王の没落 (岩波文庫 赤 746-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (411ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003274613

作品紹介・あらすじ

デンマークの作家イェンセン(一八七三─一九五〇)による傑作歴史小説。凶暴な王クリスチャン2世と破滅的な傭兵ミッケル。二人の運命を中心に一六世紀北欧の激動を描く。視覚、聴覚、幻覚のイメージを巧みに駆使した生々しい筆致が胸に刺さる。「二〇世紀最高のデンマーク小説」として読みつがれる、ノーベル賞作家の代表作である。

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  • 16世紀。デンマーク、ノルウェー、スウェーデンでの勢力争い、反乱、三国間のカルマル同盟の締結や破棄など激動の時代を現実的人間の営みと幻想的描写を交えて書く。
    中心人物は二人の男。苛烈さで三国を支配するが、誇大妄想さと優柔不断さとで凋落していったクリスチャン2世。そして憎しみと破壊的衝動で戦場を渡る傭兵のミッケル。


    【春の死】
    コペンハーゲン市の大学に通う赤毛の長身のミッケル・チョイアセンは、同郷であるユラン市の貴族オッテ・イヴァセンと知り合う。
    オッテは、故郷の庶民の娘アネ−メッテと結婚の約束をしていた。だがオッテの母は庶民との結婚に反対し、だからオッテはハンス王の軍人として独り立ちするために故郷を出たのだった。
    コペンハーゲンにいはハンス王の16歳の息子のクリスチャン(後のクリスチャン2世)も宿営していた。ミッケルはクリスチャンの印象的な姿をその後忘れることはなかった。

    コペンハーゲンではあるが、ドイツ兵が滞在し、ミッケルたちデンマーク人もドイツ語が使える。オッテとミッケルが言葉をかわすのは「デンマーク人の友人がいない」ということで、この頃の中欧北欧の入り混じり具合が想像できる。

    さて、ミッケルはユダヤ人少女スサンナに恋をしていた。
    だがいよいよ出陣前夜というオッテがスサンナと共寝をする。
    オッテは出陣し、娼婦と言われたスサンナはコペンハーゲンを追い出された。

    不敬により大学を退学させられたミッケルは、故郷ユランに戻り、オッテへの復讐のため、彼の婚約者であり、ミッケルも憧れていた美貌のアネ−メッテを暴行する。
    そのまま出奔したミッケルは、ハンス王の傭兵となり、戦場でオッテを見かける。
    デンマークの反戦により、二人の行き先はまた別れる。

    【大いなる夏】
    22歳の騎士アクセルは、オーデンセ市に司教のイェンス・アナセン・ベルデナックの屋敷で、赤毛で長身で年嵩の傭兵ミッケルと知り合う。ミッケルとイェンス・アナセンは同郷で、コペンハーゲンでは学者、今では司教になっていたのだ。
    このときデンマークのクリスチャン2世は、スウェーデンへ進軍していた。
    アクセルとミッケルは、ユラン市の司祭館への使者として旅立った。
    ミッテルがユラン市に戻るのはほぼ20年振りだった。

    前章の「春」からこの「夏」で20年経っていた!

    アクセルは、貴族のオッテ・イヴァセンへの手紙を預かっていた。
    今では貴族の妻と8人の子供を持つオッテは、アクセルの面影に見覚えがあった。
    22年前にコペンハーゲンで押し倒したスサンナだ。アクセルは、オッテとスサンナの息子なのだ。
    オッテはそれを悟られないようにアクセルを帰す。

    ストックホルムでは、クリスチャン2世がスウェーデンの反乱軍を処刑し、デンマーク王に即位した。
    警備兵だったミッケルは、今回の任務の褒美としてクリスチャン2世側近の騎士に取り立てられた。

