海辺の悲劇 他3篇 (岩波文庫 赤 530-7)

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  • Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003253076

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  • 『グランド・ブルテーシュ綺譚』
    『復讐』
    『フランドルの基督』
    『海邊の悲劇』

  • 間男の話がひどすぎる!
    もっとおおらかにいきましょうよ。

  • 『グランド・ブルテーシュ綺譚』

    『復讐』

    『フランドルの基督』

    『海辺の悲劇』

  • バルザックは『セラフィタ』くらいしか読んだことのない偏った読者ですが、「グランド・ブルテーシュ綺譚」をずっと読みたくて光文社古典新訳文庫で読もうか迷っていたところ、岩波からこれが復刻されたので、こっちで読むことにしました。しかし予想以上に旧仮名旧漢字率が高くて一瞬後悔したんだけど、薄い本なのでなんとかクリア。まあこの活版印刷風もこれはこれで味があって好きなんですけどね。

    「グランド・ブルテーシュ綺譚」は、ちょっとポーの「黒猫」や「アモンティラードの酒樽」を彷彿とさせる、憎い相手を壁に塗りこめちゃう系(苦笑)。しかも妻の目の前でその愛人を、となると、ポーよりよっぽど残酷です。とはいえ肝になるのはその残酷さや夫の嫉妬の激しさではなく、そこまでされてもなお、自分の罪を告白できない妻の側の心理でしょうか。そのエピソードを伝聞として様々な人物の口を借りて少しずつ語らせる手法もスリルを盛り上げて効果的だと思いました。

    「復讐」は「グランド~」にも通じる浮気妻への報復譚。「フランドルの基督」は、イエス・キリストの奇跡系逸話ですが、信仰心云々より単純に貧しくても心優しい人たちが救われて良かったなあという勧善懲悪のすっきり感がいい。表題作の「海辺の悲劇」は、別の作品のスピンオフ的なエピソードらしく、全体像は把握できないのですが、主人公たちの心理はわかるものの、裕福な人間の上から目線的な部分が鼻について、あんまり共感はできなかったかなあ。でも彼らが聞かされてショックを受ける、ある男の逸話の内容はそれだけで独立した短編のような趣きがありました。

  • 『海辺の悲劇』1834年・・・哲学的研究

    『ルイ・ランベール』の2年後に描かれた本作品は、『ルイ・ランベール』の登場人物のルイ・ランベールとカタレプシーの彼の介護を続けるポーリーヌ・ド・ヴィルノワがブルターニュの海辺の町を訪れた時のことを、伯父の司祭に宛てる書簡の形式で物語に仕上げられている。

    バルザックの人間喜劇にみられる人物再現法が明確に用いられ、『ルイ・ランベール』と『海辺の悲劇』では、特に顕著で結びつきが強いため、この二作品は通して読むのが妥当だと思われる。

    小説『ルイ・ランベール』のなかで訪れたと書かれているブルターニュの海水浴の二人の旅での出来事が『海辺の悲劇』という作品なのである。

    発狂し、28歳でその生涯を閉じたルイ・ランベールが、『海辺の悲劇』では、まずまず正常な精神状態であり、貧しい漁村の生活に同情する。

    溺愛して育てた一人息子を自らの手で殺めてしまい、抜け殻のようになった男を岩の上でみかけ、その事情をきいたときもルイ・ランベールは冷静で、脳を焼く熱病が近寄っていると予感しても客観的に悲劇を捉えている。

    同級生によって語れた『ルイ・ランベール』は、『海辺の悲劇』では、ルイ・ランベールが書簡小説という体裁をとりながらも語り手となり、善良な漁師が、息子殺しに至る過程を詳細な情景としてリアルに描写する。

    漁師の悲劇と数年後に訪れる(このときすでに訪れかけていた)ルイ・ランベールの悲劇に本質的な相違はあるものの二人に通底する不幸を思わずにをえない。

    『海辺の悲劇』は寓意小説になりうるものか?
    聖書の 放蕩息子のように悔い改める気がさらさらない息子を自らの手で始末した父。

    ブルターニュの美しい風景描写は、ベルニー夫人との旅の思い出が反映されているという。
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    ■小説89篇と総序を加えた90篇がバルザックの「人間喜劇」の著作とされる。
    ■分類
    ・風俗研究
    (私生活情景、地方生活情景、パリ生活情景、政治生活情景、軍隊生活情景、田園生活情景)
    ・哲学的研究
    ・分析的研究
    ■真白読了
    『ふくろう党』+『ゴリオ爺さん』+『谷間の百合』+『ウジェニー・グランデ』+『Z・マルカス』+『知られざる傑作』+『砂漠の灼熱』+『エル・ヴェルデュゴ』+『恐怖政治の一挿話』+『ことづて』+『柘榴屋敷』+『セザール・ビロトー』+『戦をやめたメルモット(神と和解したメルモス)』+『偽りの愛人』+『シャベール大佐』+『ソーの舞踏会』+『サラジーヌ』+『不老長寿の霊薬』+『追放者』+『あら皮』+『ゴプセック』+『名うてのゴディサール』+『ニュシンゲン銀行』+『赤い宿屋』+『ツールの司祭』+『コルネリュス卿』+『セラフィタ』+『フェラギュス』+『ランジェ公爵夫人』+『金色の眼の娘』+『ルイ・ランベール』+『海辺の悲劇』+『総序』 計33篇

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著者プロフィール

オノレ・ド・バルザック
1799-1850年。フランスの小説家。『幻滅』、『ゴリオ爺さん』、『谷間の百合』ほか91篇から成る「人間喜劇」を執筆。ジャーナリストとしても活動した。

「2014年 『ジャーナリストの生理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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