- Amazon.co.jp ・本 (145ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003362594
作品紹介・あらすじ
世界の恒久的平和はいかにしてもたらされるべきか。カント(1724‐1804)は、常備軍の全廃、諸国家の民主化、国際連合の創設などの具体的提起を行ない、さらに人類の最高善=永遠平和の実現が決して空論にとどまらぬ根拠を明らかにして、人間ひとりひとりに平和への努力を厳粛に義務づける。あらためて熟読されるべき平和論の古典。
感想・レビュー・書評
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18世紀末、フランス革命を経た国際社会を背景に、「永遠平和の実現」についてのイマヌエル・カントが真面目に考察した国際平和理論と実践方法。以下、概略。
【予備条項】
1、将来の戦争の種がひそむ平和条約は単なる休戦
2、独立している国家は互いに侵すことはできない
3、常備軍は廃止。但し、防衛手段としてはOK
4、戦争遂行を気安くさせるので戦争国債は禁止
5、他国への不干渉
6、戦争時の卑劣な戦略は和平時の信頼性を損なわせる
【確定条項】
1、各国の政治体制は共和制がベスト
2、統一世界国家より諸国家の連合スタイルにすべき
3、世界市民法は各国市民が友好である権利を保障
【第1補説】
自然の摂理によって人間社会は次第に成熟すると、結局、利己的人間を抑制するとともに商業を発達させようとするので平和が望ましくなる。人間は永遠平和を道徳的義務とするはず。
【第2補説】
国家は哲学者のこうした意見を妨げてはならない。
【付録】
政治家はこうした道徳を手段に使うべきでなく、道徳の実現を目指すべき。政治は自ら取り決めた原則は、民衆に担保するため公表しなければならない。
21世紀初頭、2度の世界大戦、冷戦を経て、ここに書かれていることはシンプルな内容だけに不完全ながらも実現されているもの(国)も多い。そして、テロの時代。カントがある意味想定し、また想定を超えた国際社会と状況になっているが、当時も今も空想理論として斥けるのは容易いけれど、カントが実践論として真面目に考えた内容は時代を超えて不断な再構築の努力を惜しむべきではないだろう。
ちなみに、とある旅館の看板に付いていたという本書名はカントがやはりお茶目に名付けたのでしょうか、それとも真面目な義憤なんでしょうかねぇ?あれれ?っていう観点があるのは仕方がない。(笑)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
目次でみる、章立てや「平和」を維持するための要件、端々にある一文など、響くことばは複数ありますし、そこを拾いながら読むだけでも、ロシアがウクライナへの侵攻を続ける今、考えさせられることが多いように感じます。
第1章の第5条項「いなかる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力をもって干渉してはならない」などは、まさに今日の事件が「誤った選択」によるものであることを明快に示しているように思います。
とはいえ、一つひとつの文章が難解で、大変に読みづらいという印象を受けました。自分の読解力がないから、といえばそれまでなのですが、「で、結局何が言いたいの?」となるところが多く、最終的には「解説」のぶぶんをざっと読み、なんとなくわかったようなわからないような、というところです。
立憲君主制の国家が多かった十八世紀末に書かれた論文だということも理由なのでしょうが、「共和制」という体制がいかに理想的か、という部分についても多くのページが割かれており、単純に「どのようにして「平和」を実現し、継続させるか」という具体的な姿が(特に現代の世界において)イメージしづらい、というのも個人的には読みづらさを感じた理由だと思います。 -
定言命法、カント的道徳、倫理観、永遠なる(一時的でない)世界平和の達成という理路を示した本。積んどいたのですが、ようやく読みました。日本の鎖国を高く評価する有名な部分も。道徳と政治の一致について、他国に対する経緯と当時の列強ヨーロッパの振る舞いへの懐疑は興味深い。むしろ後からのヘーゲルのほうが、ヨーロッパやキリスト教への信頼はナイーブに過ぎるように今の眼からは思える。ただ、カントの永遠平和の根拠が自然(神?)の摂理というのは、これも今から思うとナイーブに過ぎるか、、、、もちと考えます。
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カント曰く「公法の先験的公式」から、公表性と一致しない政治的格率はすべて不正なのだそうですよ、安倍さん。
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仕事も生活も、平和があってこそのもの。
どんな国も、他の国の政治や体制に武力で干渉してはならない。
平和とは、全ての敵意が終わった状態を指す。
永遠平和をもたらすための6項目の予備条項
1.戦争原因の排除‐平和条約を含む戦争の原因をはらむものはすべて排除する。
2.国家を物件にすることこの禁止‐独立している国を他国の所有としてはならない。
3.常備軍の廃止‐限りない力での競争で他国を絶えず脅威にされさせてはならない。
4.軍事国債の禁止‐対外的な紛争を理由に国籍を発行してはならない。
5.内政干渉の禁止‐他国の体制や統治に暴力で干渉しない。
6.卑劣な敵対行為の禁止‐暗殺者や毒殺者を利用すること、
降伏条件を破棄すること、戦争相手国で暴動を扇動することなど。 -
■書名
書名:永遠平和のために
著者:カント
■感想
TOPPOINTで読了。 -
カントの晩年の代表作である「永遠平和のために」、やっと読むことができました。本書は訳注や解説を含めても150ページ程度なのであっさり読めるかと期待していましたが甘かったです。一行一行噛み砕きながら読み進めたものの、カント特有の婉曲的な表現なども多数散りばめられていて苦戦しました。そして本論よりも付録を読み解くことにさらに苦戦し、これは全体の3割くらいしか理解できていないのでは?と怖れを抱いていましたが、最後の訳者による解説によって理解度が一気に8割くらいに上がった気がします。おかげさまで腹落ちしてきた感じがするのですが、少し時間を空けてまた最初から一読しようと思っています。単なる理想像としての永遠平和ではなく、リアリズムの視点からも永遠平和がなしうることを説いた本として、とても興味深く読みました。
以下、備忘録としてカントの述べている永遠平和のための条項です。
<国家間の永遠平和のための予備条項>
第1条項:将来の戦争の種をひそかに保留して締結された平和条約は、決して平和条約とみなされてはならない。
第2条項:独立しているいかなる国家(小国であろうと、大国であろうと、この場合問題ではない)も、継承、交換、買収、または贈与によって、ほかの国家がこれを取得できることがあってはならない。
第3条項:常備軍は、時とともに全廃されなければならない。
第4条項:国家の対外紛争にかんしては、いかなる国債も発行されてはならない。
第5条項:いかなる国家も、ほかの国家の体制や統治に、暴力を持って干渉してはならない。
第6条項:いかなる国家も、他国との戦争において、将来の平和時における相互間の信頼を不可能にしてしまうような行為をしてはならない。
<国家間の永遠平和のための確定条項>
第1確定条項:各国家における市民的体制は、共和的でなければならない。
第2確定条項:国際法は、自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきである。
第3確定条項:世界市民法は、普遍的な友好をもたらす諸条件に制限されなければならない。