芸術と革命 他4篇 (岩波文庫)

著者 :
制作 : 北村 義男 
  • 岩波書店
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003242148

感想・レビュー・書評

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  • 「共和主義の運動は王権にたいしていかなる関係にたつか」「人間と現在の社会」「革命」「芸術と革命」「『芸術と革命』のために」の5編を収録。最初の3編は革命期に書かれたアジテーション風の小文で、論文「芸術と革命」が本書の目玉である。「『芸術と革命』のために」はメモみたいなものだろう。

    「芸術と革命」は1849年に亡命先のチューリヒで書かれた。ワーグナーにとって、芸術のあるべき姿は古代ギリシャに見出される。自由でのびやかな人間の本来性を称揚し、共同体の理念を確認する契機としての総合芸術がそれである。そのような共同性・総合性はしかし、現世主義的・物質主義的なローマ人たちの関心を引くものではなかった。芸術の本来を忘れ、享楽に走ったローマ人の精神には空虚な隙間が生まれ、その埋め合わせとしてキリスト教が招き入れられる。人間の原罪性を強調するキリスト教のもとでは、古代ギリシャ的な芸術精神への抑圧は不可避であった。しかしいまや、人々はその抑圧を脱しつつある。いまこそ、芸術本来の姿を取り戻す時ではないか……。

    本論文で示されるワーグナーの歴史観はだいたいこんな感じだと思う。ワーグナーの同時代観察によれば、この芸術復興プロジェクトにおける最大の障害は資本主義である。ワーグナーは言う。「ギリシャの公衆芸術はまさしく芸術であったが、われわれのそれは――芸術的手工業である」。芸術的衝動と報酬の両立は、今日に至るまで芸術家たちの悩みの種であるが、ワーグナーは芸術の本来性を守るためにそれを資本主義の圏域から隔離すべきだと考えていたようである。

    なお、本書は1953年に刊行されたものの復刊であり、全編正字使用である(仮名遣いは新式だが)。文体も、格調高いとはいえるが、まぁ古臭いものだ。基本的にワーグナーの芸術作品に関心がある人だけが読めばよいと思う。

  • 少しムツかしかった。小説のほうをもっと読みたい。昔、神田の警備会社にいた人が、学生アルバイトでこの本を訳したと言っていたっけ。もちろん名前は北村さんだ。

  • 現在使われている「啓蒙」という言葉の軽薄さを思い知らされる本だった。
    ドイツ啓蒙主義時代の傑作、それは、絶望、閉塞からの希求の叫びだ。

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