東京に暮す: 1928~1936 (岩波文庫 青 466-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003346617

感想・レビュー・書評

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  • 戦前の日本に暮らしたイギリス人女性の目から見た日本の風俗。
    とても好意的な温かい視点で、日本の庶民の暮らしがいきいきと
    語られている。
    当時の日本でサンソム夫人が美徳と感じたものが失われつつあり、
    今後の不安として語られたことが今の時代にその通りになっている
    ことや、あるいはどの時代でも人々の悩みや不安がある程度同じ
    だということも驚き。

  • 日本や日本人に対する鋭い洞察を、軽妙かつユーモアのある文章で綴った好エッセイ。常に庶民に温かい視線を向けているので、時代は違えど日本の庶民としては心地よく読める笑。

    時代背景を考えると、イギリス人にとってはけっして住みよい時期ではなかったはずなのに、ネガティブなことは書かれていない。どんな環境であっても、積極的にものごとの良い面を見るというところがすばらしい。

  • 1928年から1939年まで外交官夫人として日本で暮らした作者が1936年に書いたエッセイ.
    作者が描く日本人像には今でも納得できる点もあるが,一方,当時既に国際情勢は緊迫しつつあったはずで,本書で描写される日本人像は,外交官夫人の視点としてはあまりにも牧歌的に過ぎるのではないだろうか.少々興ざめしてしまった.

  • 1928年から1939年まで東京で暮らしたイギリス人女性が1936年に書いた本。
    駐日英国大使館に勤める夫ジョージ・サンソムは外交官というより日本研究家という人物で、その影響もあってか親日的な書きっぷりだ。
    しかし、洞察が鋭いせいで、親日的に書いたものであっても皮肉なんじゃないかなと感じられる面もある(私がイギリス人に持っている偏見なのかもしれない)。
    「私たちが優しくしないと、一般の日本人は外国人が望むことは彼らが望むこととは当然違っていて、理解不可能だと考えてしまいます。私たちが怒れば怒るほど、日本人はわかっていないのにわかったふりをし、できもしないのにあれこれと約束をして、何とか私たちの機嫌を取ろうとします。それは和解のためであり、和解が成立しないと彼らは話し合うことができないのです。日本人のように相手の気分に左右される国民はいません。」

  • 著者の頭のよさが随所に見え隠れする書物である。一つのエッセィ文学とでも呼べばいいのだろうか?エッセィなのだけれど、文学性が見え隠れしている、これは、リンドバーグ夫人の、「海からの贈り物」とも通じているように思う、リンドバーグも、また、本著の著者であるサンソム婦人にもそれは通じている、しかし、サンソム婦人はそれは別にそれは珍しくなく、日本でもその傾向が強いと述べている、なぜなら、女性は常に裏から男性を支えなければならないからでそれだけ気配りができるからである、と。逆を言えば、妻なしでは生きていけないくせに、妻に対して横柄な夫はどうなんだろう?とも、思っていたに違いない。

    本著は酷くのんびりした内容がつづられている。日本人の国民性を、これだけしっかりと観察して描かれている本は実はないのではないか?というくらいの、観察眼である。無論、現代と当時の日本はすっかり変わってしまっている部分もあるけれど、彼女はちょうど経済成長し変化を遂げていく日本をまざまざと見つめているので、よい変化、悪い変化、あるいはどちらも言えぬ変化をあげていき、それを自分の感性によって判断しているあたりに好感を抱ける、つまり、絶対的に正しいというよりは私はこういうのが好きだけれどなぁ、といった具合に。記された年代を見ていると、1928~1936とあり、これはちょうど二つの大規模な世界大戦であり、日本が国際的に孤立していく時節である。解説を観ると、本著が書かれた背景が記されているが、経済的に逼迫し国際的に孤立し非難される日本という国が持つ、よさをなんとか伝えようとして執筆されたのが本著らしい、結果として、大規模な世界大戦へと突入し、日本は破滅へとひた走ることになるが、こういう著書を書いて尽力してくれた人がいるということを知ると、なんだか嬉しくもある。

