巨匠とマルガリータ(上) (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003264829

作品紹介・あらすじ

春のモスクワに降り立つ悪魔、灼熱のゴルゴタと名無しの巨匠。首は転がり、黒猫はしゃべり、ルーブル札が雨と降る。ブルガーコフ(一八九一‐一九四〇)が遺した二十世紀ロシア最大の奇想小説、物語のるつぼの底で待つのは何か?-「私につづけ、読者よ。」(全二冊)

感想・レビュー・書評

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  • 現ウクライナ・キーウ生まれのブルガーコフ(1891-1940)の長編。
    20世紀のモスクワとイエス・キリストの時代のゴルゴタの丘を行き来する、めくるめく物語世界。

    春の日の夕暮れ、2人の男がモスクワ郊外の池のほとりを歩いている。一方は作家であり、文芸誌の編集長でもあるベルリオーズ。もう一方の若い男は「宿なし」というペンネームの詩人、イワン。
    2人はイエス・キリストの「実在」について話をしている。イワンはベルリオーズに依頼されて叙事詩を書いていた。詩にはイエスが実に生き生きと描かれていたが、編集長のお気に召さなかった。ベルリオーズはそもそもイエスなどいなかったと思っていたのだ。そこで1つ、この若いのに言って聞かせてやろうと思ったわけだった。
    そこへ1人の外国人風の男が通りかかる。男は黒い右目と緑の左目を持っていた。彼は2人の論争に口を挟み、持論を繰り広げ始める。そして人間の儚さを語り、こともあろうにベルリオーズが極めて奇妙な無残な死に方をすると予言する。そして自分はキリストが存在したことを知っている、なぜなら処刑が決まったその場にいたのだから、と言う。
    男が狂人だと思った2人だったが、男の不気味な予言は当たる。
    ベルリオーズは死に、男を告発しようとしたイワンは逆に周囲から狂っていると思われ、精神病院に入れられる。
    そしてモスクワは奇妙な騒ぎに巻き込まれていく。

    黒魔術ショーに、喋る黒猫。狂乱する群衆。
    夢か現か、そのあわいを、物語は疾走する。

    冒頭に出てくるベルリオーズもイワンも、実はタイトルロールではない。
    「巨匠」は上巻の後半になってようやくひっそりと登場する。しかしその本名すら明らかではない。
    精神病院に入れられたイワンのもとを、同じ病院に入院している謎の客人が訪ねてくる。彼は、自分は「巨匠」だと語り、イエスとその処刑を命じたピラトゥスの物語を自分は書いたのだという。彼の物語に熱狂し、執筆を支えてくれた女がいたが、「巨匠」も女も既婚者であり、2人は秘密の関係だった。物語が完成し、いざ、世の中に出そうとしたが、ことはうまく運ばなかった。絶望した「巨匠」は物語を火にくべてしまう。

    ベルリオーズとイワンを破滅させた謎の男は、果たして悪魔なのか? モスクワに突然現れたのはなぜか? 「巨匠」が書いた物語と男の出現とは関係があるのか? 「巨匠」を支えた女がもう1人のタイトルロール、「マルガリータ」なのだろうか?

    さまざまな謎を残しつつ、物語は下巻へと向かう。

    作者は疾風怒濤の物語の上巻をこの言葉で結ぶ。
    私につづけ、読者よ。

    望むところ。いざ見届けん。この奇妙な味わいの物語の行きつく先を。



    *ベルリオーズの他にも、ストラヴィンスキーとかコルサコフとか、作曲家と同じ名前の登場人物が多いのですが、このあたりも意味があるのかな? たまたま?

    *「第七の証拠」というタイトルの章、カントによる神の存在証明を引いているようなのですが、「7」という数字は、ヨハネの黙示録も思い出させます。はてさて関係あるのか??

    *ソビエト政権に対する体制批判を含むということで、著者の生前には出版されなかったという曰く付きの作品。とはいえ、少なくとも上巻まででは体制批判はなくはないけれど、それより宗教的な主題の方が大きいように感じます。

  • ■【この人を見よ】(ヨハネによる福音書)――。
    本書に登場するポンテオ・ピラトは接見したイエスをいたく気に入り、イエスの処刑を思いとどまるようになった。しかし祭司長に押し切られ、結果イエスはゴルゴダの露と消えた。ピラトは二千年後の今となってもその時のことを後悔し続けている。
    ■【義を見てせざるは勇なきなり】(論語)――。
    その時ピラトは必死になって尽力すればイエスは助かったのか? 「臆病が最も思い罪」というのはイエスがピラトにかけた呪いの言葉なのだ。
    ■【イエスは「しようとしていることを今すぐしなさい」と彼(イスカリオテのユダ)に言われた】(ヨハネによる福音書)――。
    気持ちのやり場のないピラトは、イエスを裏切ったイスカリオテのユダを殺して留飲を下げようとする。しかしそもそもユダはイエス本人から「しようとしていることを今すぐしなさい」と諭されたうえでイエスを裏切っているのだ。
    ………イエス、ピラト、イスカリオネのユダ、そしてバラバ。当時の彼らの底意が実際どうだったのかは今となっては到底わからない。だからもしぼくがひとつだけ、人類史上の大事件に立ち会えるとしたらやっぱりここ。イエスの磔刑の真実、究極の歴史ミステリーとして興味が尽きないところだ。
    ■ところでアナトール・フランス「ユダヤの提督」に出てくるピラトは『巨匠とマルガリータ』とは設定が全く違ってて面白い。オススメだよ!

