まま。一途で素直だがスキがあり、脇が甘く、自己を曲げるということを知らない。バカだなあ思いつつも、しかし惹かれる。どこか愛おしい。

    立派であることは素晴らしいことだ。でも織田の小説を読むと、立派であることはなんてつまらないことだろうと思えてしまう。この不思議。

  • 正続の夫婦善哉だけを読んだ.
    こういうだめな男の系譜ってある時期まで綿々と続いてきたような気がするが,現代にもいるのかな.

  • NHKのドラマを観たかったのに、ずるずると見逃してしまったので
    それなら原作を読んでみようと思い、手に取った。

    「夫婦善哉」も「続 夫婦善哉」も終わり方がすごく良かった。
    仕事がうまくいかなかったり、病気になったり、喧嘩したり、
    人生は順風満帆な時よりも圧倒的に大変な事の方が多いわけで...。
    夫婦の話ではあるけれども、生きる逞しさを蝶子と柳吉から
    教えられたような気がした。

    どれも似たような空気感の話だったけど
    「放浪」「黒い顔」「聴雨」も好き。

  • ○目次
    夫婦善哉/続 夫婦善哉/雪の夜/放浪/湯の町/雨/俗臭/子守唄/黒い顔/聴雨/勝負師/姉妹/木の都/蛍

    ○感想
    織田作之助の、自身が育った「大阪」の庶民を描いた「大阪」の小説と、読んでいて感じました。登場人物の多くは本当にどうしようもない人達が多いのですが、彼ら彼女らがその「大阪」人としての奥底の意地というか心性が、最後に気張った行動をとるのかなと感じました。
    なお、本書中に、自分自身が関西に住んでいたころに通ったことのある自由軒カレー等実在のお店も登場したりと、関西に住んでいる、または住んだことのある人には実感できることが多いかもしれません。

  • 時間あったら読もうと思っていたけど、意外と読めず「夫婦善哉」と「続……」のみ。自由軒が出てきてちょっと笑った。いわゆるダメ男で、そもそも妻がいるのに駆け落ちていうどこまでもダメな男なのに、その男が結局ほっとけなくてしょうがない。少し病的なところもあったりするのかも。「続……」は最近見つかったものらしく、続きではあるけれど場所が移った番外編的なものにも見える。この後、どうなったのかも少し気になるけど、蝶子がやはり苦労するんだろうなあ。

  • 読書会の課題図書として読みました

  • 織田作之助の作品に出てくる男たちは、誰もが所謂ダメンズで、片や女性はとてもしっかりしている。ただ、男のダメなところも愛嬌があって、自分もあんなふうに脱力感満載で生きられたら楽かもな、とふと思うこともある。そんな男たちを甲斐甲斐しく世話する女性たちは、器量良しではないようだが、心根が美しく、素敵な女性たちだ。
    怠惰な男性と甲斐甲斐しい女性の対比で男女の機微のようなものを浮かび上がらせている。男女間によくあるドロドロしたところがあまりない、読後は爽やかな感じもする短編集。ダメンズ好きな女性は是非。

  • この歳になって、純文学にガッツリ嵌りました。
    ええ、某文豪ゲームのお蔭なのですが、こんなに読み倒して居るのは学生以来なんじゃないか…。
    昨秋ガラケーからスマホに替えて以来、青空文庫でどこでもこうした文学を読めるなんて、何て素晴らしい時代なのだろうとか噛みしめていたのですが、この『夫婦善哉』の続編は青空文庫に無かったんですね、残念。
    なので、コレクションも兼ねて久しぶりに紙の本を買いました。
    織田作『夫婦善哉』初読は十代の頃だったと思うのですが、只管蝶子さんが可哀想でならず、何が良いのかさっぱりわからなかったなと記憶していますが、この歳になって改めて読むと、しみじみと、染み入る様にくるものがありまして。織田作の作品には、多く「困った人たち」が登場してくるのですが、誰もかれもなぜか愛おしくなります。『天衣無縫』しかり。『六白金星』しかり。織田作自身と、その経験が下敷きになっているのだろうと思うだけでも、ファンとして作品に触れる事で幸せな気持ちになれます。
    ありがとう青空文庫(笑)

    この短編集には他に『蛍』も入っていて更に嬉しいです。寺田屋事件の話だと気付くのにだいぶかかりました。

  • <閲覧スタッフより>
    大手前大学 交流文化研究所主催 文芸講演会
    村上春樹と『阪神間文化』の周辺-私がめぐりあった作家たち-
    講師:ノンフィクション作家 小玉武 先生

    文芸講演会記念 特集展示本
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    所在記号:文庫||913.6||オタ
    資料番号:10220971
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著者プロフィール

1913年10月、大阪市生まれ。1933年から創作活動を開始し、1938年に小説「雨」を発表。1940年に「俗臭」が第10回芥川賞候補となる。同年に発表した「夫婦善哉」が改造社の第1回文藝推薦作品となり、以降、本格的に作家活動を開始。1946年4月に発表した「世相」が評判を呼び、作品発表の機会が劇的に増えるも、1947年1月、肺結核のため東京にて死去。その直前に評論「可能性の文学」を発表し、作風の転換を図っていた矢先のことだった。太宰治、坂口安吾らと共に「新戯作派」「無頼派」と呼ばれ「オダサク」の愛称で親しまれた。

「2019年 『織田作之助 女性小説セレクション 怖るべき女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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