最暗黒の東京 (岩波文庫 青 174-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003317419

感想・レビュー・書評

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  • 今読んでおります。明治時代の書き下し調がぐっときます。百年たってもあまり変化していない貧困の様子…

  • ”明治中期の東京下層民の生活実態を克明に記録したルポルタージュ。二葉亭四迷の影響で下層社会の探訪を始めた著者(1866‐1935)が、貧民街に潜入、職業を転々としながら、木賃宿の実情や日雇人夫・見世物師・車夫等の暮しぶりを描き出したもので、横山源之助『日本の下層社会』とならぶ明治記録文学の傑作。”(「BOOK」データベースより)

    筆者自ら貧民街に立ち入り、時には日雇い労働者になり、人力車の車夫の会計を務め、車夫の生活実態を報告し、その人々の生活の実態をありありと描いている。

    学校の日本史で習った富国強兵・殖産興業の裏に、習わなかった国の政策から取り残された人々の生活の実態を知ることができた。

    華やかな表の顔と、そうでない、しかし、こういう人々もいたということを知ることができる貴重な記録文学。

    他のレビューにも合ったように思うが、この当時の人々の暮らしは活き活きとしていた。
    それに比べ、現代は…。

    なにが、こうもちがうのだろう。

  • 底辺層の生活を知るために読む。

    明治期の東京の貧しい人たちの生活。
    筆者の表現力がずば抜けていて、今ではほとんど使わない言葉ばかりなのに臨場感がある。
    正直、汚い言葉、差別的な言葉もあるのだが、文章の密度が濃い。

    車夫がいて、残飯屋があって、子どもが走り回っている。
    伝わってくる空気感としては、臭い、汚い、野蛮、せわしない、騒がしい、、
    ちょっと前の東南アジアとか、中国とかのイメージに近いかもしれない。

    今の貧困層との大きな違いは、当時の方が活気があったのだと思う。
    貧しい生活の中でも生き生きし、貧困層として自立し、生命力があったように思う。

    今はどうだろうか?
    生活保護を受けなければやっていけない人たちは、生き生きしているか?
    生き生きしていれば叩かれるか?
    中間層、上流層が、貧困層の存在を押し潰してきたのではないか?
    貧困層なりに生き生きとしている権利は間違いなくあるはずである。

  • 明治期における庶民の生活というと、文明開化の華々しいイメージを持っていたが、本書はそれを一掃した。様々な視点から描かれる最下層民の暮らしぶりは、想像を絶するもので、中でも残飯屋の場面などは読むに耐えず、明治期の闇を垣間見た気分である。

  • 古本で購入。

    明治中期、国民新聞社の記者であった松原岩五郎が、その新聞上の連載として東京の最下層の様相を記したルポルタージュ。言うなれば「東京貧民窟潜入記」。
    自ら日雇い労働者となって異臭漂う木賃宿に泊まり、残飯屋で働き、そこに生きる人々やその社会を観察している。
    覗き趣味や暴露趣味に陥らず、いわゆる“社会派”らしいお上批判のようなものもない。そういう点で、解説者の言う「記録文学」という表現がぴったりな気がする。

    「貧大学の入門生」として大貧民窟に飛び込んだ松原によって詳細に描かれる世界は雑多で不衛生、充満する湿気と饐えたにおいが感じられるよう。
    その日を食っていけるか、冬の寒さを凌ぐための布団さえ満足に得られない、そういうギリギリのところで生きている人間を描くけれど、その悲惨さを煽るような書き方ではない。まさに「記録」。

    35の短篇から成っているが、特に印象的なのは「20 最暗黒裡の怪物」と「27 生活の戦争」。
    前者は行商仲間との旅の途中で立ち寄った伊香保の貧民社会を描いたもの。
    崖地に建物を積み重ねたようなその場所の最下層、10畳程度の穴蔵に起居する按摩や座芸者ら盲目・聾唖の人々。彼らの酋長として君臨する「酒呑童子の如」き男。
    支配下にある人々から売上をはね、彼らの話から宿場の客の増減や景気を伺う男の様は、異界の話でもあるかのように本書の中でも奇妙でおもしろい。

    後者は車夫たちの熾烈な客取り争いを描いたもの。
    ひとりの紳士を獲得しようとする言い争いは、喜劇やコントのような滑稽味がある。

    「ガラガラバタバタ旦那参りましょう、何をぬかすこの畜生、己れが先だい箆棒め、旦那参ります、糞でも喰え、胴突き倒すぞ瓢箪野郎め、旦那参ります、旦那々々…」

    文語体と漢語修飾の多用によってやや読みにくい文章ではあるけど、おもしろい。
    この本と共に明治の記録文学の傑作と言われる、横山源之助『日本の下層社会』も読んでみたい。
    この両書が二葉亭四迷の影響によって生まれた、というのも気になる。

  • 明治中期の東京の下層民の生活実態を克明に記録したルポルタージュです(と、注にあります)。今の六本木とは比べようもありませんが、でも、これが庶民の実態なのでしょう。その実態は、今と何が違うのでしょうか。
    『自分は違うよ』と言う人が多いと思いますが、それが社会の発展なのでしょうか。
    まぁ、こんなことを書くのは、つまりはぼくが「負け組」だからでしょうか。

  • 文明は開花したといっても、その恩恵にまったく浴しない社会の最底辺に生きる人々の息遣いが聞こえてきそうだ。今日生きるのが精いっぱいの状況とはこのようなものか。ここには明日への希望など一笑に付すだけの圧倒的な生への迫力がある。

  • これも卒論用に。というか必読書なのに読んでいないのが恥ずかしいので、次回amazonさまに頼るときに同時購入したいと思います。

  • 本を読む人読まぬ人とかくこの世はままならぬpart2より

  • これも大尊敬の先輩&最愛の親友であるK女史にお勧め戴いた本。表記、表現…言葉がすべて昔の言葉、表記で(笑)読むのに、苦しかったのだけど、読むうちにそれが、楽しくて…。凄い時間かけて読破。日本人って凄い・・・と。

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著者プロフィール

1866-1935。明治時代のジャーナリスト。別名に二十三階堂、乾坤一布衣。伯耆国(現・鳥取県)に生まれ、最初は小説家を目指したが、1892年、国民新聞社に入社。二葉亭四迷や幸田露伴の影響を受け、東京の下層社会のルポルタージュを国民新聞に連載。のち、日清戦争に記者として従軍した。

「2015年 『最暗黒の東京』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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