- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003600399
作品紹介・あらすじ
『墨汁一滴』に続いて、新聞『日本』 に連載(明三五・五・五—九・一七)し、死の二日前まで綴った日記的随筆。病臥生活にあってなお俳句を詠み、病状報告とともに時評・絵画論などを著し続けた。溢れる創造力と好奇心をもって、表現することに最期まで挑んだ子規の姿がここにある。(解説=復本一郎)
感想・レビュー・書評
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新聞『日本』に連載されていたもので、死の二日前まで綴った日記的な随筆。
壮絶な病状、病臥生活にあっても俳句を詠み、時には絵画論、時には時評、そして病状報告など。
日々の生活、町の様子、交友なども描かれます。
死に至るまで意欲的に創造活動を行い、さらに仰臥した状態で写生画も。
表現することに最期まで挑んだ子規、最後の姿。
病床六尺、これが我世界である。しかもこの六尺の病床が余には広過ぎるのである。僅かに手を延ばして畳に触れる事はあるが、蒲団の外へまで足を延ばして体をくつろぐ事も出来ない。 ー 7ページ
余は今まで禅宗のいはゆる悟りといふ事を誤解して居た。悟りといふ事は如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りといふ事は如何なる場合にも平気で生きて居る事であった。 ー 43ページ -
布団に寝ながら精力的に文化に触れたり人と交流していく正岡子規でも後半になると苦しく何もすることができない、する気になれないと書いている。とてもきついことだけど闘病の身の私としてはこの気持ちが自分だけではないという感じがしてまた頑張ろうと思う本。
とはいえ、病気の苦しさばかりを書いているわけではない。 -
"何事によらず革命または改良といふ事は必ず新たに世の中に出て来た青年の仕事であつて、従来世の中に立つて居つた所の老人が中途で説を飜したために革命また改良が行はれたといふ事は殆どその例がない。"(p.78)
"草花の一枝を枕元に置いて、それを正直に写生して居ると、造化の秘密が段々分つて来るやうな気がする。"(p.166)
"いろいろに工夫して少しくすんだ赤とか、少し黄色味を帯びた赤とかいふものを出すのが写生の一つの楽しみである。神様が草花を染める時もやはりこんなに工夫して楽しんで居るのであらうか。"(p.167) -
タイトルから病床のみからの視点から見た随筆なのかと思いましたがそうでもなかったです。新聞から、お弟子さんからといった視点が多かったですね。現代人にもささる一節も割と多いので、読んで損はないと思います。