オデュッセウスの世界 (岩波文庫 青 464-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (385ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003346419

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  •  ホメロスの『イリアス』、『オデュッセイア』の二大叙事詩を詳細に読み解くことによって、古代ギリシア社会の有り様を具体的に解き明かしたものである。
     社会学や人類学の成果を取り入れ、当時の社会構成や、財産の内容、奴隷による生産活動、贈与慣行、家(オイコス)と親族及び共同体の関係、さらには道徳や名誉観念などについて、詳しく説明がされる。

     『イリアス』も『オデュッセイア』も読んだことがあるのだが、個々のエピソードや筋を追うのに精一杯で、このように読み解くことができるのかと、目から鱗である。残念ながら、著者の読み解きの妥当性を評価するような能力はないが、かなり納得できる形で論が展開されているように感じられた。

     幸い本書には、初版刊行後20年ほど経った時点での著者による補遺が載せられており、本書に対する評価や反論等の一端を知ることができる。

     いずれにせよ、改めてホメロスを読みたいと思わせてくれる、魅力的な一書であった。

  • ギリシャ古代史の入門書としておすすめの一冊。「イリアス」「オデュッセイア」の二大叙事詩の本文を引用しながら古代ギリシャ世界について解説しているので、初めてギリシャ古代史に触れる方でも、物語を楽しむつもりで気軽に読むことができます。
    (システム制御系システム制御コース M2)

  • ホメロスの2大叙事詩の後に。

    「イーリアス」「オデュッセイア」を読み終えた後に、
    更にその理解を深めるのに訳だつ一冊。

    物語の裏に潜むその当時の文化の探り方が興味深かった。
    他の叙事詩や、昔の小説を読む際にも、こういう視点を持って読むのも面白いと思う。

  • イギリスの歴史家M・I・フィンリーの著書"THE WORLD OF ODYSSEUS(第2改訂版、1997年)"の全訳。ホメロスの二大叙事詩『イリアス』、『オデュッセイア』の記述から、伝承学や文化人類学の知見も加えた上で古代ギリシャ(具体的には暗黒時代初期である紀元前10~9世紀のギリシャ)の社会を考察した書。
    個人的に興味深かったのは第五章「道徳と価値」の項であり、神々の「人間化」や神々の道徳性について論じた個所であった。即ち、神々はホメロスに続く伝統の中で人間的な存在となり、また本来道徳とは無縁の存在であったという主張である。以前からギリシャ神話における神々と道徳の問題(神々による人間への「専横」とも取れる振る舞いなど)に関して興味を持っていた自分としては、一つの答えを見つけられた感覚があった。
    本書の内容は『イリアス』、『オデュッセイア』を元にしているため、先にこの二つの叙事詩に目を通しておくと理解しやすい。また、本書で取り上げられている説(「家」中心の政治経済体制、賓客関係に基づく外交)には現在では疑義の呈されているものがあるため、本書を読んで古代ギリシャに興味を持った方は最新の研究成果を取り入れた解説書・専門書を読んだほうが望ましい。

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