ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003394816

感想・レビュー・書評

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  • ウィーナー「サイバネティックス」読了。チューリングがそうであったようにウィーナーの場合においても戦時下砲弾の飛行進路を予測する演算機構の研究からフィードバック制御の原理やシステムが進展し、現在の非線形現象一般を解析する研究やAI等に対し重要な基盤となっている事が判り魅了された。

  • 本作のアップグレード版『人間機械論』がAIと人間の違い(機械にできなくて人間にだけできること)について論じられており今でも盛んにとりあげられる話題の先見として参考になる。

  • ノーバート・ウィーナーによって提唱された「通信工学と制御工学を融合し、生理学、機械工学、システム工学を統一的に扱うことを意図して作られた学問」であるサイバネティックスの本。
    数式もあるが、思ったよりも読みやすい。特に序章のメイシー会議のくだりは面白かった。

    --
    ローゼンブリュート博士は日ごろ,科学の世界におけるこれらの空白地帯の探求は,一つの部門の専門家でありながら同時に隣りの部門にも透徹した理解のある科学者たちのチームによってはじめて成功すると主張していた.
    科学誌の中からサイバネティックスの守護聖人を選ぶとすれば,それはライプニッツであろう.
    たとえば気体の統計力学は,分子の揺動が巨視的立場から無視できるからこそ成立するのであるが,分子の大きさの程度の生物の世界では,統計力学が無力になる
    天文学上のよく知られている現象は何世紀にもわたって予報できるが,明日の天気を正確に予報することは一般にやさしいことではなく
    運動量および対応する位置の観測の条件はたがいに両立しない.

  • サイボーグ009特集のPENを読んだのがきっかけで
    読み始める。

    途中途中難解な数式が登場し、あっさり飛ばし読みするも
    内容は理解できたとと思う。

    おおよそパソコンと呼べるようなものや、演算の機械がない時代。
    1940年代にこれほどまで科学が進んでいるとは
    思わなかった。まるで預言書。

  • アメリカの数学者Norbert Wienerによる、通信工学と制御工学を融合して、生理学、機械工学、システム工学、ひいては人間、機械の関係性を統一的に扱おうと打ち立てられた学問領域の話。数学者という立場ならではの細かい理論的な観点を生かしながら、細分化・専門化が進んでいく研究分野をかなり引いた目線に立ち戻り共通項を見出したり統一的な議論を展開する、視座・視点の柔軟さがすごい。扱う領域範囲的にも成熟させるにも広すぎるので、ストーリーや文章がやや散文的で整理されているようには感じなかったものの、原著第一版を書いたのが50代半ば、1948年。この時代にこの年齢でこれだけ幅広い学問領域にある程度精通し、かつ達観することのできる才能が計り知れないと思った。その後、現在目覚ましい発展を遂げる人工知能分野をはじめとした非線形現象を扱う領域、また社会科学の分野にも影響を与えたという。(個人的に研究分野・仕事的にもあまり多く触れてこなかった)非線形系の数式が相当数登場するので、式展開含めて追いきるのはかなり時間がかかると思う。

  • 20世紀の古典であり、現在の情報化社会に極めて強い影響を与えたウィーナーが1948年に発表したサイバネティクス理論の論文集。通信技術と制御技術を融合させ、システムの目的を達成するために通信技術によって得られた外界からの情報をフィードバックさせて制御技術に反映する、というサイバネティクスの基本理論が解説されている。

    ウィーナー自身は数学、哲学、通信工学、動物学と極めて多彩な学識者であり、本書を読むとそうしたウィーナーの博識さがサイバネティクスという理論の誕生に欠かせなかったということが良く理解できる。

    巻末には社会学者の大澤真幸が、社会学における「構造-機能分析」理論が、ほぼ時代を同じくして理論化されたサイバネティクスと強い類似性を示していることに着目し、20世紀の”エピステーメー(知の枠組)”としてサイバネティクスを位置づける論考が収められており、サイバネティクスを理解する一助となった。

  • 原典。すでにサイバネティクス的思想はコモディティ化して、改めて殊更扱われない。でも、再読のたびに、以前読んだ時点からの技術的到達点を確認できるし、応用分野の広さに感心する。

  • 初版刊行からはもはや60年以上の年月が経過しているだろうか。
    それにも関わらず本書で取り扱われる学問領域のクロスオーバーとでもいうべき視点は、AI/IoTが急速に進化しシンギュラリティ間近といわれる現代に驚くほどフィットしている。

    深くクロスオーバーしているが故に様々な専門分野が顔を出す。
    数式が乱舞したかと思えば社会や民族の話題になり、脳波スペクトルだのなんだのと間髪入れずに繰り出される。
    そのため初読を終えたばかりの現在、消化不良であるというのが正直なところだが
    腰を据えて反復的に読むべき、そしてその価値のある一冊だ。

  • やっと読み終わった。難しい。でも一度は読んでおかなければ。

  • サイバネティックスとは、機械であれ、動物であれ、各個体および個体間の制御と通信理論の全領域のことである。また、通信し制御するためには情報が必要あり、情報領域も含まれ、心の働きから生命や社会までをダイナミックな制御システムとして捉えようとしたものである。
    システムを制御するには、フィードバックが必要である。フィードバックとは、生物であれ人間であれ機械であれ、ある機能を持ったシステムがな何らかの目的のために何かの行動や作用を開始したときに、そのとき起こった反作用を取り込むプロセスのことをさしている。フィードバックには、正と負のフィードバックの2つがある。正のフィードバックは、今起こっているプロセスを次第に強調する。逆に、負のフィードバックは、最初は不安定な状態であるが、それを落ち着かせるために、それを打ち消す何らかの信号を送り、しばらくすると安定な状態に移行する。この2つのフィードバックの考え方を活かして生まれたシステム技術が、いわゆる「オートメーション」である。オートメーション化が進み、更にフィードバックが進んでいくと、将来的には、機械自身が学習し、増殖していくこととなる。

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著者プロフィール

1894-1964。ポーランドに生れ、アメリカに渡ったユダヤ人の言語学者レオ・ウィーナーの長子として生れた。天才肌の父のもとで知能早熟児として出発した彼は、9歳でハイスクールに特別入学し14歳でハーヴァード大学に入学、18歳で数理論理学の論文で学位をとる。まもなくイギリスに渡りケンブリッジ大学でバートランド・ラッセルから数理哲学を学び、ついでゲッチンゲン大学にも学び、帰米して1919年マサチューセッツ工科大学講師、34年以後同大学の数学教授。30年頃から神経生理学者と共同研究に従事し、計算機械も生物における神経系も同じ構造をもつことを認め、その数学的理論としてのサイバネティックスを創始する。1948年『サイバネティックス』(邦訳、岩波書店、1958)を著わして生物学、工学、社会学等広汎な分野に関連し、著者の視野の広さと鋭さを示す。著書はほかに『サイバネティックスはいかにして生まれたか』(1956)『科学と神』(1965)『人間機械論』(第2版、1979)『神童から俗人へ』(1983)『発明』(1994、以上みすず書房)などがある。

「2020年 『発明 【新装版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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