デイヴィッド・コパフィールド 5 (岩波文庫 赤 228-5)

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  • Amazon.co.jp ・本 (450ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003222850

感想・レビュー・書評

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  • ついに読み終わってしまった。
    面白かった!読み終わるのが勿体ないくらい。
    普段読むのは漫画ばかりの私でも、頁を繰る手が止まらずに、5巻まで飽きることなく読むことができた。
    父から大河ドラマだよ〜と聞かされていたけど、本当にそう。
    150年も昔に書かれた大河ドラマ、当時のイギリスの街並みや観念、社会の様子などがよくわかるように描かれていて、話の筋以外のところも随分興味深かった。
    また、次々と現れるキャラクター達は漏れなくユーモアたっぷりで、読後にはどの人物にも思いを馳せてしまう。
    予定調和でご都合主義的なところもあるものの、割り切って読めば思い切り楽しめる要素でもあるかも。
    また忘れた頃に読み返したい。

  • 登場人物のひとりディック氏は、頭のネジがゆるんだおじさんで、ゴールの見えないはてしない執筆活動を続ける(壮大な自叙伝)。あたかも世界の救済を背負うかのようにも思え、その感じもまた村上春樹を連想させた。

    「可愛いけどおばかさん」な妻ドーラは、なんとなく弱ってきて、そのまま亡くなってしまう。
    デイヴィッドは悲嘆。欧州に渡る。イタリア〜スイスに滞在しつつ小説を書き続ける。

    ペゴティーおじさんは、行方知れずだったエミリーを探し続けていたが、ロンドンでようやく再会。
    英国での生活が破綻していたミコーバー氏は、新規まき直しを期してオーストラリアに渡ることに。
    この、植民地行きには、ペゴティーおじさん一行も同道することに。
    航空機などの交通機関もなく、帆船で長期間の航海での渡航である。なので、移民たちとは今生の別れとなる。
    デイヴィッドは、ペゴティーおじさんたちを、夕暮れのテムズ川で見送る。この旅立と別れの場面は情感にあふれ、ちょっとばかし胸に迫る。

    その後、少々の時が流れ、デイヴィッドはようやく、幼いころから自分を信じ支えてくれたアグネスの大切さに思い至る。読者には、ただ可愛いだけでのドーラでなく、アグネスこそかけがえのない伴侶たりうることは明白に思えるのだが、青年デイヴィッドはそれに気づかなかった。それは、若気の至りであり、恋は盲目、のなせるわざ。
    多くの青年が、それで判断と選択を誤るのだが、それもまた人生ではありがちなこと。

    終幕終章近く。デイヴィッドは、アグネスと結婚。
     そして、ふたりのその後の幸福な暮らしが伝えられる。作家として揺るぎない地歩を築いて大成したデイヴィッド。実り豊かで幸せな日々で、穏やかな大団円のうちに、物語は幕を閉じるのであった。

  • まとまりすぎているくらい、まとまっている最後だった。
    それぞれの人物が落ち着くべきところに落ち着いた、まさにそんな感じだ。
    ディケンズは優しいな、と思う。
    登場人物たちを大切にしている。
    やや甘やかしているくらい、キレイな筋を作っている。
    アグネスの件については、伯母さんになった気分でやきもきした。
    面白く読めた。
    本作には、様々な夫婦が登場する。
    そこに視点を置いて読んでも、考えさせられたり、うなずいたり、楽しめた。
    この作品は読む価値ありだと思う。
    子どもたちにも薦めたい。

  • 小説ってやっぱり面白いんだな~と安心する。
    作中、コパフィールドが昔馴染みから「あんたの小説は眠くならない」と評されて、それは大切なことだって再認識する箇所があるが、その通りこんなにも長大な小説なのにいっぺんも眠くなるような難所はなかった。

    それはどうしてか、考えるにつけて。
    ひとつには非常にドラマチックな点。一人称で描かれたコパフィールド少年の有為転変の物語なんかハラハラドキドキが止まらない。

    ひとつには、とてもフラットに描かれている点。実母の命を奪ったダーシー姉弟や体罰校長のクリークルといった同じ人間とはとても思えない冷血漢が続々出てくるけれども、そういった時の感情にはあまり深入りしない。コパフィールド少年がアンフェアな仕打ちをしたミル先生に対しても、実にあっさりと話をつけてしまう。(しかしまさか最後の最後でそれらの人物に決着をつけてしまうとは思いもよらなかった。ご都合主義の骨頂とも言えるだろうが、感情や思考の葛藤には深入りせずに、あくまで物語としてケリをつける潔さがそこにはある。ディケンズにとって一人称の小説を書く時、それによりバランスを保ったのかな?)