    本著を読み出すときに、感じていたのは二つのことで、一つが、「過剰に持ち上げられてはいないか?」で、もう一つは、「ぼろくそにけなされていないか?」であった。国民性に薄い日本人である俺だけれど、やはり後者は少し怖くもあるし、前者だったら途中でギブアップしそうだなと考えていたのだけれど、褒めるところは褒めて、けなすこところはあけすけなくけなし、自国=イギリスと、日本をどちらに遠慮することもなく比較して論じているあたりが、気持ちよくもある。そして、彼女の日本を見つめる目は、なんとはなしに、今の日本人がインドを見つめる目に似ているように思う。のんびりしつつも、工業化によってそれが徐々に失われていく。彼女は、本屋で本を探してくれと頼んだらしい、そうしたら、三十分後にその本が倉庫で見つかったとして渡されたらしい、のんびりしておりなおかつ他人のために時間を割くことを厭わない国民性を褒めているのである、だが、それが経済成長に伴い、在庫があるとは到底思われないような本を頼んだところ、三分で出てきてしまい、それを残念がっているあたりには、やはり、今の日本人がインドを見るときのような目で、日本を見ているのだなと感じる、無論、そこにはある種の高慢さが存在しているのは否めない。日本人が田舎を賞賛するとき、賞賛するもののやはり都会>田舎という価値観が根底にはあるのだ、だが、それにしても、それはそうだなぁ、なんてうなずいてしまいたくなる。


    昔は、誰もがのんびりとしていたくせに、それでいて、みなは若くして名を上げていたりする、今は時間に追われている癖に、名を上げるのは却って遅くなっている?このあたり、情報量の氾濫によって、真に大切なるものに出会えなくなっていることがあげられるのかもしれない。本は往々にして、古い本に質的に勝てはしないのだ。特に思想や思考に関しての書物は特に。現代的な書物が過去の書物に勝てるのは、最新の情報やデータ、技術が紹介されているという一点に尽きるのではなかろうか?ときおり例外はあるけれども、その傾向は強いように思われる。ショーペンハウエル的な古典主義ではないけれども、しかし、古典にはもっと触れていかなければならないと感じる。

    ちなみに、解説に、挿絵担当の、マージョリー西脇という、西脇順三郎の先妻の顔写真が載っているのだけれど、びっくりするくらい美人である。

  • コロナが流行る数年前、神保町の古本で見つけた。
    東京に暮らす…共感できるかなと思ったが、外国人から見て日本人を描いたものでアルアル!とか思える内容ではなかった。
    昔の外国人の視点で昔の日本を知る一つの方法。知っとけばいつかおおっ!!となる日が来るのかなぁ。

  • 生活者の視点を大事にした1930年代の東京の風土記だ。
    人々の営みや風俗をはじめとした様々なもの(時にそれが前時代的なものであっても)に興味を持ち、自分なりの考察を加える視点にはキャサリン夫人の教養が感じられる。
    彼女が見たこの時代の日本には、今にも通じる課題があるように思う。
    書の末尾に刻まれたメッセージ、"二十世紀の人類は、東洋人も西洋人も、一緒に笑い、語り、学ぶことで(中略)進取の気性に富んだ先輩たちの仕上げをしなくてはならないのです"をこれからの時代じっくりと噛み締めたい。

  • 2018年12月読了。

  • 1937年に教養の有るMs.Sansomによって、イギリス人向けに書かれたもの。

    英国人と日本人は、謙遜を美徳とするなど共通点を持つとして、暖かな目で、当時の日本人の生活、考え方、習慣などを可能な限り、理解しようとしている。

    p.73
    日本の見合い結婚のほうがうまくいく確率がずっと高いのです、イギリスには、家同士の契約として結婚を取りまとめる制度がありません。
    それでよい奥さんになりそうな魅力的な娘も、意に反して長い間独身でいるうちに魅力を失ってしまいます。

  • イギリス人女性が描いた日本の姿。なかなか示唆に富む内容であった。
    日本人はイギリス人からこういう風に見えるのかというが大変面白い。当時と今では状況は違うから,筆者が今来たらなんと思うのか。個人的にはそんなに大きく変わらないのではないかと思う。変わるとすれば生活に機会がたくさん入り込んだことだろうか。でもそれはすでに本書の中でも日本人の性質として描かれているから,そこまでの不思議はないのかもしれない。また,子供について地域の接し方などもそんなに変わっていないように思う。民族性とはこういうことをいうのだろうか。
    自分がドイツに行ったときには何とも考えなかったのであるが,他の国の理解をするためには,教養が必要だと思えた。

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