- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003229712
作品紹介・あらすじ
テブリック氏の夫人シルヴィアはまだ23歳、立ち居ふるまいは上品で人並みすぐれた美形。いつものように二人は散歩にでかけるが、突然、夫人が狐に変身してしまう。次第に内面も野性化してゆく妻をあくまでも愛しぬこうとする夫…。「一切の批判をよせつけない佳篇」とウエルズに絶賛された、イギリスの作家ガーネットの代表作。
感想・レビュー・書評
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ある日、なぜか、突然きつねになってしまったテブリック夫人。
はじめは姿こそきつねであっても気品を失わなかった夫人は、やがて内面も獣に変わってゆく。テブリック氏はきつねに変わりゆく夫人をひたすら愛し続ける。はたして、テブリック氏は夫人を愛しているのか。きつねを愛しているのか・・・
きつねになった夫人に対するもっとも分かりやすい見方は、人を愛するということのむずかしさ、自分と他人の断絶のたとえとして見ることだと思います。テブリック氏は妻を人間のルールに従わせたかっただろうし、きつねになった夫人はテブリック氏をきつねのルールに従わせたかった。
そんなとき、テブリック氏のもとに夫人を育て上げた乳母が帰ってきますが、それがかえって夫人の変化に拍車をかけてしまいます。
テブリック氏は変わりゆく夫人に絶望し、ときには八つ当たりしながらも愛し続ける。その結果、テブリック氏は、きつねのルールに理解を示すわけですが、人がきつねのように振る舞おうというのだから滑稽そのもの。けれどそれをあざ笑うことができないのは、愛のもつ盲目さ、悲しさ、美しさなどを見出すことができるからなのかもしれません。
あるいは、乳母の登場が夫人の変化を進めたことから、女性として上品であるべきだという規範に対する反発が関係しているのではないかとか、夫人は自らきつねとして生きることを早々に決意したのではないかとか、いろいろ考えさせられるところがありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ある日、最愛の妻が狐になってしまった。夫は変わらず愛し続けようとするが、妻は人間の記憶を忘れ始めて狐になっていく…。
最初はカフカの「変身」を家族側の視点から描いた作品かと思ったが、読み進めるうちに「これはストーカー小説かも」と考え始めた。
ある日、妻が変貌する。夫は妻の変貌を受け入れられず、元に戻るよう努力する。しかし、妻は嗜好が変わってしまい現状に満足しているのだ。それでも昔の妻の姿を忘れられない夫は追い続ける。
突然変わってしまったパートナーの姿を受け入れられず、昔に戻るよう強制する。何だかノンフィクションで読んだストーカーそのものに感じるのだが。変わった相手に対して変わらぬ愛を注ぎ続けるって、美しいようだが一方で支配的とも言える。
愛は束縛とも言うが、現在を生きる人間にとって過去に縛り付けようとする存在は重いだけだ。 -
タイトルといい荒唐無稽なストーリーといい、ツッコミを入れたくなるかと思いきや、全くその余地がない。読み終え表紙を返して気付いた「一切の批判をよせつけない」とのウエルズの評。主人公が絶えず繰り返す自己批判がゆえかもしれない。唸る、とはこういうことか。
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最初から最後まで違和感があって、読後感もなんか良くない。
テブリック?さんだっけ、奥さんのシルビアさんが狐になったのが、明確にテブリックさんの思い込みかと思ってた。奥さんがいなくなってから別の場所かなんかで狐を奥さんと思い込むみたいな。
本の中では、一緒に散歩していて気づいたら狐になっていたことになっている。えっ、本当に狐になっちゃったの?ってなった。
テブリックさん自身も狐の奥さんに執心しているの悩んでいるの痛ましい。その割にはほんのページ数少なかった。もっと苦悩してる分量多くても良かったのに。
気になったのは、お風呂入ってなくて臭そうだったこと。この地域のこの時代の人がどの程度お風呂入ってたかわからないけどお風呂入れよって思った。一回お風呂入る記述があったので作者も気になっていた?
あと、家が汚さそう。テブリックさん家事やってたと、記述あったけどちゃんと掃除してたのかな。
仕事してなさそうなのに、ずっと生活できててお金がありそうなのも気になった。
最後あっさり終わってたのもありがちなんだけどもやもやする… -
まず言いたいのは、お前は金持ちだからこんなことができるんだってことで、金がなければ狐になって即終了である。あんな生き物飼ったらどれだけの維持費になるというのか。
とは言え金に困らんチートを前提にするなら、後はキツネってけっこう可愛いんだけど、スゲー臭いっていうのが!エゲレス人が体臭を云々するくらいだからかなり臭いんだろうなぁ。残念。
てかキツネになった奥様と酒飲んで乱痴気騒ぎして翌日に神様に誤ってたけど、あれはやってたんじゃないか。子キツネも君の子じゃないんか。というくらい、キツネには優しいけど、犬とかバシバシ撃ち殺す暴れん坊っぷりでやっぱエゲレス人は怖いわ。 -
意外な結末だった
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昔からある変身もの。これは奥様がどんどんキツネ化していき最後は本当にキツネに……面白かった。
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額面通りであれば狐に変身した妻と亭主の話だが、肉体的な意味合いでなく精神的な変化と受け取り、1人で戦慄した。
若妻を以前と同じ人間とは思えなくなった。
自分の洋服を着ることを嫌がり、自由奔放に振る舞うようになり、ついには出奔し他の男の子供を産み、嬉しげに私に見せ、なつかせようとする。私はこの家族の面倒をみる。。。
自分を裏切り蔑ろにした「あの女狐めが」人間である訳がない。あいつはある時に狐に変わったのだ、という主人公の病んだ心の叫びを勝手に感じて勝手にホラー化して読んでしまいました。 -
メタファー?
寓話?
とにかく、1922年の資料としてだけ