    まあ色々と考えてみるけど、この小説を読み進めていく原動力は、「ここには何か大事なことが書いてある」という何か直観とか本能的なもののような気がどうもする。

    言葉にするとすれば、「啓蒙主義的」ってことになりそう。美しい行いや正義、思いやりといった人間として「善」であることがここには描かれている。
    啓蒙的な小説ってここ最近の本に探すのはちっと難しいんじゃなかろうか。
    どうも「善」ははびこる「悪」に道を明けたようだ。

    だからこそこの本には、時たま開いて読んでみる価値が絶対にある。

    個人的には四巻の「新生活」と「家庭」といったドーラとの結婚生活のことが描かれた章がとても身につまされ、またついほろっとくるような話でした。

  • いろんな人物が出てくるが、ベッツィ伯母さんが良い人だった。
    伯母さんに、奥さんに家事を教えたりしてくれないかと頼んだときに、「お前の母さんが再婚してどうなったか憶えているでしょう」と言われ、義父と同じことをするところだったと覚ってはっとするシーンが、個人的には印象に残った。奥さんも大概だけど。

  • ディケンズは、子供の頃読んだオリバー・ツイスト以来。愛情に恵まれない幼年期を過ごしながら、正直で素直で努力家に育ち、自ら人生を切り開くことに成功する主人公。性格の捻くれた悪党はみなそれなりの報いを受け、真っ当な人たちはそれなりの幸せを手にする、なるほどディケンズワールドだった。可愛らしいが知性と生活能力に欠ける妻はなんとも都合が良く死んでくれるところには苦笑してしまったが…

  • ようやく完読。ハッピーエンドで楽しい小説だった。ドーラとアグネスの去就には短絡的なところも感じられたが、登場人物それぞれのキャラクターがおもしろかった。それでも発表当時は主人公が持つ派手ではなく真面目、誠実が尊ばれたのかなと思った。挿絵が著者の他の作品にも見られるがこれもよかった。2023.6.15

  • ドーラの死、ヒープの破滅、ペゴティー家の渡豪、アグネスとの再婚。

    複数の話の筋を見事にまとめたな、という印象。
    というかドーラの死因はなんだったんだろう。
    特に理由もなく死んでしまう時代ということなのか。

  • 伏線回収も見事。しみじみとしており、精神の高潔さが脈打っている。

    当時も、今も、ジェンダー観に揺さぶりを与えくれる。
    オーストラリアへの移民が夢として描かれているのが、植民地時代の名残か。

  •  遂に完結! 最後の5巻はすべての伏線を回収して,基本的に良い人には幸せが,悪人にはそれ相応の報いが訪れる(例外もあるが).そうか,謎のキャラクターのミコーバー氏の役割はそういうことか.
     ディケンズのお話の常で,やや主人公のキャラクターが薄く,基本的に周りの出来事に翻弄されることによってストーリーが進んでいくのだが,今回の場合には「ほぼ自伝」とされているので,つまり自分の感情を書き込んでいないのは,やむを得ないでしょう.
     ご都合主義とも言われることが多いディケンズの小説の中では,おしまいにきちんと着地を果たした感じで,とても良くストーリーが練られて書かれているように感じた.かなりの数の小説は,そのルーツをたどると,このデイヴィッド・コパフィールドに源流が行き着くのではないか?

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著者プロフィール

Charles Dickens 1812-70
イギリスの国民的作家。24歳のときに書いた最初の長編小説『ピクウィック・クラブ』が大成功を収め、一躍流行作家になる。月刊分冊または月刊誌・週刊誌への連載で15編の長編小説を執筆する傍ら、雑誌の経営・編集、慈善事業への参加、アマチュア演劇の上演、自作の公開朗読など多面的・精力的に活動した。代表作に『オリヴァー・トゥイスト』、『クリスマス・キャロル』、『デイヴィッド・コパフィールド』、『荒涼館』、『二都物語』、『大いなる遺産』など。

「2019年 『ドクター・マリゴールド 朗読小説傑作選』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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