    <ミッケルはもう四十を超えていた。だが、二十年前と比べて少しも賢くなっていない。彼の渇望は別に裏切られたわけではなかったが、一つとして叶えられていなかった。ずっと先延ばしになっていた。でもまだ、とんでもないことをする時間は残っている。P167>
    <私は外国での幸運を求めるあまり、デンマークで人生のほんとうの春を失ってしまった。外国で幸運は見つからなかった。どこへ行っても故郷の国が恋しくて仕方なかったからだ、とうとう全世界から無益に誘われたとわかった時には、ついにデンマークも心から去って死んでしまった。そうして宿無しになった。P168>

    アクセルが二人の女性と付き合っていたときに見た夢の描写は浮かれて楽しい。
    意識が夢と現実の半分のところで宙を飛び船に辿り着く。それは幸福の船だった。
    目を覚まして外を見ると、クリスチャン2世によりスウェーデン有力者の大量処刑が行われていた。
    ここの描写は、夢の世界から現実の殺戮、それを抗議するかのような鐘の音の響き、教会でミッケルが聞いたオルガンによる救済と苦しみに描写がつながって流れゆく。

    このときミッケルは熱病に侵されていたが、天真爛漫なアクセルが自分に対する見下した態度に憎悪を覚え、それにより彼は回復した。

    アクセルは陽気で無責任だった。
    会った女性と恋愛を楽しみ、派手な結婚式をして、しばらく暮らし、ふらっと別の場所に移動する。
    ミッケルとアクセルが再会したのは、アクセルがミッケルの故郷(そして実はアクセルの父オッテの領土である)ユランで、豪農ステフェンの娘のインゲと婚約したときだった。
    インゲは、20年前にミッケルに乱暴されたアネ−メッテの娘、つまりはミッケルの娘だったのだ。
    妊娠したアネーメッテはステフェンと結婚して、今では数人の子供を授かっていた。
    本人たちも知らないうちに、オッテとミッケルの因縁が再度絡まり合ったのだ。
    ミッケルは天真爛漫なアクセルの姿に、かつての憎悪を思い出して彼に切りつける。
    怪我で宿屋に運び込まれたアクセルは夢と現実を彷徨い数日後に夜空の下で死んだ。
    彼を待つインゲは、墓の下から棺桶を担いで帰ってきたアクセルと一晩の再会を果たす。
    自分も共に死にたいと願うインゲに、死んでもなお気楽なアクセルは答える。
    <墓の中で満足してるよ、お前が慰められている時、僕は満足だ。お前が歌を歌って喜んでいるときは、心配事なんかみんな忘れている。お棺は薔薇でいっぱいでね、天国の暗闇の中で薔薇の上に横になって眠ってるのさ。(…中略…)お前が僕のことを悼んで悲しんで、泣いたりする時はね、お棺はどろっと流れる血でいっぱいになるんだ!墓の中は酷いところになってしまう。どうして僕のことを恋しがっているんだ?死んだものは地中に留まるんだよ。僕は死んでいる。どうして僕を愛してるんだい?(P277)>


    その頃クリスチャン2世は、暴力により得たものを失いつつ合った。
    スウェーデンの反乱、デンマーク貴族や聖職者たちからの反発、彼自身の誇大妄想癖、暴力性と移り気により、戦いらしい戦いもできずにネーデルランドへ亡命する。
    ここの場面、船で出陣→やっぱり戻る→やっぱり敵地へ→やっぱり戻る→やっぱり戦おう→やっぱり戻る…を繰り返して、笑っていいの?という感じなのだが、史実においても海峡なん往復もしたらしい。ふーーん。
    その後デンマークの王位についたフレデリック1世に捕らえられてデンマークのセナボー城での生涯幽閉となる。

    【冬】
    ミッケルは12年ぶりに故郷ユランを訪ねた。
    ユランでは、フレデリック1世を退位させクリスチャン2世の復権を目指す農民たちが反乱の準備を進めていた。
    ミッケルの弟のニルス、そしてアネーメッテが結婚したステフェンもこの反乱に賛同していた。
    ミッケルはニルスから、数年前に彼を訪ねた老人と娘がいた事を知る。
    口も耳も不自由なその娘イーデは、アクセルとインゲの娘だった。
    かつてミッケルは、自分が恋したスサンナを寝取ったオッテへの復讐のため、オッテの婚約者アネーメッテを強姦した。
    スサンナはアクセルを産み、アネーメッテはインゲを産み、そのインゲがアクセルの子供であるイーデを産んだのだ。
    アネーメッテの死後行き場がなくなったイーデを旅する老芸人ヤコブが引き取り、祖父に当たるミッケルを訪ねてきていたのだ。

