トロツキー わが生涯 上 (岩波文庫 白 127-9)

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  • Amazon.co.jp ・本 (632ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784003412794

作品紹介・あらすじ

"革命家トロツキー"はいかにして生まれたのか。冷静かつ鋭利な分析で革命家としての自己形成を跡づけた本書は、精彩に満ちた比類のない記録である。上巻には幼年期から一九〇五年革命を経て、一九一七年の二月革命前後までを収める。

感想・レビュー・書評

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  • ものすごく読みごたえがある。これだけの著述をなすには、トロッキーには、ゆっくりと思索を巡らせる時間は殆ど無かったのではないか、と思うくらい。

  • トロツキーは、1905年と1917年のロシア革命に参加し、レーニン政権の下ソ連の軍事会議議長まで務めたが、スターリンとの後継争いに敗れたあとは、反逆分子として追放・暗殺される。
    本書は彼が50歳のトルコ亡命中に出版された自伝だ。

    自身の半生を追ったこの自伝で主に述べられているのは、所謂『永続革命論』と呼ばれる、政治革命から社会革命へと転換して続く彼の理論が、二月革命と十月革命の2度のロシア革命を予言していたこと。
    そして、執筆当時彼を追放していたスターリン政権に対する批判と、自分こそが革命家である、という自負である。

    また、社会労働党に参加した当初は必ずしもレーニンと意見が一致していなかったことも明確に述べられている。
    スターリン時代に彼が反逆者と言われた所以である。
    自伝の中で、自らレーニンとの相違をはっきり書いていることにはやや驚いた。

    スターリンの伝記も読んだが、2人を比較すると、スターリンがより国家主義的であり、経済、技術及び軍事的発展を目指していたように見える。
    対してトロツキーは、共産主義をより深く信奉している理想家で、平等という概念や革命そのものへの傾倒が見られる。

    共にレーニンの後継者候補であったが、スターリンが実際にリーダーの座につき、ソ連を重工業国へと転換させ、国際社会における大国の地位を獲得し、ナチス・ドイツとの戦争を勝利に導いた。
    この自伝上巻を読みつつ、トロツキーがリーダーになっていたら、という「もし」を考えたときに、スターリンをもギリギリまで追い詰めたヒトラーにトロツキーが勝利したとは考えられなかった。
    下巻で更に深く考察してみたい。

    文章は大変いきいきとして、単純に読み物としても面白い。
    トロツキーは文学や芸術に造詣が深かったそうだが、それが存分に発揮されている。
    本書を手にしたのは、駒井稔さんの『トロツキーの自伝は良い』という言葉だったが、全くそのとおりだ。
    いい本に出会えた。
    今読むきっかけを与えたくれた駒井さんに感謝です。


    以下、メモとして年表。

    1879 トロツキー生誕
    1898 最初の逮捕。ヘルソン、オデッサ監獄
    1900 シベリア流刑、一度目の結婚
    1902 脱走、チューリヒ→パリ→ロンドン。レーニンに出会う
    1904 ミュンヘン
    1905 ペテルブルク。ロシア革命(不成功)。二度目の逮捕
    1906 二度目の流刑判決
    1907 脱走→ロンドン→ウィーン。『プラウダ 発行』
    1914 第一次大戦勃発。パリへ。
    1916 フランス追放→スペイン→ニューヨーク
    1917 ロシア二月革命。投獄カナダ・アムハースト。

  • トロツキーの自伝として第一次世界大戦と第二次世界大戦の中間に、ソビエトから追放されたトロツキーがトルコで執筆した作品。
    トロツキーの幼少期からロシア革命直後までを描いた作品。
    トロツキーの行動力はすさまじいものがあって、シベリアに流刑→脱走→亡命→帰国→逮捕→流刑→脱走というように、常に一つのところにとどまらずその先々で同志を作り、出会った人間の分析をし理論や言語の勉強を繰り返す様子を見ると、もちろんその功罪に賛否両論あるとは思うが、自分が追究したいモノに向き合う態度としては尊敬できると思った。

  • 1929年、追放先のトルコで書かれた自伝。幼少期や家族・友人のこと、狩猟の体験や自然の描写など革命から離れたことがらは生き生きと描かれるが、いったん革命の渦中に入ってしまうと、自伝という形式の性質によるのか、こちらが当時の常識を持ち合わせていないからか、アンチ・スターリンという意図によるものか、相当にミクロな視点から断片的にとらえられた事実が、あまりあからさまでないように注意しているがやはりかなりあからさまな基準に従ってかなり単純に提示されてゆくことになるのが面白い。注および人物一覧あり。今時ああいうシーラカンス級の解説を許した編集部の意図は不明。

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