- Amazon.co.jp ・本 (150ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003262115
作品紹介・あらすじ
極度に研ぎ澄まされた鋭敏な感受性と正義感の持主であったロシアの作家ガルシンには、汚濁に満ちた浮き世の生はとうてい堪え得るものではなかった。紅いケシの花を社会悪の権化と思いつめ、苦闘の果てに滅び去る一青年を描いた『紅い花』。他に、『四日間』『信号』『夢がたり』『アッタレーア・プリンケプス』を収録。
感想・レビュー・書評
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昔、福武文庫の『ガルシン短篇集』を読んだものの、
相次ぐ引っ越しの途中で手放してしまい、
少し前に「赤い花」を読み返したくなったので、
今度はこちらの岩波版を購入。
タイトル表記は「紅い花」だが、
古本屋さんで買った1959年改版→1989年第48刷では
「あかい花」と表記されている。
個人的にはこのひらがな書きに魅力を感じる。
収録は「あかい花」「四日間」「信号」(これらは福武文庫で既読)
と、童話風の「夢がたり」「アッタレーア・プリンケプス」の5編。
表題作は、精神病院の庭に咲いた罌粟の花を悪の象徴と見なして
徒手空拳で虚しい戦いを挑む青年の短い物語。
19世紀後半のロシアという激動の世に生を受け、
繊細過ぎて精神を病んでしまったインテリゲンチャの魂の叫びが
美しく痛ましい物語として血の色を含んで開花した――
とでも言えばいいだろうか。
それにしても心に沁みる名訳。 -
図書館で借りた本。5話の短編集だがかなり薄い本。アッターレア・プリンケプスと信号が好きかな。あかい花は精神病院に収容された青年の話。アッターレア・プリンケプスは絵本を読んでる感覚になるくらい情景が浮かぶ。報われず、あっさりしたラストだが植物達の会話が童心を思い出させる。
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3.78/295
『極度に研ぎ澄まされた鋭敏な感受性と正義感の持主であったロシアの作家ガルシン(1855-1888)には,汚濁に満ちた浮世の生はとうてい堪え得るものではなかった.紅いケシの花を社会悪の権化と思い込み,苦闘の果てに滅び去る青年を描いた『紅い花』.他に,『四日間』『信号』『夢がたり』『アッタレーア・プリンケプス』を収録.』(「岩波書店」サイトより▽)
https://www.iwanami.co.jp/book/b248249.html
著者:ガルシン(Vsevolod Garshin)
訳者:神西 清(じんざい きよし)
出版社 : 岩波書店
文庫 : 150ページ -
久々に『赤い花』を読みたくなって、手元の旺文社文庫版が見当たらないから古本で適当に購入。中学生の頃はもっと面白く思った筈なのに、今読むとロシア風トルストイの出汁香る寓話味が強い作品が多くて、微妙だなぁというのが正直なとこでした。
そんな中で表題作『赤い花』は代表作だけあって光ってます。癲狂院の庭に咲く赤い花を悪の根源だと思っちゃった主人公が花を滅殺しようと全身全霊を尽くした挙句狂死する、それだけの話なんですが精神の状態が良くない時に何かに固執してしまう思考の流れとか一瞬だけ目盛が正気に戻って自分を冷静に分析しちゃうとことかすごく良く描写されていて、あーあるあるとなります。ガルシンは生涯を通して精神疾患に悩まされ最終的には自死未遂に至ってるので、その辺りは経験者の安定感、ここは俺に任せろなのでしょう。
解説にはガルシンの精神疾患は生来の繊細さが原因の一つにあったとありましたが、なるほど作品によっては繊細拗らせて一周まわった感もあり、太宰治がガルシンを好んだのというのも何となく納得です。 -
「紅い花」
■何日の間も一睡だにせず、ただ叫びながら病棟を練り歩くだけの一人の狂人。しかしそんな彼の内では密かに不倶戴天の敵、罌粟の花との闘いに臨む決死の覚悟が固まっていたのだった……。
■瘋癲病院内の様子と狂人の心中の書きっぷりはさすが。作者は実際を知っているからこそ描けたのだろうが、調子に乗って必要のないところまで書きすぎてもいない。説得力があって必要十分な描写だ。
■最後の悲劇的な死を通じて、この狂人がたまらなく愛おしく感じられる。一般読者はこの頭のイカレた男こそ、私たちの父母、あるいは子供たち、そして我々自身のことだということに果たして気づいているのだろうか?
「四日間」
■露土戦争の従軍兵士の手記。
■自らは脚を負傷してピクリとも動けず独りむなしく死を待つだけ。そばには自分が銃剣で刺し殺した敵兵の死体が横たわり見るたびごとに腐敗の度を増していく……。
■『紅い花』もそうなのだがこの地獄、経験者でないと到底描けまい。映画『SAW』より強烈。
「信号」
■これも素晴らしい短編、あいわらず臨場感があるなぁ。
■隣の駅の、住み込みの線路番という男が、根が短気で、ルサンチマンが募っていて、しかも本人はそれを正義感と勘違いしていて……。このキャラ設定で悲劇が起きないわけがない。 -
あんまり良くないかもやけど、「あかい花」は神西清の翻訳もあいまって、結構笑えるテクストやと思う。1883年に発表らしいが、部分的にinner monologが使われていたり、技法的にも面白い。「四日間」と「信号」はめっちゃ面白くて没入して読んだ。後ろの二つはふーんというかんじ。全体的に左翼的なフィーリングがあって熱かったけど、「信号」にしろ「アッタレーア」にしろ屈折があって、その辺は実際にはどうだったんでしょう、とか思いました。ciniiでちょっと見た感じだと、もうあんまり研究はされていないのかしら。
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マチネの終わりに出てくる映画監督イェルコ・ソリッチの作品「ダルマチアの朝日」の下敷きとされている。
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これはあれか、大人向けの童話って感じだろうか。単に短いからそう思うだけか。概ねこの時代の本というのは、一ページにめっさ文字が入っていて、見るだけでむはーとなってしまうけども、これはどの話も短くて、やっぱこれくらいがちょうど良いわー、とへたれとしては思ってしまう。
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まるで田舎武者のような素朴さがいい。
『紅い花』『信号』気に入ってる。
まさか、同名の別作品があるとは!?
まさか、同名の別作品があるとは!?
そして「<他四編>って何よ何よ?」って(笑)
そして「<他四編>って何よ何よ?」って(笑)