    農民の反乱はやがて抑えられた。農民たちは作戦も知らない、武器も知らない、ただ蜂起して殺し合ってそして鎮圧されていった。
    この反乱により、貴族のオッテと、その屋敷に襲撃を仕掛けたステフェンが死んでいた。
    その遺体を見たミッケルは、心のなかでアネーメッテに呟きかける。ほら、お前が恋した男と、お前に恋した男と、お前が結婚した男、お前の生涯の男たちがここに集まった。

    老ヤコブとイーデは旅芸人をしながら、クリスチャン2世幽閉の城にいるミッケルを訪ねた。
    だがこの時ミッケルは、医者で理髪師で禁じられた錬金術師ザカリアスを訪ねていた。
    ザカリアスが隠し持っていた実験人間にミッケルは驚愕する。生まれつきの脳の奇形をザカリアスの実験によりさらに膨張させてガラス瓶で育ったカロルスは、膨大な知識を持つが自力での生活は全く不可能だった。そしてその血筋、それはかつてクリスチャン2世が慰みにした女が産んだ赤子、つまりはクリスチャン2世の息子だった。
    だがミッケルの言葉によりザカリアスの禁じられた実験が明るみに出て、カロルス共々火刑に処せられる。

    このことですっかり心身の気力体力を失ったミッケルは、卒中の不自由な体でクリスチャン2世のもとに戻り、起き上がることもなく、イーデを孫娘と認識することもない。
    <こうして二人の暴れ者(※原文では”嵐を呼ぶ男”的な文章だそうです)が取り残された。炎を上げる性急さの権化のようになって舞台に飛び出してきては遠大な計画を抱き、歴史欠如のデンマークの創始者(※原文では”デンマーク人ならではの歴史を紡がなかった”というような文章らしい)になった国王。類を見ない誇りと包括的な希求のおかげで、幅広く枝分かれする想像上の一族の先祖となったミッケル・チョイアセン。その二人が、塔の上の部屋に幽閉されて一緒に過ごし、ともに夢の王朝の創始者となっていた。P365>

    ミッケルは3ヶ月後に死んだ。
    ミッケルは人生を自覚せず生きてきた。死のうと思ったこともなく、生きようと思ったこともなかった。

    イーデは、城詰めの若い衛兵と恋をしていた。
    役目を終えたヤコブは、酒の幻の中、首を括って死んだ。

    さらばだ、ありがと、みな皆さん!
    やれるものはみんなくれてやった。
    この音楽が嫌いなら、お気の毒さま ーもうおしまいさ。

    ===
    史実と、小説を年代ごとに。
    以下、●は歴史上の出来事、▲は小説の出来事。

    1481年
    ●ハンスがデンマーク王になり、弟のフレデリックは南ユラン公爵になる。
    その後、ノルウェーとスウェーデンの王位にも付き、北欧三国の王となり、デンマーク・ノルウェー・スウェーデン三王国間で「カルマル同盟」が結ばれる。

