霊の真柱(たまのみはしら) (岩波文庫 青 46-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003304624

作品紹介・あらすじ

古学の徒は大倭心を堅固にもつことが肝要であり、そのためには「霊の行方の安定」を知る必要がある。そこで、宇宙の開闢から天・地・泉の生成とその形象を、十箇の図と古伝により説明し、その過程を貫いている神々の功業を明らかにして、霊魂の行方を論じた書。篤胤の幽冥観を確立し、国学的宇宙論に新たな展開をもたらした重要著作。

感想・レビュー・書評

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  • 日本は皇国であり、外国の国柄・人・思想はとるに足らないものであることを、世界の地誌や聖書等の知識をも引き合いに出しながら大真面目に「証明」しようとしている。トンデモ理論炸裂。笑えます。

  • 書名は、「たまのみはしら」と読みます。「国学の四大人」の1人平田篤胤による、人が死んだあとの魂はどうなるのかという問題を、古事記をはじめとする「古史」から明らかにした書物・・・のはずです。
    しかし、一応この書物の原本は上下2巻に分かれているのですが、その2冊のあいだには相当な乖離があるように思われます。上巻の部分では、天地開闢から天孫降臨までの日本神話を、10枚の図とともに解説しているのですが、どう考えてもこれは、同じように古事記神話を10枚の図で解説した、服部中庸の「三大考」に対抗しているとしか思えません。何よりも、肝心の「魂のゆくえ」には上巻では全く触れていないのです。とはいえ、これはこれで、ナラティブ・アプローチで言うところの「語りなおし(リテリング)」作業を、篤胤が複数の伝承のある日本神話に対して行うプロセスを楽になぞれるようで、面白いのですが。
    そして下巻では、今度はそれまでの「天・地・泉」の3点から日本神話を再構成した流れを全く無視するかのように、「顕・幽」の2点から、魂の行方について論じていきます。このあたりは、死者の霊が墓や社に鎮められて、常に子孫を見守っているという、現在の日本人の宗教観にかなり近い形になっているように思えます。
    それにしても、両者はまったく別の書物ではないかと思われるほど、内容に開きがあるのはどうしてなのか。日本神話のテキストから死生観を導き出すことに失敗したためか、それとも読者にどうしても語り直しを経た日本神話を押さえてほしかったためか。これを含む篤胤の中心著作が、1811年12月のわずか1ヶ月の間に書き上げられた(この時期に古代神話をリテリングして「古史」を確定する作業も行われたわけです)という事実を考えると、個人的には前者だったのではないかという疑いを持っているのですが。
    天皇を「皇御孫尊」として奉り、日本を「神国」として世界の頂点に置くなど、尊皇攘夷から国家神道へいたる過程に与えた影響はあまりに大きいですが、一方で民衆の素朴な祖先崇拝を神道教説に導入したみずみずしい感覚も盛り込まれており、キリスト教や地動説などの西洋事情にも詳しかったらしい篤胤の宗教観が、よくわかる本です。

    (再読)

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著者プロフィール

1776年生まれ、1843年没。出羽国秋田郡久保田出身の、江戸時代の国学者・思想家・医師。

「2018年 『天狗にさらわれた少年 抄訳仙境異聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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