開拓者たち 上 (岩波文庫 赤 338-1)

  • 岩波書店
3.40
  • (1)
  • (1)
  • (2)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 23
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003233818

作品紹介・あらすじ

クーパーの『革脚絆物語』シリーズ第一作。作者所有の広大な開拓地クーパーズタウンをモデルにした架空の村テンプルトンを舞台に、大森林に住む自然人バンボーとこの地方の領主である文明人マーマデュークをめぐる波瀾万丈の物語。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • クーパーの「革脚絆(かわきゃはん)物語」(レザーストッキング・テイルズ)5部作の1つ。
    この5部作の共通する主人公はナサニエル(ナッティ)・バンポーで、イギリス人だが先住アメリカ人と関わりが深い革脚絆を着用する森の狩人。

    この5部作は出版された年と作中の舞台年度が違っている。
    出版順だと「開拓者たち」⇒「モヒカン族の最後」⇒「大草原」⇒「道を開く者」⇒「鹿殺し」。
    作品の舞台年度だと「鹿殺し」(ナッティ23,4歳)⇒「モヒカン族の最後」(36,7歳)⇒「道を開く者」(38歳)⇒「開拓者たち」(72歳)⇒「大草原」(82,3歳)。
    各話によりナサニエル・ボンパーの呼名は変わるらしい。この「開拓者たち」での呼名は”ナッティ”または”レザーストッキング”。年齢は72歳前後。

    なお、いちばん有名な「モヒカン族の最後」は銃の名手ということで味方のモヒカン族からは「ホークアイ(鷹の目)」、敵のヒューロン族からは「長い銃」と呼ばれていた。作品舞台は1757年の”フレンチ・インディアン戦争”。
    感想はこちら。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4834011658

    「モヒカン族の最後」ではイギリス人の斥候をしていたナッティは、この「開拓者たち」では森に住む老猟師となっている。作品の年代は1793年、アメリカは家宅が進み文明の波は押し寄せ、先住アメリカ人の住居も、森も、白人たちが作った法律により収められている。
    ナッティが住んでいる地域(現在のニューヨーク)の領主で判事のマーマデューク・テンプルは、狩猟権利を人に与える立場であり、ナッティは自分の生活のための狩猟は認められている。しかしそれは以前のような森の自由な生活や狩りを制限するものだった。
    ナッティは森の小屋で、先住アメリカ人で今ではキリスト教に改教したインディアン・ジョンと、デラウェア族の血を引く若い白人猟師オリヴァー・エドワース(”ヤング・イーグル”という種族名があるらしい)と共に暮らしている。
    そしてこのインディアン・ジョンというのが「モヒカン族の最後」のチンガチグックの現在の姿だった!息子を亡くし一族を亡くしたチンガチグックは定められた居住区ではなく森で白人と先住民との間のような生活をしているのか。その上チンガチグックは、白人の酒(ラム酒らしい)に溺れたり老いたる我が身を嘆いたり…、ああ、誇り高き”偉大な蛇”のチンガチグック。

    なお、作者のクーパーはこのインディアン・ジョン(チンガチグック)をモヒーガン族と書いているのだが、解説によると”モヒカン族”と”モヒーガン族”を混同しているようだ。
    ”モヒーガン族”はイギリス植民者たちに協力して他部族の壊滅に手を貸した。”モヒカン族”は欧州における新大陸開拓に追いやられて消滅した。

    …閑話休題。

    ナッティ、インディアン・ジョンと共に暮らす若い猟師のオリヴァーは、白人による土地支配に反感を持っている。だがある出来事のためにマーマデューク・テンプルの屋敷で働くことになった。
    マーマデュークには、都会の学校から戻ってきたばかりの一人娘で今後家の女主人になるエリザベスがいる。
    テンプル家の周りにいるのは、親戚で保安官のリチャード・ジョーンズ、黒人奴隷のアメガムノン、女中で家事を取り仕切っていたリマーカブル・ペディボーン、医者のエルネイサン。
    さらにこの頃のアメリカはヨーロッパ各国から移住してきた人々がいる。フランス革命後にアメリカ移住したフランス人商人ムッシュー・ルクワ、ドイツ人元軍人フレデリック・ハルトマン(フリッツ)、アイルランド人居酒屋主人のホリスター元大尉とその妻。そして巡回牧師のグラント氏とその娘のルイザがいて、このルイザはエリザベス・テンプルのお話相手となる(この当時の風習で、良家に住んでお嬢様のお相手をする女性)。

    この上巻では、この登場人物たちの身の上や政治的宗教的立場の説明となっている。開拓されて国も習慣も違う人々が集まったため、キリスト教とはいってもプロテスタント、クエーカー、教会派、メソジスト、長老派、監督派…と多岐にわたっている。そのため新しい街で教会を立てようとしてもではどの宗派の教会にしてどの牧師(神父)を呼ぶか?が論じられる。
    ちょうど季節はクリスマス前後なのですが、この頃は”サンタクロース”というのはオランダ人が植民地に持ち込んだ民族風習(宗教風習ではなく)だから異端扱いだったらしい。
    そしてアメリカ先住民たちは自分たちが先祖伝来で住んでいた土地を終われ権利を奪われ居住区に追いやられている。さらには森で自分に必要なものだけを獲って暮らすナッティのような者はすでに時代遅れ、開拓伐採乱獲が進められていく。

    上巻ではあまり話が動かずに大いなる序章という感じだった。

    あと翻訳としてちょっと気になるのが立場や国の訛りを表すのに日本の方言にしているところ。
    田舎もん老猟師のナッティは「おらぁ〇〇だんべな」だし、アイルランド人居酒屋店主は「わては○○やさかいに」なのでちょっと笑えてしまうというか(笑)。

    ※追記
    下巻レビュー書きました。
    https://booklog.jp/users/junsuido/archives/1/4003233824#comment

  • 最初はとっつきにくい文章と内容に辟易した。上巻の半分くらいまでは、なかなかなじめずに苦労したけれど、、、途中から、だんだん面白くなってきて、下巻は寝る間も惜しんで一気に読んでしまった。1823年の初版、3000部が一日で売り切れたという大ベストセラー。その様子を想像するのも楽しい。

  • 南北戦争以前の米文学として、押さえておきたい作品の一つ。
    注が多くてなかなか先に進められなかったが、訳は読みやすい。

    村山淳彦 訳/2002.6.16 初版

全4件中 1 - 4件を表示

クーパーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×