- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003260517
感想・レビュー・書評
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ゴーゴリは、ウクライナ生まれ。作家としての活動は、当時のロシアの首都サンクトペテルブルクに移り住んで以後のこと。本短篇集に収まるのは『ネフスキイ大通』『肖像画』『狂人日記』の三作品。この後に書かれる『鼻』や『外套』などの小品などは「ペテルブルクもの」などと呼ばれています。
さて、短篇集の作中で、ドイツ、イギリス、フランス、フィンランド、スペインの人を頭が悪いとか、なんてばかな国民だろうなどなど…とディスっているところや、職業では画家がこき下ろされているところなど、読んでいて大丈夫なんだろうかと思いました。しかし、その他にも適宜冗談を入れてあるおかげで、どれも発狂したり精神を病んでしまう狂気を描いた作品にも関わらず、とても面白く読むことができました。
また、時間をおいて読み直したい作品ですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ネフスキイ大通り
肖像画
狂人日記 -
久しぶりの外国人作家の小説。正直「ネフスキー通り」の冒頭部分は世界観に入りずらかったけど、後半からめちゃくちゃ面白かったです!「肖像画」も「狂人日記」もだんだんあることで狂っていく人間の物語でしたが、一番好きなのはやはり「狂人日記」でした。彼の日記の日付がいつもと違うことに気づいた時はゾッとしました…。「大抵は寝台でごろごろしていた」という表現が寂しくて好きです。あと、最後の一文でものすごく寂しい気持ちになりました。これが悲壮感というものなのかしら…。
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「ネフスキー大通り」
よ~い、ドン!でナンパに繰り出したふたりの男たち。しかしそれがネスフキー大通りでなら簡単にコトは運ばない……。
「肖像画」
曰く因縁を持つ呪われた”肖像画”。それを手にする者は必ず精神に異常をきたし……。よくあるパターンのやつ。
「狂人日記」(ゴーゴリ)
自らの発狂を押しとどめることができず、哀れにも暗愚の底へと真っ逆さまに墜落していく男。幽閉、拷問の果てに男は”おっ母さん”を求めて声をふり絞るが……。「狂人日記系」の傑作。最後はキマった!
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「狂人日記」(モーパッサン)……82歳で惜しまれつつ亡くなったある”高等法院長”が残した手記。そこに書かれていたのは命を奪うことへの抑えがたい衝動と彼が実際に手を下した忌まわしい殺人の記録であった。
「狂人日記」(魯迅)……”わたし”の知人の弟がしたためた二冊の「狂人日記」。出だし、それを知人が”わたし”に「大笑いしながら」献じてくれた、という。ここがとっても気持ち悪い。
「黄色い壁紙」(ギルマン)……これは狂人が女性。一抹の美術的なセンスが感じられる。
「赤い花」(ガルシン)……数十年ぶりに読んだら、これは日記の体裁じゃなかったのネ……。それにしても、瘋癲病院内と狂人の心中の描写はさすが。最後の狂人の死は哀れだが、何だか神々しくさえある。これも傑作。
「うつせみ」(樋口一葉)……これも狂人が女性。そして日記ではない。この作品だけ、発狂するにいたった出来事について言及されている。……でもそんなこと起こらなかってもこの女なら狂ってただろう。で、この狂いっぷりがとっても痛々しい。
「河童」(芥川)……主人公は河童の国でインテリジェンスあふれるアクティブな経験をする。そんな主人公が目下収監されている精神病院には旧知の河童たちが頻繁にお見舞いに訪ねてくる。だからほかのと比べて明るくて前向きなのだ、その狂い方が。なんだかちょっと、ぼくも狂ってみたくなるくらいに……。 -
描写は丁寧で芸術的。また、ロシアがアートな国であることは十分理解できた。ロシア語を専攻している身としてロシアの日常を垣間見れたことはプラスになるでしょう。
内容に関しては、3編とも理性を失うまでがあまりにも急展開すぎるしきっかけも浅すぎる印象を抱いた。更に伏線も少ないため、読了したときのアハ体験が無くとりわけ大きな感想も抱けなかった。短編小説だから厚みが出ないのは仕方がないが、このようなテーマを3作品作り上げるなら1つの長編小説に込めて欲しかった。 -
表題作はなかなかの作品で興味深く読めた。他、二作は今的な洗練とは少し距離のある小説の試行錯誤が感じられた。
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「ネフスキー大通り」と「肖像画」について。
いずれも、フォーカスされている人物が破滅に陥るタイミングが早く、まだ話の終わりまでページ数が残っている理由はそれだったのかと思わされた。というのは、後半あたりで、人物の視点が切り替わるのだ。 -
どれも面白く読みました。まず、都会に生きる人びとの、見た目だけでは分からないその暮らしぶりをあざやかに描く「ネフスキイ大通り」は、仮にも都会と呼ばれる場所に生きているわたしが一度は考えたことのあるテーマで、ぐいぐい引き込まれてゆきました。
呪いとも言える恐ろしい絵画の物語である「肖像画」は、第一部のなかで恐ろしい絵画から金貨が発見されると言うところからして、貧乏な芸術家が「こうなったらいいなあ」と空想するのではないか、などと邪推しながら読んでゆくと、そこに著者の芸術に対する考え方が色濃く表れているように思います。
そしてそれまでの描き方とまた違うのが「狂人日記」だと思います。下級官吏の精神病的な狂気を描き、その恐ろしい現実世界での出来事(おそらく精神病院への強制的な入院だと思います。最初は監獄かと思いましたが(笑))を認識できていない様子まで描き切ってしまう。