- Amazon.co.jp ・本 (226ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003254219
感想・レビュー・書評
-
フランスの詩人ドーデーの紀行短編集ですね。
アルフォンス・ドーデー(1840ー1897)は南フランスのニームで生まれ、パリで亡くなった。
この短編集は、フランスの南部、プロヴァンス州の、アルルの町を舞台にした24篇の手紙文による物語です。
この中には、「アルルの女」もあり、後にドーデーが戯曲にして、ビゼーが名曲にした原作も含まれています。
南仏の美しい自然と人々とのふれあいや、旅の思いでなどを感情豊かにユーモラスを交えて綴られています。
初版の訳が1932年で二度の改定があり、この本は2005年版です。
かなり古いタイプの文章なのですが、そこがまた味わいがあって、面白く読めますね。話し言葉の文章が、臨場感を醸し出しています。
ドーデーの詩創が溢れんばかりにあらわれた名作ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
以前に読んだのは20歳くらいのころ。
図書館で借りたこの本を、全体になんとなくいいなあと思ったのと、最後の一文が強烈だったことを覚えている。
そこから古本で入手→度重なる引越しで手放す→数年前に山本周五郎の「青べか物語」を読んで、モデルとなったこの作品をまた読みたくなる→再購入を検討。品切れだったからまた古本屋で買った。
30代後半のいま、この作品のどこに自分が惹かれたのか、以前よりもっとわかる気がした。
(スティーブンソンの旅は驢馬をつれて、みたいな、シングのアラン島みたいな、都会から来た文化人が田舎の生活風俗を書き残すスタイルが大好きではある。)
今回、好きだと思った章は
・コルニーユ親方の秘密 オペラになりそう
・スガンさんのやぎ オペラになりそう
・星 一番好き 長いお芝居を見たような余韻
・サンギネールの灯台 何もない灯台に一冊だけある、プルタルコス伝、そりゃあ読みまくるだろ…
・詩人ミストラル 最後のところで、廃墟になった王城、それが亡くした言葉の再建だというフレーズ、カッコ良すぎませんか。
・二軒の宿屋 オペラのよう。アルルより受けそう。
・ミリアナで まるでベニスの商人。アルジェリア編すごくいい、もっと書いて
・カマルグ紀行 内容というより、短文の名文で綴られる景色が素晴らしい。声に出して読みたくなった。この中の「赤と白」で、孤高に生きる馬の番人が、日がな一日、薬の効能書を読んでいる、ほかに何も読むものはない。唯一の話し相手である、隣の番人とは政治思想が違うので相容れない、ってすごい話だな。
だらだら書いたけど、他のもいい。全部いい。
この日本語が100年近く前のものだと思うとありがたくて嬉しくなる。
また10年以内に読みたい本。もう売らないよ。 -
子供の頃に読んだ「スガンさんのやぎ」やオペラにもなった「アルルの女」など、ドーデーの珠玉の短編集。
-
昔の雰囲気のお話
-
プロヴァンスにすみはじめたドーデーから、パリの読者へのレター。
19世紀フランスの田舎の風景が伝わってきます。
フランス文学を久しぶりに読んで、やはり予め知識があるほうが楽しめるだろうと思いました。
ドーデーは結局パリのほうが好き…なのかな。
有名な『アルルの女』の原作があったため、ここ数日ファランドールが頭からはなれません…。
それでしらべてみました。以下余談です。
有名な「タンタンターンタタンタタンタターン」はプロヴァンス民謡『三人の王の行列』で、途中からながれる「タタタタタタタタタタタタタララララ」は『馬のダンス』の引用だそうです。
ファランドールとはプロヴァンス地方の舞曲で、「法王捕囚のときアヴィニョンの橋のうえで踊られたのかも」と想像するんですが、8分の6拍子なのだそうです。
つまりアルルの女のこの曲はファランドールを踊るときの曲ではないということです。
四拍子でワルツを踊るとか三拍子のマーチで歩くとかはないですから。
私はアルルの女のファランドールを聴きながら、いろいろなダンスを想像していました。
http://www.youtube.com/watch?v=cZ8FP9MLcV0みたいな。
だからちょっとがっかりしてしまいました。 -
最近は「ドーデ」といふ表記が一般的のやうですが、ここでは岩波文庫版に敬意を表して「ドーデ―」で通しませう。
筒井康隆氏の『乱調文学大辞典』で「ドーデ―」の項を引くと、ただ一言「何が?」と書いてあります。初めて読んだ時は吹き出したものです。これが仮に「ドーデ」ならば、この項は成り立ちませんので、やはり「ドーデ―」に一票投ずるところであります。
アルフォンス・ドーデー(1840-97)は、風光明媚な南仏プロヴァンスの風車小屋へ移住しました。今風に言へば田舎暮らしでせうか。うさぎやふくろうといつた「先住民」たちを驚かせながらも、自然と田園生活に溶け込む様子が活写されます。
ドーデ―はこの地で、パリに住む友人に宛てた手紙形式で、30篇(「序」を含む)の短篇を収めた『風車小屋だより』を執筆するのです。ただし岩波文庫版では、27篇しか収録されてゐないやうです。残る3篇はどこへ行つたのだらう。意図的に翻訳しなかつたのでせうか。
内容は、主に風車小屋のあるプロヴァンスでの出来事を綴つたものですが、実際に見聞したことや伝聞で知つたことを題材にしてゐます。「スガンさんのやぎ」「法王のらば」といつた動物を擬人化したものや、「散文の幻想詩」「黄金の脳みそを持った男の話」のやうに幻想的な物語、「アルルの女」「二軒の宿屋」みたいな悲話など、文字通りの珠玉篇が読者の胸を打つのであります。
中でも、後に歌劇で有名になつた「アルルの女」は、タイトルとなつたアルルの女本人は登場せず、彼女に心奪はれた若者の行動を描写することで、読者の想像を掻き立てます。
毎日忙しく、精神的に余裕のない生活を余儀なくされてゐる人なんかには、最適の一冊ではないですかね。ドーデ―の風車小屋を想起しながら、一服いたしませう。
デハ御機嫌よう。ご無礼いたします。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-635.html -
名作ということであるが、少し、宗教色が強い感じがする。かなり、昔の本なので、入り込んだのかも、後半になるとプロバンスの平穏な生活が描かれて面白かったです。
-
古書フェアで入手。昭和49年10月20日発行、第48刷。
有名な小説集だけど、未読だったのでGWの読書にと手に取った。
さらっと読める掌編が24個。どれも味わい深いが、「カマルグ紀行」が気に入った。 -
たいへん、想像力を刺激される短編集だ。なんといっても、「スガンさんのやぎ」や「星」はとてもいい話だし、税関水夫や灯台守、はやらぬ宿屋の女主人、狩猟場を管理する孤独な男など、注目されないような田舎の庶民の生活に目を向けるところが、やさしい目を感じます。嵐に角をむけてうずくまる牛の群れや、アルジェリアで遭遇した「あられのように降ってくるバッタの群れ」など、自然の描写も面白い。僧侶については、ユーモラスな話が多く、プロヴァンス語を再興した詩人、ミストラルとの交流もなかなか面白い。「最後の授業」ではその国家主義的言語観が批判されるドーデーだが、この短編集を読めば、田舎にすむ人々のリアルな生活に目を向けていた詩人であり、コチコチの国家主義者ではないことが分かります。パリで書いた都会的な作家だけでなく、19世紀にもこういう人がいたんだなと分かり、とても面白いです。
-
ドーデの、プロヴァンスな随筆(っぽい手紙)