    1497年頃
    ▲物語の始まり。コペンハーゲン市でミッケルとオッテの因縁が始まる。

    1500年
    ●ハンスとフレデリックは共に、小国ディットマールシェンに出陣するが、惨敗する。
    その後スウェーデン、ノルウェーでは反乱が起きるようになり、スウェーデンはカルマル同盟から離脱する。
    ▲ハンス王の軍に、傭兵ミッケルと、貴族オッテ・イヴァセンが旗持ちとして参戦している。
    戦争前夜の不穏な国の様子が文章から感じ取れる。
    <夜が来た、川の深い淀みで水が分かれ、そこにいた巨人が泥まみれの方を空中に持ち上げた。人の踏み込めない湿地のあたりでは、黄泉の国の例が、黒いアジサイのように空中で翼を休ませたまま。じっと深みを伺っていた。P100>
    <…そして突然、透き通った天空に、音もなく亡霊が現れ出た。騎士だ。ー馬は全速力で飛び走り、尻尾を突き立てている。騎士の両足も空中に突き出されていた。彼の背後では、多くの馬と兵士たちがあげる土埃が波を打って空に舞い上がっている。何千ものやりがいちどきに向きを変え、新たな馬の群れとやりがt年に向かって突き進み、開かれた道を滑っていって(…中略…)みよ、無数の兵士が空に輝き出てきては散乱し、また集合している。(…中略…)開くことのない突撃兵たちのことごとくが底なしの天空に梅雨のごとく消えてしまった。P110>
    <船着き場に騎士がやってくる。(…中略…)嵐が騎士の灰色の外衣を舞い上げた。彼は骨をむき出しにして裸で馬に乗っていた。肋骨の間を雪が音を立てて吹き抜けている。馬に乗っているのは死神だった。王冠が三本の毛の上に乗り、大鎌は誇らしげに後ろを指している。死神は気まぐれだ。P124>

    1513年
    ●ハンス王のクリスチャン2世がデンマークとノルウェーの王位に就く。

    1518年
    ●スウェーデンで内乱が起き、クリスチャン2世が侵攻する。
    ▲騎士アクセルはスウェーデン侵攻に参戦していた。
    アクセルの語る、スウェーデンの雪質。<雪の室がデンマークとは違っていて、細かくて磨き砂のように尖っている感じで、サラサラ流れて皮膚に当たると火傷をしたようだった。(…中略…)最悪の雪だよ。ただ落ちてくるんではなくて、苔のように蔓延ってしまうんだ。兵士の死体もあっという間に覆われてしまう。ああ、もうまったく厳しい毎日だった、日が輝いているときは、空気が細かい棘で一杯で、それを吸い込んだら、苦痛で身を捩りたくなるくらいなんだ。夜になると馬が寄り添って立っていて、痛がって咳をするのさ。(…中略…)切られた連中はみんな豚のように泣き喚いてた。大砲の弾が当たると、松の木がガラスのように砕けてね。大勢の兵士が狂ったように野蛮になっていた。だけど、大勝利を収めて、今、軍隊はストックホルムに達している…P145>まさに身を削られるような臨場的な文章だと思いませんか。

    1520年
    ●クリスチャン2世は、スウェーデン有力者や反乱者たちを大量処刑、いわゆる「ストックホルムの血浴」を断行し、ノルウェーの王位に就く。これによりカルマル同盟復活。
    だがその後もスウェーデンでは反乱が続く。

    1523年
    ●スウェーデン独立。グスタフ1世(貴族グスタフ・ヴァーサ)が即位。
    ●クリスチャン2世、デンマークからオランダへ亡命。
    ●クリスチャン2世の叔父(ハンス前王の弟)フレデリック1世が、デンマークとノルウェーの王位に就く。

    1532年
    ●クリスチャン2世はデンマークのセナボー城に生涯幽閉されることになる。

    1534年-36年
    ●デンマークの農民たちは、クリスチャン2世の復権を唱えて、クリスチャン2世を追い出した貴族に対しての反乱を起こす。
    ▲ミッケルの弟のニルス、アネーメッテが結婚したステフェンもこの反乱に参加している。
    ▲クリスチャン2世の側近ミッケルも、王と共に過ごし、共に幽閉され、そして年を取り死ぬ。


