- Amazon.co.jp ・本 (132ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003253076
感想・レビュー・書評
-
『グランド・ブルテーシュ綺譚』
『復讐』
『フランドルの基督』
『海邊の悲劇』詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
間男の話がひどすぎる!
もっとおおらかにいきましょうよ。 -
バルザックは『セラフィタ』くらいしか読んだことのない偏った読者ですが、「グランド・ブルテーシュ綺譚」をずっと読みたくて光文社古典新訳文庫で読もうか迷っていたところ、岩波からこれが復刻されたので、こっちで読むことにしました。しかし予想以上に旧仮名旧漢字率が高くて一瞬後悔したんだけど、薄い本なのでなんとかクリア。まあこの活版印刷風もこれはこれで味があって好きなんですけどね。
「グランド・ブルテーシュ綺譚」は、ちょっとポーの「黒猫」や「アモンティラードの酒樽」を彷彿とさせる、憎い相手を壁に塗りこめちゃう系(苦笑)。しかも妻の目の前でその愛人を、となると、ポーよりよっぽど残酷です。とはいえ肝になるのはその残酷さや夫の嫉妬の激しさではなく、そこまでされてもなお、自分の罪を告白できない妻の側の心理でしょうか。そのエピソードを伝聞として様々な人物の口を借りて少しずつ語らせる手法もスリルを盛り上げて効果的だと思いました。
「復讐」は「グランド~」にも通じる浮気妻への報復譚。「フランドルの基督」は、イエス・キリストの奇跡系逸話ですが、信仰心云々より単純に貧しくても心優しい人たちが救われて良かったなあという勧善懲悪のすっきり感がいい。表題作の「海辺の悲劇」は、別の作品のスピンオフ的なエピソードらしく、全体像は把握できないのですが、主人公たちの心理はわかるものの、裕福な人間の上から目線的な部分が鼻について、あんまり共感はできなかったかなあ。でも彼らが聞かされてショックを受ける、ある男の逸話の内容はそれだけで独立した短編のような趣きがありました。