戊辰物語 (岩波文庫 青 431-1)

制作 : 東京日日新聞社会部 
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  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003343111

感想・レビュー・書評

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  • 再読。1868年(慶応4年=明治元年)の戊辰戦争から60年後の同じ戊辰の年である1928年(昭和3年)に東京日日新聞で連載された、幕末についての古老の回顧談。表題作の他、類似企画の「五十年前(大正15年連載)」と、単行本化の際に追加された「維新前後」を収録。

    金子堅太郎や伊藤博邦(伊藤博文の養子)といった明治政府関係者の談話(伊藤博文のエピソードなど)もあるが、近藤勇五郎(近藤勇の娘婿、甥)や秦泰親(篠原泰之進の息子)などの新選組関係者、与力、旗本や伊賀者の末裔など敗者である旧幕府関係者と、落語家(柳家小さん)、歌舞伎役者(五代目中村歌右衛門)、講釈師、画家や彫刻家(高村光雲)、柔道家(嘉納治五郎)、僧侶、とび職から侠客まで、政治と係わりのない多様な職業の庶民の談話が圧倒的に多いのが特徴。

    意外なところでは、時計屋の服部金太郎とか、もしやと思って調べたらやっぱりセイコーの創業者。女性は少ないけれど、下田歌子の宮仕え時代のエピソードや、山岡松子が語る父・山岡鉄太郎(鉄舟)のエピソード、日本初の看護婦の談話などあり。とにかく全部面白い。歴史の教科書に記されない、ちょっとした人々の暮らしぶりがわかるような談話がやっぱり好きだなあ。もちろん、歴史上の有名人のこぼれ話的破天荒エピソードも面白いけど。

    「維新前後」は町奉行所の話、新撰組、彰義隊余聞の3章に分けられており、新撰組の部分は『新選組始末記』と内容がかぶっているので、匿名ながら当時、東京日日新聞の記者だった子母澤寛が書いたものだと言われている。

  • 戊辰戦争から60年後のつぎの戊辰、昭和三年に東京日日新聞に連載された当時を知る古老からの聞き書き「戊辰物語」、大正15年に同じように連載した回顧談「五十年前」ほか、補増の「維新前後」を収録。

    ひとの記憶による記述なので時系列が誤っていたり、主観的な箇所もあるが、歴史学史料というより当時のひとの風俗心情など様子を知る民俗学資料としてとても面白いです。

  • 『壬生義士伝』から新撰組と幕末・御維新をもっと知りたいと思った。本書はまだ戊辰の頃を実際に見聞きした人々を取材してまとめたもので、短文を連ねた構成は講談を聴いているような快さと面白さを感じる。江戸っ子が遠くの戦や彰義隊の戦いを他人事のように見ている様子は、戦争の装備が現代とは比べるべくもない小火器を中心としたもので、一般住民を巻き添えにしないものであることも幸いしたろう。解説にもあるとおり、将軍が君臨する国と天皇が統べる国の両方を受け入れてしまう日本人の不思議な柔軟性に苦笑してしまう。

  • すごい面白かった!

    黒田清隆の怪力自慢とか、寿司屋でお金払えなくなって喧嘩した話とか、
    大隈重信が「最新式の馬車だぜ!!」って言ってガラガラのりまわしてたものが、実は西洋の乳母車だったこととかwww
    他にも土佐の鯨海酔候がでてきたり、岡本鉄石がでてきたりして、幕末ファンにはたまらない一書です。

    笑いのツボがたくさんあって本当に良かったです。。。

  • 1983年刊行。大正15年と昭和3年に東京日日新聞に連載された幕末維新期に関する古老の聞き書きである。当時、存命だった幕末維新期体験者の聞き書きであり、維新期の世相の生々しい様子、上野戦争の様子などが書かれている。特に、上野戦争の状況はあまり描かれることがないので、興味深いところ。なお、新撰組の生き残りからの聞き取りもある。

  • 維新前後、その時代を生きていた人々話などをまとめた1冊。当時の空気がリアルに感じられて、現在との社会や生活や倫理観、また生死観の違いを実感します。読みやすくとても面白いです。

  • 回顧録かつ側面史の貴重な資料が、当時の空気にどっぷり浸らせてくれた。戊辰戦争から60年後に新聞社が連載した聞き書き、それが粋にまとめられた良書。様々な立場・階層の人々の見た維新の動乱が、生き生きとした口調で心地良い。

  • 金子の談話もチラホラ。忘れられないのは、薩摩の海軍将校が洋行した際、ホテルの部屋から締め出されて(鍵が開けられなかった?)ずっと廊下で腕立て伏せしてた?という談話‥想像するだに可笑しいです(笑)

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