- Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
- / ISBN・EAN: 9784003600405
作品紹介・あらすじ
哲学を職業とする金井湛君は、ある時ふと思った。「おれの性欲の歴史を書いて見ようか知らん」――。初出誌が発禁処分を受けた鷗外の異色作。自伝的要素を背景に、六歳からの「性欲的生活」を淡々としたユーモアをもって語る。浅草の楊弓場や吉原の廓、当時の男子寮等の様子も興味深い。詳細な注・解題を新たに付す。
感想・レビュー・書評
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発禁になったという割には、かなり健全だという印象を受ける。作者の一生の中であった性欲について書いたものであるが、気持ち悪さがない。解説にあった通り、外部からの刺激に主点を置いているからだろうか。全体を通して、現代では彼はAセクシュアルと言われる人なのかとも思ったり。
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赤裸々(?)に性を扱った内容が、明治時代に発表されていた(のち発禁)こと、そしてその作者が森鴎外ということに驚き。ストーリーは別段面白くもない(但し途中で放り出すほどでもない)分、ギャップにインパクトを感じた。江戸時代が幽かに残る当時の習俗が描き出されているところ、男色含めた寄宿舎の若者の放逸などは興味深かった。全体に滑稽談風なのは、性=笑いの本質所以なのかも。
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今回出た新版、最高に読みやすいのでこれから鴎外読む人にオススメしたい。
・組版が格段に良くなって読みやすい。
・側註が充実。現代人には分かりにくい表現について註釈が入り、理解が捗る。
・旧版での斎藤茂吉の解説を引き続き収録、またあわせて今回新規に松木先生(大妻女子の教授)の解題が追加され、内容も丁寧でさらに理解が捗る。
特に、註釈を側註にしたのが秀逸ですね。巻末に註釈をつける本も世の中には沢山ありますが、あれって、いちいち、註釈の番号辿って本文と巻末のページをいったりきたりしないとダメで、それによって読書のテンポが阻害されるのでイマイチなんですよね……。全ての情報が見開いたページの中に収まるように編集したこの新版、とても良かったです。 -
大阪樟蔭女子大学図書館OPACへのリンク
https://library.osaka-shoin.ac.jp/opac/volume/685378 -
「女が僕の容貌を見て、好きだということは、ちょっと想像しにくい。…そんなら僕の霊の側はどうだ。余り結構な霊を持ち合わせているとも思わないが、これまで色々な人に触れて見たところが、僕の霊がそう気恥ずかし…いようにも思わない。…女は好嫌を言わない。…こっちが買い手ででもあるようだ。…僕は綺麗なおもちゃを買いに行く気はない。」
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2冊目の森鴎外の本。
筆者の性にまつわるストーリーは表面的なものではなく、とても深いところにある、親しい存在でも完全に理解することは不可能なとてもデリケートトピックでした。
今回は前回の作品とは異なりあまり苦戦せず読み進められたので良かったです。 -
■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
【書籍】
https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001205095
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「昔のこととは言え発禁処分を食らった内容、きっとエロいに違いない」と安易に手を出したものの正直エロくはない。当時の社会風俗や、主人公(鴎外)の性に関する遍歴がうかがい知れるのは楽しい。
斎藤茂吉の解説が鴎外に対するリスペクトにあふれて微笑ましく、松木博史の解題で本作に対する理解がより深まる。
注釈が丁寧で、岩波文庫をいままで一度も読み切れたことがない私でも完走することができた。