ルーマニア日記 (岩波文庫 赤 436-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (164ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003243626

感想・レビュー・書評

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  • 今から13年前、これがどうしても読みたくて、臨川書店のハンス・カロッサ全集版の「ルーマニア日記」を(高かったけど)買ったことがある。

    それはそれで素晴らしかったのだが、どうしてもしっくりこなかった。藤沢周平が戦後の結核療養所で愛読していたというハンス・カロッサのそれは、こんなにも立派で明るい装丁の書物ではなかったはずだ、と。それからは古書店に行くたびに岩波文庫版のそれを探したり、雑誌「図書」を見るたびにそれが復刊されていないか探したりした。それでも見つからなくて諦めていた。ところが最近、偶然Amazonで検索すると、簡単に岩波文庫版の古書がヒットするではないか。すぐさま取り寄せた。どうやら10年前とはAmazonの古書事情が全然変わっていたようだ。

    これは実は、1994年に一度リクエスト復刊されていた。装丁こそは少し明るいものになっているが、字体は1953年の旧仮名遣いそのままである。

    「枯れた葉が、地面の上をハツカネズミのように走った」(9p)

    体温まで冷え込むような風景描写。東北の寒さとルーマニア戦線の共通頁は確かにあったのかもしれない。生と死を見つめる日々は、若い藤沢周平に何をもたらしたのか。しかも、人生に絶望しない。人間に温かい。

    それらの「眼差し」を、起承転結がない日々の描写の中に確かに認めることが出来る。

    ここで描写されるのは、言葉は通じないが優しいルーマニアのお母さんたち。弱く愚かで優しい兵士。人間的な上官。食糧のために無表情に仔猫たちを壁に叩きつけて殺したあとに、一匹奇跡的に生き残った仔猫を断固として守ろうとした男の子と、その猫のか細い命の物語。

    びっくりするのは、おそらく何度も何度も読み返したであろうそれらの描写のほんの一言も、ほんの一場面も、藤沢周平は小説の中に流用していないのだ。

    それでいて、カロッサにははなはだ失礼で、それどころか「ルーマニア日記」は第一次世界大戦文学の最高峰だと言われているのに、私は敢えて言う。私にはそのことの直接の感想は一切生まれてこなくて、ひたすら「ルーマニア日記」に藤沢文学だけが見えて来た、という感想しか持てないのである。
    2015年8月8日読了

  • ネット上の情報で藤沢周平の本で紹介されている、とあったので、読んでみました。
    文章全体がきれいな表現で書かれていて、本を読むことに慣れた人なら、中学生にも勧めたい作品だと思います。

  •  
    ── カロッサ/高橋 健二・訳《ルーマニア日記 19530305 岩波文庫》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4003243625
     
    (20091109)(20220407)
     

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