- Amazon.co.jp ・本 (461ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003220931
感想・レビュー・書評
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モーム十大小説 子供にだけ読ませるのはもったいないーーーーーー
子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667‐1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。 -
図書館で借りた。
「ガリバー」「ガリヴァー旅行記」と聞いて、話の内容までパッと出てくる人はどれだけいるだろうか。巨人と小人の童話ものがたり、で記憶している人もいるのかもしれない。私は幼少の頃に、巨人がたくさんの小人に縛られている絵が幼心に痛々しく感じて、記憶の片隅に残っていた。
本作は童話ではない。社会風刺の小説だ。普通の人間が大海原を旅したら、小人の国にたどり着いたり、巨人の国や、空飛ぶ島に行っての大冒険…という側面はたしかにあるが、実態は1700年当時のイギリスを示唆している。異国・異文化に対する政策、宗教に対する政策、王族の判断…、風刺はピンとこないものも多いが、本作はそもそもフィクションなので、比較的分かりやすい。今にも繋がる、大人向けの風刺小説と感じた。
尚、作中に日本も登場する。ナンガサク称する長崎や、ヨーロッパ人に対して踏み絵を迫るなど、当時の時代背景の理解が深まる。
また、細かい発見がたくさんあった。
皆さんご存知宮崎駿の『天空の城ラピュタ』の「ラピュタ」は本書の空飛ぶ島から来ているし、小人を表す「リリパット」、またエンジニアなら知ってる「エンディアン」もこの本が由来。「ヤフー」もこの本では当たり前に登場し面食らった。それだけ影響力がある作品とも言える。
大人になってからこそ、読むのにオススメできる1冊。 -
日本を含めた八つの国を巡る四つの航海記からなる。人間嫌いで知られ、政治活動を行っていたスウィフトによる皮肉や風刺はとても強烈。夏目漱石は『ガリヴァー旅行記』を称賛しており、その影響は『吾輩は猫である』にも見られます。
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3.7/1291
内容(「BOOK」データベースより)
『子供のころ誰しも一度はあの大人国・小人国の物語に胸を躍らせたにちがいない。だが、おとなの目で原作を読むとき、そこにはおのずと別の世界が現出する。他をえぐり自らをえぐるスウィフト(1667‐1745)の筆鋒はほとんど諷刺の枠をつき破り、ついには人間そのものに対する戦慄すべき呪詛へと行きつかずには止まない。』
原書名:『Gulliver's Travels』
著者:ジョナサン・スウィフト (Jonathan Swift)
訳者:平井 正穂
出版社 : 岩波書店
文庫 : 461ページ
メモ:
・松岡正剛の千夜千冊 324 夜
・英語で書かれた小説ベスト100(The Guardian)「the 100 best novels written in english」
・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」
・世界文学ベスト100冊(Norwegian Book Clubs)
・西洋文学この百冊 -
特に、第三節のラピュタの話が面白いため再読。この章の後半には日本の江戸が出てくるのであるが丁度、江戸時代。踏み絵の話などがちょこっと出てくる。作者は無事にオランダ経由イギリスに帰るまでの冒険のお話。
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『ガリヴァー旅行記』(Gulliver's Travels)は,アイルランドの風刺作家ジョナサン・スウィフトにより仮名で執筆された風刺小説である。原版の内容が大衆の怒りを買うことを恐れた出版社により,大きな改変を加えられた初版が1726年に出版され,1735年に完全な版が出版された。
突飛な発想よりも作者の性格の悪さが前面にでた作品,言ってしまえば「アンサイクロペディア」のようなものだと思う。時代性を加味すれば重要な作品であることはわかるが,全体的に冗長で無駄の多い記述が目立つ。「アンサイクロペディア」としての楽しさは,沼正三「家畜人ヤプー」がそれに勝る。
フウイヌム国をはじめとした各国のモデルが気になるところではあるが,それこそまさに実在しない「ユートピア」を元としているのかもしれない。しかし,結局それは著者の思考に縛られた虚構に過ぎないのだろう。
時代背景メモ:
18世紀のイギリス(グレートブリテン王国)の政党,ブレフスキュ国にフランスを表現,ヘンリー8世の行った処刑や追放刑により始まったイングランド国教会とカトリック教徒の諍い,王立協会への風刺,啓蒙主義運動,種族的カースト制度 -
子供の頃に絵本で読んだことがあったが、
しっかり全編読んでみると本質は風刺文学だと言うことがわかった。
とくに第4章については、人間全体に対する批評がなされている。
とても面白かった。 -
小人の話と巨人の話は有名で、皆さん子供の頃に読んだかもですよね。その後があるなんて知らず、アニメPsycho-passの槙島聖護がバルニバービの医者の話をした所で、ガリヴァー旅行記本来のユーモアの香りを感じ、自分の好みに合うかも、と思い読んでみました。
実際バルニバービの医者の話を読みたくて読んだ人も少なからずいるのではないでしょうか?
シニカルで皮肉の籠った物語で、現実の色んな場面で「ラピュータの数学者達は、自分が精通してないが故に政治に対して好き放題、熱心に文句を言ってたみたいだね」とか「リリパット国の、王子は体裁と自分の思想のどちらもを取って靴底の高さが違う靴を片足ずつ履いて、歩き方が不自然だったんだよ」とか、そういうことを考えるようになって、何となく他人に優しくなれた気がします。
あと、noteで政治家や転売虫を描写する時など、自身の怒りが文にこもってしまう事があるのですが、その時はところどころガリヴァー旅行記で随所に見られる表現をするようになってしまいました。悪辣とか醜悪とか、犀利とか敬虔とかやたらと使いたがるようになってしまった読者の方も多いのでは?
変なツボを押され、自分はこういうユーモアが好きなんだと気付かされました。笑 とても面白かったです