    小説としては凄まじい描写力だった。
    自然の中に突如現れてはかき消える幻影、人々の世界と同じ線上にいる北欧神話の神々。
    そのなかに戦乱や処刑の匂い立つような臨場感と冷たさ。
    主要人物のミッケルとクリスチャン2世は怒りにより突発的行動を取る。
    クリスチャン2世はそれにより北欧諸国を混乱させ、戦うか辞めるかを迷いに迷いに迷いに迷って機会を逸して幽閉で終わる。(これは同じオランダ人の王のハムレットの迷いにも通じるのか?)
    ミッケルはアネーメッテへの行為により、結婚もせず決まった女性もいないにもかかわらず、その後何代も血筋が続いていた。
    ミッケル、アクセル、オッテはそれぞれ女性たちを手にしては手放している。
    しかし案外女達も結婚相手がいたり、なんとかなっているのはまだ良かった。
    この時代未婚で身籠る女性はたくさんいて、それでもなんとか生きてゆく道もあったのだろうか。
    アクセルなどあまりにもその場その場でお気楽なので…、なんかむしろ怒る気力も失せる。
    終盤で、老ヤコブとイーデとの旅は本書の中でも唯一陰りがなかった。
    最後は、この世の役目を終えた男たちは死んでゆき、おそらくイーデによりミッケルの血筋は続く。
    生も死も自覚なく生きてきたミッケルの血筋は、虐げられる立場である女性たちにより、静かに強く続いている。


    すごい描写ではあるのだが、作者イェンセンが見る人間社会はどこか非人間的な感じがする。
    この小説が発表された時代のオランダはドイツと戦争で領土を捕られているため、ドイツに対してはかなり厳しい目線となっている。これは小説当時でもありながら、作品が発表された19世紀とを入り交じりとなっている。
    さて、この本では作者の、女性や障害者や敵国人へは冷たく厳しい目線を感じるのだが、実際のイェンセンは優成思想であり差別主義者であった。作家としてこのあとのイェンセンは、彼が嫌っているドイツのナチスの排他的な主張をしてゆくようになってゆく。
    あとがきでも、イェンセンは神話を再構築しようとしていたというので、排他的愛国心が昂り非人間的さとなっているのか。
    しかしデンマークは歴史的にフランスやドイツから回ってくるものが多かったらしい。愛国といいつつ、他国の影響を受けて後追い的な文化を作ってゆくしかなかった。

    一つわからなかったことがある。
    ザカリアスは、第2部で旅回りの理髪師で医者でなんか胡散臭いやつとして登場してアクセルの治療にあたっている。
    そしてそれから10年以上経った第3部では天文学者でありパラケルススの実験を具現化しようとした大錬金術師として出てきて、ミッケルに対して「お久しぶりですな」みたいなことを言う。
    しかし第2部ではミッケルとザカリアスは会っていないはずなんだよなあ。実はもう1箇所名前が違う人物として出てきたりしてる??

  • 世に出て100年経過している北欧デンマークの小説を、いま世に出す岩波文庫。
    海外文学翻訳の極北とでもいいたくなる(熱烈支持)。

    本作を、勝手に歴史小説だと思い込んで読んだが、
    雰囲気としては「歴史に材をとった」小説という感じ。
    そういう意味において北欧史を知らなくても十分楽しめる。
    歴史小説として読むと、たとえばNHK大河ドラマにおいて主要な登場人物の動向が、
    ナレーションの一文だけで済まされてしまった時に感じるような
    木で鼻をくくる感が、少々ある気がする。

    冒頭に言った通り、1901年の刊であるから、現代的目線で評することは
    何の意味も生まないけれども、19世紀的ロマンでもなく、20世紀的モダニズムでもない、
    いたって普通な小説という印象。

  • デンマーク近代小説の代表作とのことですが。うーん。雰囲気は良い。あと、王の存在が雲の上でなく、きちんとした人間として書かれている。全体的に血生臭いが、さわやかというか。自分が北欧の歴史に疎く、なかなか物語の確信に触れるのが難しい。戦争しているが、どこと何のために戦ってるのかわからなかった。しかし、どんなに駄目人間でも戦死すると名誉になるねー。おかしな現象だよね、改めて。まあそう言わなきゃ遺族が浮かばれないか。

  • 春の死、大いなる夏、冬、という章タイトルにも現れるように季節の移ろいを感じさせる情景描写が巧みで、訥々と語られる序盤からストーリーも表現も膨らみ、最終章はまさに冬。とてもよかった。
    ホムンクルスのこの解釈は独特でこれまた面白いところ

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