  • ブルガーコフの作品が好きで手に取りましたが、とても面白い!
    悪魔たちがモスクワを支配し、人々が次々と精神科へ送られる。
    巨匠が誰なのかとずっと気になってましたが、ヨシュア(イエス)と、悪魔たちの関係もとても気になります。

  • まず、あらすじが素晴らしいです。
    「首は転がり、黒猫はしゃべり、ルーブル札が雨と降る……私につづけ、読者よ」
    まさに、息つく暇もなく行きついた先に待ち受けるのは、理解を越えた奇想天外な物語たち。
    読者の頭が変になったのか、書いてる作者が変なのかのどちらかです。
    本を閉じて現実にもどったとき、ちょっと寂しく感じてしまうほど。こんな読書体験のできる本はいくつもありません!麻薬のような魅力をもった一冊です。

  • 最初のページで「ピロシキのように大切そうに」って表現が妙にツボってしまい、それだけでもうこの本きっと大好きだって思ったんですけど、いやもうすごい面白い!今のところ悪魔が手下たちを引き連れて人間界(おもに文壇と演劇界?)を引っ掻き回しているところで、何が起こっているのやら全貌はつかめないし、主人公の「巨匠」は13章目にしてようやく登場、ていうか13章にしか登場してないという現状にも関わらず、とにかく夢中で読んでしまった。悪魔がひきつれてる、二本足で歩く喋る黒猫とか、無駄にセクシーなお姉さんとか、キャラクターがどこか漫画チックで憎めないのもいいですね。

    下巻がとても楽しみなのだけれど、来月まで待たなくちゃいけないのか・・・上下巻揃ってから読み始めれば良かった。続きが気になる!

  • 第一章の「見知らぬ人と口を聞くべからず」という題は個人的に好きで、本書が良い本である気配がして安心して読み進められた。

    ビブリカルな話を持ってきたりするのは典型的だが、ピラトをトピックに選ぶのは珍しく、興味深い。本書は第一部(上巻)だが、第二部(下巻)に向けての結びの言葉、トランジションも素晴らしい。

  • 感想は下巻にまとめて.

  • おもしろい。奇妙でゾクゾクする

  • キリストの話やらが割り込んできてややこしいことこの上ないのだがかなり長いのでもう一度読む気にはなかなかならない…でもおもしろかったよ

  • 4.21/343
    『「それでは,どうしても悪魔は存在しないと言うのですか?」首は転がり,黒猫はしゃべり,ルーブル札が雨と降る.黄色い花を抱えた運命の女,ゴルゴタを焼く灼熱の太陽…春のモスクワを舞台にブルガーコフ(1891-1940)が描く,20世紀ロシア最大の奇想小説,物語のるつぼの底に待つのは何か?――「私につづけ,読者よ.」(全2冊)』(「岩波書店」サイトより▽)
    https://www.iwanami.co.jp/book/b248314.html

    冒頭
    『暑い春の日の夕暮れどき、パトリアルシエ池のほとりに二人の男が姿を現した。そのうちの一人、グレーのサマースーツを着こんだ四十歳ぐらいの男は小柄で肉づきもよく、髪は黒っぽいものの禿げあがり、上品な帽子をピロシキのように大切そうに手に持ち、きれいに剃りあげた顔には角製の大きな黒縁の眼鏡をかけていた。』


    原書名:『Мастер и Маргарита』(英語版『The Master and Margarita』)
    著者:ミハイル・ブルガーコフ (Mikhail Bulgakov)
    訳者:水野 忠夫
    出版社 ‏: ‎岩波書店
    文庫 ‏: ‎448ページ(上巻)


    メモ:
    ・20世紀の100冊(Le Monde)「Le Monde's 100 Books of the Century」
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 感想は下巻に。私に続け読者よ。

  • 既読本の印象→醜いアヒルの子の子供時代。暗い鬱々。
    ある日突然白鳥に変身したかのように陽気で明るいトーンにまごつく。しかし持ち味の1つと思っている混沌さは濃縮増量中。時にグロテスク、不条理、煙に巻く、といったバタバタ感が、やっぱり自分にはディヴィット・リンチの映像作品に似てると思うんだよー。13章でやっと主人公が出てくるけども、ひっぱってるけども、どうしたんだよ、このユーモア仕様は?と非常に自分には『今までのブルガーコフイメージ』をくつがえされ、消化できてない。しかし品があるよ。

  • 2015-6-3

  • はじめの方は世間話であったが、だんだん話がおかしくなってきていて、劇場の事件がクライマックス。その間にキリストの処刑の話がはいってくる。

  • (後で書きます)

  • ずっと読みたくて積んでいた本作。こ、こんな話だったのか。奇想天外なファンタジー。ヴォランドの魔術によって散々な目に合わされる人々の成り行きが面白い。ルイス・キャロルが「思いつきでアリスをウサギの穴に落とした」ように、ブルガーコフは想像力の赴くままにモスクワをカオスに陥れたのではないかと思ってしまうが、荒唐無稽さが後半に収斂されていき、当時の社会の現実にもつながるのだろう。
    表紙がとてもいい、「ファンによる落書き」でベヘモート。黒猫を飼ったらベヘモートと名づけたい。

  • Mおすすめ

  • 驚嘆に値する面白さ。これが物語ということなんだろう。

  • かなりおもろい
    変な小説やけど
    もっかいよんで意味はっきりさせたいとこも

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